「臓器移植」

 私が付き合っている彼は、幼い頃から心臓が悪く、よく体調を崩していて、

 学校を休むことも多々あり、本当に悪い時は、入院をすることもあった。

 だけど、私は彼のことを愛していたし、結婚の予定もあった。どちらのご両親とも

 良好な関係を築けていたし、みなさんと彼の病気に立ち向かったときだってあった。


 みんなで闘病生活を送っていた時、彼が薬のお陰で少し元気になったので、今のうちにと思って、彼にデートを申し込んだ。看護師さんやお医者様もその日なら大丈夫だよと言ってくださって、いつぶりかもわからないデートの予定を立てた。


 そしてデート当日。私は、待ち合わせ場所にぴったりに着いたのだが、彼はまだ来ていなかった。まあ、私よりも準備がかかるだろうし、まあいいやと思って、近くのカフェで時間を潰すことにした。


 1時間経っても、彼は来ることはなく、かといって、彼が入院している病院からここはそこまで遠くなく、彼の足でも十分にたどり着けるところだったので、少し心配になった。一応、彼のスマホにメッセージを送ったが、既読がつくことはなかった。


 流石になにかおかしいと思い、だけど彼の家族ではないので、お義母さんに、電話をした。そして、お義母さんは私に言った。


『今は、息子のところに来ないで!!!』


 私は、泣きそうになった。やはり、彼の病院でなにかが起こっている。でも、お義母さんに来ないでと言われた以上、何もすることができない。私は何が起こっているかもわからないのに、必死に何かを祈っていた。



 お義母さんに電話をしてから、どのくらい経ったのであろうか。

 お義母さんからメッセージが届いていた。


『あなたには言いたくないぐらい心が痛いことなのだけど、彼女なのだから息子のことを受け入れてほしい。だから、今すぐ病院に来てくれるかしら…?』


 私はそのメッセージを見た瞬間、世界の誰よりも速く走っていた。

 私は病院に向かうことしか頭になかった。



 私が彼の病室に入ると、看護師さんとお医者様が彼の家族と一緒にいた。


「あの…」


 お義母さんは、泣きながらこう言った。


「息子はね…今は眠っているのだけど、リハビリをすれば…またあなたとデートできるわよ」


 私は何が起こっているのかわからず、きょとんとしていると、お義父さんは言った。


「前置きはせずに言った方がいい。息子は、臓器移植をした。

 ドナーが見つかったんだ。息子は、少しすれば元気になるよ。」


 私は理解した瞬間、涙が止まらなかった。彼は、お義母さんは、お義父さんは、私に心配させたくなくて、わざと臓器移植のことを言わなかったのだろう。それでも、ドナーとなってくれた人には、感謝しかない。ありがとう…ありがとう…。




 数ヶ月経って、彼は今までに見たことないぐらい元気になっていた。

 笑顔がキラキラしていて、その笑顔には生きられてよかったと言っているように思える。



 それから数ヶ月、私達は籍を入れた。彼のご両親もおめでとう、ありがとうねと泣いて言ってくれた。これから、新しい人生がスタートだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一話完結小説 凪@マイペース更新中 @_harunohi_143

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