学びと会食

 この国に関する学びを行う。覚えることは山のようにある。

 教育係のファンに指摘されながら、食を進めていく。


「その時の食べ方はこうなります」

「……そうなのね。やってみますわ」


 利き手ではない手を利用しながらでも大変なのに。


 食事をするときにも食材をあまり見せないように

 手首をひねって食べたものを隠しながら食べるのが良しとされている。


 皇后として、品客をもてなす。


 役目としてはあるものの、

 まだ賓客に対してもてなせるほどのスキルはない。


「ファン、10点満点で、所作に点数をつけて頂戴。

 10点になったら皆と一緒に食卓を囲めますわ」

 試しに食事をした結果、惨憺たる結果だった。

「昼食は8点です」


「夕食は7点です」

「朝食は7点です」

 他人に見えないように食材を持っていくこと言うのが、難易度が高い。


「もうしばらくは、ほかの人と一緒に食事は無理そうね」

「すぐになれますわ」

「……善処するわ」

 ファンは容赦がなかった。

「皇后さま、目標がないと上達もしないでしょう」

「確かにそうだけれど」

「会食を開催いたしましょう」

「えええっ! 今から?」


「今からなんて到底無理ですわ。

 半年後、会食を開くのです。

 王族親族を招いていきましょう」


「王族なんて……粗相があったら

 首をはねられるのじゃないでしょうか」


「そうならないためにビシバシ指導いたしますわ」

「よろしくお願いします」


 練習はすごく長くなりそうだ。


「こちらのよく出る食材でたくさんのレシピを

 おつくりいたしますのでお楽しみになさって」


 ファンは楽しんでいるが、こちらは冷や汗しか出ない。


「そんなことできるかしら」

 1か月間は評価付きで、食事をすることになった。

 

 ☆☆☆


「皇后はまた一人で食事をしているのか?」

「はい。粗相をなくすまで、お一人でとられるようです」

「妻としての務めはそれだけではないのだが」

「今はこの国になれていただくことで手いっぱいなのです。

 必要があれば、この私にお申し付けください」


 王は何とも言えない顔をしながら、つぶやいた。

「……子供が欲しい」

「かしこまりました。

 皇后さまには妻としての務めをなしてもらいませんと」

 ファンは呼びに来た。

「明日の朝の練習は延期してもらいたいですわ」

「もちろんです」

 ファンに断りを入れて、王の部屋へと向かった。


 ☆☆☆


「遅かったな」

「なにぶん、文化も違いますので、慣れるのに必死なのです」

「必死なところ悪いが、そろそろ初夜といこうじゃないか」


「かしこまりました。準備がありますので、しばしお待ちください」


 今度は王を満足させるための皇后の務めである。

 正直、怖いし、やりたくはないが、祖国のためである。


 固い覚悟を胸に、夜は更けていった。

 ☆☆☆


 王は上機嫌で朝食をとるために出ていった。

(満足されたのかしら)


 こちらとしてはけだるいしか感想はない。

 これからも定期的にあるのだと思うとうんざりする。


「早く子をなせばいいのだわ」

 これから先は冷たいものや、

 腹を締め付けるような衣装を着ないようにしようと思う。


「白湯を飲んで体を温めればいいのだわ」


 とにかくすんでしまったことは仕方ない。

 世継ぎを産めばしばらくはこの

 はなくなるのだ。

 最低限の身なりを整えて侍女を呼ぶ。

「ファンはいる?」

「はい。お呼びでしょうか」

「お食事をとりたいのだけれど」

「お身体大事になさってください。お食事はこちらまでお持ちいたします」

「ありがとう」

 身体はあちこち痛い。

 思うように寝返りが打てなかったからだろう。


(抱きしめられて眠るのはいただけないわ)

 そこだけは何とかならないものだろうか。

(政略婚なのだから無理はさせないでほしいわ)

 思っているのはなかなか相手には伝わらないものだ。

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