オリガミライフ

青猫あずき

折り紙・未来・if

 『電子書籍が中心となれば紙はいらなくなる』

そう昔の人は言ったらしい。

書物は全てデータ化され紙は作られなくなるに違いない、と。

はたして未来はそうなっただろうか? 半分はイエス、半分はノーだ。

詰まるところ、紙の書物は絶滅したと言っていい。


 もちろん、資料価値のある紙の本は博物館に所蔵されているし、アンティークとして紙の本を収集するコレクターは存在する。道楽として紙の本を制作する金持ちというのもいないではない。


 しかし、紙にはもはやインフォメーションツールとしての価値は残されていない。紙に書かれた文字を目にする機会はほとんどなくなり、過去の書物もデータ化が進められているのは皆さんご存じの通りである。


 さて、では「書く」ことができなければ紙はいらなくなるのか? そんなことはない! 大方、最初にそんなことを言い出したのはきっと古臭い評論家だったのだろう。「少しばかりセンセーショナルなことを書いた自分の本が売れればそれでいい」などと自分中心の、いや本中心の考えに囚われていたに違いない。紙は何も文字を書くためだけにあるわけではなかったのだから。


 紙の生きる場所、それは芸術の世界だ。

ああ、もちろん絵画に使われるキャンパスは全てデジタルになった。きっとディズニーがセルアニメをやめた辺りから、その傾向はあったのだろう。絵画表現をデジタルに委ねることに人々はもう既になんの躊躇もない。


 だがしかし、今なお芸術の分野で製紙業は活きている!

それが一体どんな分野かなど、この本をタブレットで読んでいる君に説明する必要はないだろう。タイトルを見れば一目瞭然だからね。そう、オリガミだ。


 こればかりは紙を使わずに表現するのは不可能だ。日本発の芸術、ORIGAMIは海外でもそのままの名前で親しまれている。いまや紙の生産はほとんど折り紙のためのものでしかなく、その内訳もかつての製紙とは大きく異なる。

 純粋な白紙の数は昔よりも抑えられ、今では千代紙や和紙がシェアの大半を担っている。

 この本では添付されている折図のPDFを市販のオリガミ用紙に印刷する事で、、製作途中で指針を見失いにくくするなどの配慮をしてある。基本から応用まで順に覚えながらオリガミの魅力にどっぷりと漬かって欲しい。 


―――――『折図付き! よくわかる現代折り紙シリーズ1』・序文より



* * *


 ここは、山折り。こっちは折れ目をつけて、戻す。反対も、同じ。

今度は紙の端を持って、さっきの折れ目を目印にして斜めに畳む。もう何度も折った工程を私の手が覚えている。だから折る手は意識せずとも動き続ける。そうしてテンポよく進んでいた指が突然ピタリと止まる。


 いつもここでどう折るのかをど忘れしてしまう。折り紙に手を添えたまま、私は音声認識でタブレットを起動する。画面に映る折り図を確認し、続きを思い出すと再び指が動き出した。

 工程が3分の2ほど進んだところで部室の扉が開く音がして、誰かが入ってきた。気にせずに指を動かし続ける。入ってきた誰かは話しかけたりせずに黙って待っていてくれる。とはいえ、この部室に来る人なんて先輩以外にはいない。早く折りあげなくちゃ。私は手を早めて残りの工程を急ぐと、出来上がったオリガミを机の上に置き顔を上げた。

 

