会食までの修行
☆☆☆
ファンは胸を張っている。
「わたくしがこの国でおいしいと思うトップテンを食していただきます」
「わかったわ」
夜の疲れもあるが、昼の皇后の務めをおろそかにすることは許されない。
「採点も忘れないでね」
「かしこまりました」
黙々と食す。出される料理に会釈し、料理に合わせて手を細やかに使っていく。
「朝食は8点です」
すべての皿が下げられてファンを見る。
同じように昼食と夕食と続く。
「昼は9点です」
「夕食は10点です」
この日の夕食の頃から褒められ始めた。
「食べ方が洗練されてきましたね。その調子です」
初めて10点満点が出された。
それなりにメジャーな料理らしい。
「これは何というの?」
「……と申します」
「そう。料理名も覚えていかないとね」
しきたりもだいぶ頭に入ってきたとは思うが、
まだまだ皇族の方々とご相伴できるようには思えない。
「では、姫様、これをお付けください」
「これは重し?」
「ええ。姿勢が悪くなってしまうのが減点ポイントになっています。
あと指の動きも気になるので指先をうまく使ってください」
「わ、わかったわ」
注意されたポイントを注意しながら食してみるとファンからは
「満点でございます」
「素晴らしい」と褒められることが増えた。
「トップテンは以上になりますが、他に食べたいものはありますか」
「もう一度前半3日間のものを食べたいわね」
「かしこまりました」
後半のものは満点を出してもらえたが、前半の料理はいまいちだ。
「では、これから3日間は最初にしたものをお出しいたしますね」
「頑張っているようだな」
とびらのところには王がいた。
「ごきげんよう」
「そうだな。妃と話したいのだが」
「失礼いたしました。何かあればお呼び下さい」
ファンは下がる。
「学ぶことは良いことだが。懇親会の前に一仕事してほしい」
「何でしょうか」
「君の国との関係が思わしくない」
「なぜ? わたくしが嫁いで安泰なのではないのですか」
「そう思っていたんだが、向こうの国が食料危機だそうでこちらに支援を申し出てきた」
「具体的にどちらからの不足でしょうか? わたくしのいたころはそんなお話聞きませんでしたが」
「干ばつの影響でだそうだ。バーレノといえばピンと来るか?」
「確かにあそこは小麦の産地ですけれども。日照りが特段厳しいトコロでもありません。小麦の栽培に適した場所なのです」
「俺もそう聞いている。実際にこちらの国での評判はいいことしか聞かない。食料危機なんてありえなさそうなんだが」
「変ですね。本当にウチの使者の訴えを信用するのですか」
「お前は我が国の報告を疑わずに祖国の情報を疑うのか?」
「……気になることがございます。2週間ほどの間隔で手紙を送っていたのですが6週間たってもお父様からの返事がないのです」
嫁いだ娘にかまう余裕がないほど政治的な動きがあったのか。それ以外の何かが起こっているのか謎だ。
「そういうことですか。内戦の可能性はあると思いますか?」
「ありえるかと」
「そうですか。他にお父上にあう方法はありますか?」
「手紙がダメなら会うしかないと思うのですが?」
「そうだな。すこし早いが、懇親会をして様子を見るか」
「はぁぁ? 何をおっしゃっているのですか? 期限はまだのはずですし、そもそも私は今皇族の皆様の前に出て外交をする余裕など」
「余裕のないことは知っている」
「おい、ファン」
ファンを呼び出し何やらゴソゴソと話している。
「大丈夫ですわ。10点満点のもので対応いたしましょう」
笑顔で言うファン。
「確かに最初に10点を出してもらったものならいいけれど」
「覚えております。お任せを」
「頼んだぞ。君にはお父上の変なところはないか観察して何か気づいたことがあれば教えてほしいのだ。書く仕事なんてしないようにな」
「わかっています。反乱は起こしたくありませんから」
こうして計画より早く2国間の懇親会が行われることになった。
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