少し早い懇親会

 懇親会を企画したが返事を返したのは父ではなく権力者のオデである。

「なんでオデから手紙が届くの? お父様あてに書いたのに」

 内容は父が急病で病に伏しているから懇親会には出られない。

 代わりにオデ夫妻が行くというものだった。


「なぜオデが?」

 確かに最有力候補ではある。

 しかし血統を重視するわが国では遠縁のものが複数いる。

 外交に代役を立てるのならばその者たちが候補に挙がるはずだ。


「あの、王を呼んでいただけますか?」

「かしこまりました」


 ファンは出ていくとまたすぐに戻ってきた。


「ファン。ずっとついてくれるのは陛下の心配からなのかしら」

「ええ。お守りするようにと仰せつかっておりますので」

「そうだったの。私怖いわ。お父様に何かあったのではないかと」

「内容では重病としか書いておられなかったのでしょう」

「どのぐらいの病なのか意思を含めて返答するようにしてはいかがでしょうか」

「そうね」

 暗い返事をしたことろに王がやってくる。


 緊張した面持ちで告げる。

「祖国の国内で反乱がおきているかもしれません」

 王は顔色を変えなかった。

「オデは野心家で自信家です。政治感においてはかわからない部分もございます」

「ああ。聞き及んでいる」

 この人の配下は有能だ。こちらの思惑も視野に入っているのだろう。

「オデが謀反を企んでいる可能性があります」

「だろうな」

 陛下の答えは肯定だった。 

「こちらでも調べているが、陛下に持病はないのだろう」

「ええ。健康だけがとりえだといっておりました」

「なら、毒を盛られたかはたまた襲われたか。

 どちらにしろ正常な指揮系統を保っていなことは明白だ」


「ええ」


 悔しいことだが、皇族にはいつでも政敵に狙われる危険が伴う。

 そういうものだ。

 幼い時から教え込まれてきただけに

 父が巻き込まれるのは悲しく苦しいものだ。


 苦々しく思いながら、懇親会の準備を進める。

「今日もこれなのね。ファン」

「もちろんです。今から審査は始まっておりますゆえ、気を引き締めてどうぞ」


 ファンがだんだんと気やすくなっていくのは良いことだ。

 しかし今朝から紙を持ち出し徹底的に記録しだしたので、

 こちらとしても慌てている。

(絶対に下手な点数は取れませんわ)

 緊張で震える手で夕食を食べる。

「皇后さま、今回は10点ですわ。

 安定して美しい所作になっているではありませんか」


「もうそろそろ重しをとってもいいかしら」

「そこは衣装係がうまく隠しますので心配なさらなくて大丈夫ですわ。このままいきましょう」

「このままねぇ」

 大層重い食事会になる。精神的にも肉体的にも。


 王は忙しいから先に寝るようにといわれた。

 きっと情報収集をしているのだろう。

「わたくしに今できることは返事を書くことですわね」


 気を引き締めて筆を執る。

 父が出てこれないのは病状が重いためか。

 重いとするならどの程度なのか医師の判断を書いてほしいこと。

 オデ夫妻が来るのではなく周りの血縁者はどうしたのかと聞く。


「思ったよりも長くなってしまったわ。これだいぶコンパクトに書いたのだけれど随分、分厚くなってしまったわ」

「コレで出してみるわ。ファン、検閲をお願いできるかしら」

「はい」


 皇后が機密情報を他国に漏らさぬように手紙にはこうして検閲が入る。

 今まではとがめられたことはない。

 それでもこの制度は大切なものだ。

 謀反なんて王族周りから端を発したほうが成功率が上がるからだ。

 

 祖国と結託を疑われないためにこうしている。

「問題ございません」

「ありがとう」

 許可を得た手紙は封をされ、訓練された鷹を使って送られる。

「無事に届いてほしいわ」

 一応伝達ミスという可能性もなくはない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

わたしのナイト、私のひめ 朝香るか @kouhi-sairin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