ヴァレリア=ケリー: 地獄と希望
白目を向きながら目を閉じた時は肝を冷やしたが、手の上のカサハラにはしっかり呼吸がある。幸い裂傷は大動脈からズレていたので、失血死は免れそうだ。……今度は、間に合う事ができた。
カサハラが離れた後、荷物に手を伸ばして添えられた手紙を読んだ。そこには部下の遺品を含めて回収した旨、ウィルスに関しての基礎研究と未完成の治療案、そしてこの救助依頼のきっかけとなった通信についてと、カサハラの非常に長い懺悔が綴られていた。確かに君の視点では私は極度の自暴自棄で、ああ言われるのも納得する。それなりに容赦なく書かれたおかげで、だいぶ頭が冷えた。……君の危惧については、もう大丈夫だ。
その上で。「俺を助けないで生き残ってくれ」と締められた本文を読んで余計に、「似た者同士の君にはそっくりそのまま私に向けて書いた事を返す必要がある」と強く思ったのでここに来た。手紙の総枚数を見るに、思い詰めやすいのはお互い様だ。……君には何故か真面目な自覚がさっぱりないのには驚いている。
移動速度も早くなったのか、既に研究所跡が見えている。洗浄と止血が終われば次は固定、その後カサハラに医者について聞けば良さそうだ。……一つずつ解決していくしかない。目の前の危機も、身体との折り合いも。
……手紙といえば。最初に名前を聞いた時、随分嫌な顔をした謝罪も追記に書かれていたな。名前負けを理由に言いたくなかったとの事だが、現に私は君に救われているのでそれほど違和感はない。複数の理由で今は無理だが、何処かで直接伝えることにしよう。
(……納得しないかもしれないが、君に合った名だと思う。少しは胸を張ってくれ、
Not a HELL 蒼天 隼輝 @S_Souten
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