「またグリフォンか? 手慣れたもんだな」

「先輩。グリフォンじゃなくて、ヒポグリフです」

「違いがわからん。あ、いや下手だから表現できていないとかじゃなくてな。そもそも私にはグリフォンとヒポグリフの違いがわからん」


そう言って、先輩はその白い人差し指でつんつんとヒポグリフのオリガミをつつく。


「脚ですよ、脚。グリフォンは鷲とライオンを混ぜたモンスターですから下半身がライオン。脚はライオンの脚です」

「ヒポグリフは?」

「ヒポグリフの方は上半身は鷲で下半身が馬です。ヒポグリフはグリフォンに馬を混ぜたモンスターですから」

「待て待て。ヒポグリフっていうのは鷲と馬を混ぜたんじゃなくてグリフォンと馬を混ぜているのか…?」


私は首を縦に振った。

この場合、混ぜているというのは単にパーツの入れ替えという意味でなく交雑……つまるところグリフォンとお馬さんが致したことによって生まれるのがヒポグリフだ。


「なんで鷲とライオンを合わせたモンスターがお馬さんと交わろうとしたのかとか色々と気になるところはあるけれど、そいつ何を食ってるんだろうな?」

「一番気になるのはそこなんですか?」


先輩が何故そこを疑問に思ったのか私にはよくわからない。


「だって、ライオンは肉食動物だけど馬は草食動物だろ?」

「でも口は鷲ですよ」

「消化器官は胴体の方にあるじゃないか」


そう言われるとそうである。

鷲は猛禽類だから肉食性だ。

馬の体では恐らく食べた獲物を消化できるような内蔵器官が存在しないことになる。

草食動物がいくらネズミやフェレットを反芻してもあまりエネルギー効率はよくないだろう。


「あー。だから鷲と馬じゃないんですかね?」

「鷲じゃなくてグリフォンなのは消化器官部分はライオン……繋がったな。それならつじつまがあう」


ヒポグリフは鷲の頭と翼に馬の脚を持ち、そして消化器官がライオンだから肉食性。

合っているかどうかも分からない豆知識が脳に刻まれてしまった。

というか架空動物の生態に正解とかあるんだろうか?


「何を食べるかはともかく、折り紙で言うなら脚の造形が肉付きよくどっしりしているのがグリフォン。細くしなやかで、あとは蹄が折ってあればヒポグリフですね」


 私は先輩にヒポグリフを手渡す。先輩は脚の方を手に取り、まじまじと観察する。こういう普通の動作がいちいち様になるんだから顔がいいっていうのは得だなあ。

 すらっと伸びた細身の脚部と被せ折りで作った蹄がライオンでなく馬であると判別できる程度には表現できている……つもりだ。私の技量では流石にひきしまった筋肉までは折れなかったけれど。


「脚の部分は、折り図にはない折り方をしたね?」

「わかります? やっぱり違和感が残ってますかね」


「違和感といえば違和感だが作品の完成度には関係ないし普通は意識しないよ…。鷲の部分はポーズと反りを変えて見せ方を変えているけど、前に作っていたグリフォンとほとんど同じだ。前のグリフォンは確かファンタジー系の創作折り紙を何作も作っているロバート・リベルソンの作品だったはずだ」


 先輩は部室の棚からロバート・リベルソン作品集を1つ取る。目次を開きグリフォンを探す。私が前に折った時に見た折図とグリフォンの写真が載っている。


「対して脚の造形にはリベルソン特有の筋肉質な表現がされていない。座り込んでいるこのグリフォンの場合、ライオンの脚は短く畳んでもそれっぽくなるが、馬の足はそれらしさを追求するなら長く伸ばす必要がある。筋肉をつける紙幅しふくの余裕がなかったから誰か別の折り紙作家の馬の作品から脚を持ってきたんだろう?」


先輩が作品集のページを捲ってリベルソンの折ったペガサスのページを示した。

前足を高く掲げて翼を伸ばす馬の姿。その後ろ足は、躍動感に満ちた筋肉のうねりが表現され、蹄もたった一度の被せ折りでなく、返しをつけてからの折込みでより細やかに作りこまれている。


 「次からは鷲部分を少し小さめにするか、馬の後ろ足同様に鷲の爪もデフォルメを効かせるといい。前後のデフォルメ具合に差が出るよりは、見どころである翼と頭のみをややリアルに寄せておいたほうが見栄えが良くなる」


