最終話

 夏休みが終わり、初日の今日は始業式。

 午前中の間に全ての日程を終えた俺たちは、校舎を出て学校の外へと向かっていた。


「ふぅーまた学校始まっちゃったねぇ。夏休みに戻ってくれないかなぁ」


 学校が休みになるという意味では、三折が言うように夏休み前に戻ってほしいという思いはある。

 しかし、夏休み前に戻ってしまえば俺と真白の関係性も付き合う前に戻ってしまうので、俺としては絶対に夏休み前に戻りたいとは思わない。


 まあ記憶を保ったままで夏休み前に戻るならもう少しスマートな告白もできそうなので、そういう意味では無しではないのかもしれない。


「何回も夏休み繰り返してたら面白くないだろ。人生は進んでいくからこそ面白いんだから」


「えーなんかアーランのくせに良いこと言ってて腹立つ」


「俺だってたまには良いこと言うだろ」


「そんな良いこと言ってるの初めて聞いたけどねー」


 夏休みが明け改めてこの二人の掛け合いを見ても、やはり未だに違和感しかない。

 女たらしで複数の女子をはべらかしていた亜蘭が一人の女子に心酔しているのも信じられないし、その女子が真白の一番の親友というのも神様が仕組んだイタズラなのではないかと思ってしまう。


 ……いや、亜蘭と三折が付き合ったのは、俺と真白が付き合ったのと同じように、神様のイタズラなんてものでは無く俺が起こした行動の結果なのだろう。


 決して俺のおかげで付き合えたとかそんなことを言っているわけではない。

 ただ俺が行動をしなければ何も変わっていなかったのは事実のはず。


 亜蘭も最初は真白を狙っていたし、俺が真白を狙わなければ亜蘭と三折が付き合うことはなかっただろうから。


「ウチの公陽なんてずっと自分の自慢してるばっかりでいいこと一つも言わないわよ。自己肯定感が高いのはいいことだけど」


「実際カッコよくて優しい完璧な男なんだから仕方ないだろ?」


「まあ優しいのは認めるけど……」


 この二人は相変わらずで、言い争いをしているかのように見受けられるのに、それでいてなぜか恋人として上手くやっている。

 仲違いをしている時からこの二人はずっとこんな雰囲気なので、この関係性が二人にとって一番上手くいく形なのだろう。


 上手くいく形は人それぞれ大きく違うのだと、この二人の姿から学ばせてもらった。


「窪っちはなんかいいこと言わないの? ほら、せっかくシロシロと付き合いだしたんだしさ」


 話の流れで、三折は俺に何か良い言葉を言うよう促してきた。

 俺と真白が付き合った付き合ったことは、花火大会が終わってから亜蘭たち全員に報告しているので、歓迎会で新入社員が何か一言言わされるあの流れと同じ流れで三折は言ってきたのだろう。


 何か良いことと言われても、そんなにすぐに思い浮かぶわけもないし、俺は亜蘭や王子のようにキャラが濃いわけでもなく、自分の色を出したセリフは言うことができない。


 そんな俺が言える亜蘭たちとは違う良いことと言ったら、真白のことしか好きになったことがなく、初めての恋人が真白という恋愛経験の無さを武器にした言葉しかない。


「そうだな……」


 そう前置きのように言ってから、俺は真白の目を見つめた。


「俺は死ぬまで……いや、死んでも真白が大好きだ」


 俺の言葉を聞いた真白は顔を紅潮させ、亜蘭たちからは歓声が上がった。


 亜蘭のように恋愛経験が多い男子を魅力的だという女子もいれば、俺みたいにまだ恋愛をしたことがない人を魅力的だと思う人もいる。

 一度も喧嘩をしたことがない程仲のいいカップルがいれば、喧嘩をしていてもそれがいい関係を築いていく秘訣だったりするカップルもいる。


 全員が同じではなく、全員に違いがあり、それが良さになる。


 そんなことに気付き言葉にした俺はその言葉の通り、真白とずっと一緒にいて、死んでからもずっと、真白のことを想い続けるのだろう。











「女たらしの親友に唯一なびかなかった超絶美少女が、なぜか俺にだけなびく」 完


※ここまでお付き合いいただきありがとうございました!

後で近況ノートを更新しますので、ご覧いただければ幸いです✨

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女たらしの親友に唯一なびかなかった超絶美少女が、なぜか俺にだけなびく 穂村大樹(ほむら だいじゅ) @homhom_d

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