第5話
朝食を食べる為に案内された場所、そこはレティシア用意された部屋だった。ようはレティシア的にはただ自分の部屋に戻って来ただけである。
「悪いな。一応皆で使ってる食堂があるにはあるんだが、まだあんたの存在を気にしてる奴が多くてなぁ……」
まだ昨日の今日だ。そう簡単に周囲を納得させる事が出来なかったルクレティアは溜息をつく。
「お待たせ。レティシアちゃんの朝食を持ってきたわよ」
そう言って、マリアナは笑顔で今日の朝食メニューをテーブルの上に置き退出した。レティシアは用意された朝食をしばらく眺めていたが、ゆっくりと用意された朝食を口に入れ始めた。その間、視線を感じてレティシアは視線の主であるルクレティアを睨む。
「……何?」
「あぁ、いや……悪い悪い……知ってはいたがやっぱりあんたは貴族なんだなぁって……テーブルマナーがきちんとしてるって言うかさぁ……」
「……それが分かる貴女も貴族でしょ」
テーブルマナーは貴族の嗜みの一つだ。平民がそれを知っているはずかないので、それが分かるルクレティアもまた貴族だという証だ。
ルクレティアは「藪蛇だったか……」とぼやきながら頭をかいた。
「……あんたと同じ元貴族さ。まぁ、黒の魔女を誕生させたってのに、両親は私を逃そうとして殺されちまったから……今は私の家はどうなってるか分からないけどな……」
ルクレティアの言葉に色々気になる事はあったが、それ以上は話したくない空気を察したレティシアは黙々と食事を口に運ぶ。
「……しっかし……まさかあんたがカレンに気に入られるとは思わなかったぜ」
「カレン?」
ルクレティアから聞いた事のない人物の名前を首を横に傾げるレティシア。
「ほら、あの花畑にいた」
ルクレティアに言われて、花畑にいたあの少女を思い出す。あの少女がカレンなのだろう。しかし、特段気に入られた様子もなかったので疑問に思うレティシア。
「あいつが誰かに花畑に来たければ来いなんて言ったのはあんたが初めてだぜ。私ですら言われた事ないんだからなぁ……」
レティシアの疑問を察したルクレティアはそう言葉を返す。そして、ルクレティアはカレンについて語り始める。
「カレンは、生まれた瞬間から黒髪・黒目だったんだ。まぁ、黒の魔力は保有してないから、黒の成りそこないだった訳だが……」
基本、黒の魔女や黒の成りそこないの証である黒髪・黒目になるのは、10歳前後から発現する事が多い。故に、生まれた瞬間から黒髪・黒目になるのは稀なケースだ。
「だからか、カレンの両親は不吉な子としてカレンを捨てた。そのせいで、カレンは生まれた時からずっと牢の中で魔力を吸われ続ける生活を送ってきた。だからかねぇ……あれでもだいぶマシになったが、ここに来た当初は全然誰とも関わらず喋る事もしない子だったらしい……」
カレンを救出したのは、ルクレティアより前の団長であった為、その当時の事はルクレティアも話だけしから知らなかった。が、ルクレティアがここにやって来た当初からも口数が少ない子だった。
「何事にも興味を持たなかったカレンが唯一興味を示したのが花でな。その延長線上で作物等の育成も始めてる。カレンはこの拠点でそれらの分野を担当してる。だから、あいつからしたらあの花畑は特別。その特別な場所に誘われたんだ。それが気に入られた証さ」
ルクレティアの言葉を受けたレティシアは、むず痒いような感情が出るも、それでも、胸の奥に渦巻く黒い炎は消えない。
「……それで、そろそろ教えてくれないかしら。貴女の目的を」
レティシアがそう言葉を放った後、しばし2人はお互いを探るように見つめあったが、すぐにルクレティアの方が折れて溜息をついた。
「本当だったらこの後やる会議で話すつもりだったが、もう先に話しておくべきか……」
ルクレティアはそう言って一呼吸置いた後に語り出した。
「私の目的は……聖樹の破壊と聖女の殺害だ」
大罪の聖女 風間 シンヤ @kazamasinya
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