 先輩のアドバイスを受けて、もう一度挑戦するために私は次の紙を用意した。基本の折れ目を順番につけていく。


「先輩は今日、何を折るんですか?」

「さて、どうしようかね。立体的なものにしようか」


折り図集をめくり、ふくら雀のページで手を止める。


「先輩が立体で折るのって珍しいですね」

「そんなことはない。普通に鶴くらいは折るさ」


「あー。まあ鶴も立体といえば立体でしたね。そうじゃなくて立体ってスパコンみたいのを想像してました」

「スーパーコンプレックスか。確かに好みじゃあないな。素直に評価はするけれど、作る気にはなれない」

 

* * *


 スーパーコンプレックス。伝承折り紙とは大きくかけ離れた性質を持つ折り紙のスタイル。不切正方形、つまりハサミなどを使わずに真四角の紙一枚から折るという基本のルールは同じだが、使う紙の大きさは格段に大きい。

 

 というのもスーパーコンプレックスは折る上で百工程を超えるものが少なくない。通常、折り紙としてイメージされる折鶴が約十五工程であることを思えばその複雑さがわかるだろう。


 その複雑すぎる構造ゆえに、通常のサイズの折り紙では折り重ね過ぎて厚くなった部分がとてもではないが折れないような硬さになってしまうとも言われている。その代わり表現可能なレベルは格段にあがり、もはや『紙で出来た彫刻』と言っても過言ではない。


 もっとも彫刻が『元のものを崩して削っていく芸術』なのに対して、スーパーコンプレックスは『削ることなくどれだけ余さず紙面を利用できるかを突き詰める芸術』であるため、似ているようで実は本質的には全く正反対なのだが。


* * *


「スーパーコンプレックス、私はかっこいいと思うんですけどねえ」


ヒポグリフの翼を畳みながら聞いてみる。


「たしかに複雑な工程を折れるのは驚嘆に値するけど、どうも折り紙っぽくないのがなあ」

「折り紙っぽくないって言ったって、スパコンは立派な折り紙ですよ。それも伝統的な手法と同じ不切正方形一枚折ふせつせいほうけいいちまいおり! これが折り紙じゃなくて何が折り紙なんでしょう」


 紙資源が折り紙などの芸術作品に使われるくらいしか居場所がなくなり需要が減ったことで、紙自体の価格は昔に比べやや高価なものとなった。利用価値の低いものは需要が減りマニア志向になる分、価格は上がる。 価値と価格の逆転が起きたのだ。


結果、「どうせ高い紙でオリガミをするならより複雑で高度な造形のものがいい」という風潮が強まり、スーパーコンプレックスは折り紙のスタンダードになりつつある。


立体を折ると言いつつ平坦な面ばかり折りながら先輩が逆に問いかけてきた。


「じゃあ聞くけど、お前ウェットホールディングのことはどう思ってる?」。

「え? あんなの邪道に決まってるじゃないですか」

「私がスーパーコンプレックスに感じるのもそれと同じだよ。なんか邪道。説明できないけど邪道」


「いやあ、あれと一緒にされましても…」

「なんだ?どこが気になる?お前の大好きな不切正方形一枚折ふせつせいほうけいいちまいおりだろう?」

「意地悪な言い方しないでくださいよぉ…」


* * *


ウェットホールディングは折り紙の技法の一つ。


『紙を濡らす』という従来の折り紙からは全く考えられない発想の技法であるため抵抗を感じる人は少なくないが、完成品を見た上で好感の持てるスーパーコンプレックスにはウェットホールディングが使われているというのは良くある話だ。

そういった点でスーパーコンプレックスが流行した今、修得に値する技法ではある。


折る・膨らます・畳むといった従来の工程に加え、濡らすことで『伸ばす』という工程を取り入れることができるのがウェットホールディングの強みだ。不自然な折り目を抑えつつ複雑な作品を生み出せる一方で、スーパーコンプレックスよりさらに彫刻やオブジェに近い仕上がりになるため芸術としてはともかくオリガミとしての評価はは大きくわかれる。


