道ならぬ恋

片眼の兎

第1話  『執着』

毎日

水汲みに来る娘に恋をした

薄桃の頬をした娘の手は荒れ血が滲んでいた

川はまろやかに娘の手を撫でた

娘が哀しく塩っぱい涙を落とした日は

とびきり甘い水で桶を満たした

ある時

娘は頬を染め若者とふたり川を訪れた

水を汲んだ桶を若者が受け取り目を合わせて微笑む二人が憎らしく

川は勢いよく跳ね上がると娘を引きずり込んだ

慌てた若者が娘を助けようと川に入る

川は急流となりあっという間に若者を滝へ叩き落とす

打ちつけられた若者は滝壺を赤く染め肉塊となった

娘を川縁にそっと横たえたものの

若者の死を知った娘は川へ身を投げる

川は泣く泣く娘を抱くと


若者と同じ滝壺に娘を沈めた

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道ならぬ恋 片眼の兎 @katameno-usagi

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