* * *


「ウェットホールディングは『濡らす』じゃないですか。やっぱり『折る』以外の露骨な技法は違和感を覚えるんですよ」

「それを言うならスーパーコンプレックスの外見は折り紙としては違和感の塊だろ」


「でも流石にウェットホールディングは邪道です。濡らして乾かすのを認めたら、ミキサーに千代紙と水をぶち込んでペースト作って、粘土みたいにオブジェ作って乾かして固めても折り紙になっちゃいます。やっぱりスーパーコンプレックスは良くてもウェットホールディングは駄目ですよ」

「さすがに紙ペーストの粘土細工はウェットホールディングとは別だろう」


「なんでです? 普通の折り紙とスーパーコンプレックスが一緒なように、ウェットホールディングもペースト粘土も同じじゃないですか」

「いや、明確に違うね」


「どこが違うっていうんですかあ?ほらほらあ、説明してくださいよお」

「ミキサーにかけたんじゃ紙は小さな欠片に切断されちゃうだろ。それじゃあお前の大好きな不切正方形一枚折ふせつせいほうけいいちまいおりとは言えないぞ」


ぐぬぬ。確かにそう言われればそうである。


不切正方形一枚折ふせつせいほうけいいちまいおりを基準にするなら、普通の折り紙もスーパーコンプレックスもウェットホールディングも同じで、紙ペーストの粘土細工は別物だ」


そうは言っても、なんかこうウェットホールディングは感覚的に受け付けられない。


「同じだよ。スーパーコンプレックスは感覚的に受け付けられない。」


折り紙が子どもの遊びでなく芸術として広く認識されるようになった以上、きっといつの日かスーパーコンプレックスは折り紙の主流になっていくことだろう。


 「普通の折り紙」と言えばスーパーコンプレックスを指すような時代が来る。そうなった時に、伝承折り紙を折るような子どもはいるだろうか。ひっそりと忘れ去られスーパーコンプレックスばかりが話題に登る。

 もしかすると玩具会社が目をつけて、子供向け月刊少年漫画なんかとコラボして折図を添付して電子書籍で配信したりするのだろう。漫画の中ではきっと主人公の折り紙が意志を持って喋ったり、動いたりして、それを戦わせるとか、そういうのが。


 そういった折り紙文化の変化を発展と表現してもいいのだろうか? もちろん衰退しているわけではないけれど一概に良い変化とは言い切れない。伝承折り紙は衰退してドラゴンやフェニックスと言った折り紙が伝承のものとして伝えられていくのは何か折り紙として大切な何かを見失っている気がする。


「折り紙らしい折り紙ってなんなんでしょうね? 不切正方形一枚折ふせつせいほうけいいちまいおりなら折り紙だって考えていたのにウェットホールディングを引き合いに出されると確かに気になっちゃいますね」

「そもそも伝承折り紙には不切正方形一枚折りじゃないものだっていくつも存在するんだ。不切正方形一枚折ふせつせいほうけいいちまいおりなら折り紙、そうじゃなければ違うってのは乱暴な定義なんだよ」


「伝承折り紙にもそうじゃないのがあるんですか?」

「切れ目を入れる折り紙だと、そうだな…脚のある鶴が有名か。もっとも今は切らずに脚のある鶴を作る技法が知られているから見かけることは少ないだろうけど」


「正方形じゃない折り紙は何がありますか?」

「変形した菱型の折り紙でも鶴を作成できる。普通の折り鶴と違った味があってなかなかいいものだよ」

「2枚以上を組み合わせるものは…ユニット折り紙が伝承折り紙の類でしたね」


* * *


 ユニット折り紙。言葉自体は近年作られたものだがその歴史は古い。


 折り紙でできた小さな部品を組み合わせて違う形の大きな作品を生み出す。くす玉や、紫陽花など同じパーツの接続で多様な表現を目指すものやブロックのように違う形のパーツの組み合わせで何か特徴的な形を構成するものなど多種多様だ。


 シンプルな単純作業の繰り返しの一方で完成品のイメージを掴むためには結構頭を回す必要があり、失敗が少なく見栄えがいい。総じてややお年を召された方が頭の体操がてら嗜む傾向にあるが、おばあちゃんから教えてもらって若い女の子が作ることも少なくない。


* * *


 ヒポグリフの前足を折りつつ考えてみる。何が折り紙らしくて、何が折り紙らしくないのか。そもそも折り紙ってなんだ。紙を折るだけで芸術ができるのは確かに凄い。


 凄いが、だからどうした。それこそ話に出たように紙を水に溶かして粘土みたいに練ったほうがよっぽど楽に形を作れる。


「折り紙にとって、形を作るのは最終目的じゃないってことなんですかね…」


 思考が一歩前進し、手先はヒポグリフの後ろ足へと伸びる。馬の脚は力強く筋肉質に、と。前に折ったことのあるリベルソンのユニコンーンの脚を思い出しながら、ライオンになるはずだった後ろ足を馬のそれへと変えていく。


 基本の折り方があってそれを組み合わせて違う造形にするのは折り紙が長い伝承の中で繰り返し磨いてきた技法だ。パーツとパーツを組み合わせて折り図を書いていくのは、それらを紙面に落としこむため。馬の足がうまく残りの紙幅で折れそうなのを確認し、一旦仮に折っていた部分を広げ、足になる部分に本格的な基本線を折り入れていく。ついでに次に折るときのために折図の該当部分を書き直したヒポグリフ用の折図もタブレットに保存する。

  

 折図を書き足しながら、パズルみたいだと思った。グリフォンやヒポグリフのような分かりやすい合成獣に限らず、普通の動物を新たに折り紙でデザインする場合も今までの作品の一部を組み合わせて折ることはよくある。


 例えばキリンを折るならベースは馬にしつつ首の紙幅に余裕をもたせ、顔の部分は牛を流用する。キリンの角を折るためだが、そのままだと牛の角は鋭いので、牛は牛でも蝸牛かたつむりの角を折るときの技法で丸みを持った先端に仕上げる。


 それらを一枚の紙でやることにオリガミである意味があるのだ。

 折り紙が制限をつけて折るのは複雑な着地点をどれだけ紙幅の中に詰め込めるかをつきつめているから。いかに洗練し折図の中の小さな世界に詰め込めるか、そこが折り紙の真髄だからこそ私はスーパーコンプレックスが好きだ。紙面をいかに効率良く使うかを数学的・幾何学的に探求し、紙面という小さな世界を大きく使う試みが好きなんだ。


 そしてそれに気づくと同時に先輩が嫌がる理由も分かった。折図こそコンパクトでスマートなスーパーコンプレックスだが、度重ねて折られた紙の厚みのせいでずんぐりとした形になりやすく、大きめの紙を使うためにスケールもまた大きくなりがちだ。先輩が求める折り紙はきっと本当に小さな世界へと収められるものばかりだから、生理的に受け付けないのだろう。


 折図という小さな世界を突き詰めるほどに、矛盾するように紙の大きさが広がっていく。ユニット折り紙や手裏剣が複数の折り紙を使うのは元々のデザインが単純で一枚で折ってしまうより二枚のほうがディティールを出しながら小さくシンプルに表現できるからなのだろう。先輩の意見がわかったような気がして今の持論をぶつけてみる。


 先輩はきょとんとした顔でこちらを見てから笑った。


「そんなまともな理由なんて無いよ」

「じゃあ、どんな理由なんです?」


ふくら雀にその赤い唇を添えて息を吹き込み、先輩は言った。


「折り紙っていう日本の伝統が横文字に覆われるのが嫌なんだ」


ふくら雀のように、頬を膨らせて拗ねたような顔を見せる先輩がなんだかかわいらしくって、私はライオンのように歯を見せて笑った。


                

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