第4話 四番目

タナトス

四番目



 運命は、志のあるものを導き、志なきものをひきずってゆく。


             セネカ




































 第四招【四番目】






























 昔昔の御伽噺に出てきた主人公は、とても好奇心のある女の子でした。


 しかし、彼女は大切なものをその世界に忘れてしまいました。


 それは、昨日からの手紙。


 それは、明日からの記憶。


 それは、彼女からの意識。


 この物語は、彼女の忘れものを拾った人達による、彼女探し。


この世界では、決して夢を見てはいけない。


 もしもこの世界に取り残されてしまったら、もう二度と、抜け出せないのだから。


 「なかなか見つからない」


 「簡単に見つかるとも思っていなかったが、まさかここまでとは」


 「不協和音はどこまで続くのか」


 「ブルージュ、アリスは今何処に?」


「鏡よ鏡。この世界にふさわしい“アリス”を映しておくれ」








ある少女のもとへ、招待状が届く。


 少女の名はアリス、金色のふわっとしたパーマは肩より少し長く、真っ赤に生えるカチューシャをつけている。


 アリスは自分に宛てられた招待状を確認すると、とても嬉しそうに笑った。


 「まあ嬉しい!!私に招待状なんて!!一体どんな素敵な方からかしら」


 アリスはとても好奇心が旺盛で、無垢で、イメージカラーで表現するとしたら、純白といったところだろうか。


 男性と付き合った経験もなく、また、他人を疑うと言う事も知らないような、純情な女性だ。


 「きっと楽しいお茶会ね!私を誘ってくださるなんて、紳士に違いないわ!」


 はしゃぎながらアリスは支度を始める。


 すでに綺麗に整っている髪の毛をさらに綺麗にセットし直し、メイクをし、爪や唇にも気をつける。


 「何を着て行こうかしら」


 ルンルンとスキップをしながらクローゼットへ向かうと、そこに並んでいる、高級そうな服を眺める。


 そこから一着選ぶと、大きな鏡の前に立って身体にあてがう。


 「ふふ、これで決まりね」


 アリスは着替え終えると、耳と首にも飾り物をつける。


 それから家を出たものだから、時間に換算すると・・・まあ、結構かかってしまった。


 招待状に書かれていた住所のもとへと着くと、思っていた場所とは違うと一瞬だけ表情を止めたが、すぐに笑顔になる。


 「きっとこの中には素晴らしい人たちがいるんだわ!!会うのが楽しみ!!」


 ぎい、と扉を開けると、すでにそこには一人の女性が立っていた。


 「まあ、綺麗な方・・・」


 「ありがとうございます。どうぞ、中へお入りください」


 「お邪魔します」


 「私はサラ、と申します。アリス様ですね。お待ちしておりました」


 「サラさんって仰るの?名前も素敵ね。お父様のお知り合いかしら?それともお母様?」


 「滅相もございません」


 建物の中は暗くて、足元がおぼつかないほどであったが、サラが前を歩いているからか、さほど怖さを感じなかった。


 光が徐々に強くなっていき、アリスは目をつぶってしまったため、サラがアリスの手を引いて進んで行く。


 どこまで行くのかと思ってサラに声をかけようとしたとき、サラの足が止まったため、アリスも足を止めて目を開ける。


 「まあ、素敵!!」


 目の前にあったのはとても巨大な門で、スペード形になってる扉に、周りは緑で囲まれており、塀の上にはスペード形の柵のようなものが設置されている。


 「時の中に己を見つけ、時と共に己を磨け」


 「え?」


 「さあ、この扉をお開けなさい」


 「開けるのね!とても楽しみよ!!」


 言われた通りにアリスは扉を開ける。


 思っていたよりも扉は軽くて、それほど力を入れなくても簡単に開けることが出来た。


 中に入ると扉は閉まってしまい、アリスは中から扉を開けようと試みたが全く開く気配がなかったため、諦めて散策することにした。


 洋風のアパートがずらっと立ち並び、テトリスをしたらすでに全て消えているであろうほどに綺麗に並んでいる。


 「まあ、時計塔・・・」


 中でも最も目立ったのが、高くそびえたつ時計塔だった。


 立方体の側面、一面にのみ文字盤が表示されており、その上には三角形の可愛い帽子を被ったような形をしている。


 「ここはどこかしら・・・」


 「アリス様でございますね」


 名前を呼ばれたため振り向くと、そこには一人の男性がいた。


 精悍な顔立ちで青い目、真っ黒で少し伸びた前髪に短い後ろ髪、額には赤いバンドか何かを巻いている。


 紺を基調とした、まるで騎士のような格好をした男性の腰には、剣が添えられている。


 「私はこの場所を担っております、ハボックと申します」


 「ハボックさん?やっぱり紳士でしたのね」


 「ここでのルールを説明させていただきます」


 「ルール・・・?」


 何のことだろうと首を傾げるアリスだが、そんなことお構いなしにハボックは話す。


 「あの時計塔に上り、針を十二時に合わせること。それが脱出の条件となります」


 「十二時に合わせる?脱出?一体何のことですの?」


 「自然と十二時になった時と無理矢理十二時にさせた時では音が異なりますので、インチキは通用しません。それが出来なければ、あなたにはここで一生を過ごしていただくことになりますので。それでは、武運を祈っております」


 「あの・・・」


 ハボックは言う事だけ言うとさっさといなくなってしまい、アリスは街を歩くことにした。


 言われた通りに時計塔を目指して歩いてみるが、全然近づけない。


 どれだけ遠くにあるのかと、アリスは一旦休むことにした。


 すると、放送が流れる。


 『これより、ゲーム通りゃんせ、開始』


 「とお・・・?なんですの?」


 すると、街中から子供たちが走ってきた。


 何事だろうと思っていると、目の前で子供が大人に捕まり、何処かへと連れて行かれてしまった。


 それが一人や二人ではなく、気になったアリスは後を付いて行った。


 協会に集まっているらしく、アリスはこそっと扉の隙間から中の様子を窺う。


 「余計なことを見たのは、誰だ?」


 「余計なことを聞いたのは、誰だ?」


 「余計なことを言ったのは、誰だ?」


 大人たちに掴まった子供たちは、次々に自分がしたことを白状する。


 「余計なことを見たのは僕です」


 そう言った子供の目をくりぬいた。


 「余計なことを聞いたのは僕です」


 そう言った子供の耳を削ぎ落した。


 「余計なことを言ったのは私です」


 そう言った子供の口に杭を打ち込んだ。


 「・・・!!!!!」


 アリスはあまりに驚き声も出ず、なんとか這いつくばりながら遠ざかる。


 心臓がバクバクと鳴っているが、それを宥める手立てなど知らない。


 しばらくしてゲーム終了の放送が流れると、大人たちがそこから出てきたため、アリスはみないなくなってからまた中を覗く。


 すると、そこには裸にされ、祭壇に並べられている子供たちがいた。


 「・・・っ」


 こみ上げてくる吐き気には敵わず、アリスは吐いてしまった。


 こんなに気持ち悪いと感じたことは、今までにはきっとない。


 身体の震えが収まることのないまま、しかし動けるようになると、アリスは自分が開けた扉のもとへと急いで向かう。


 (こんなところ!!!こんな恐ろしいところに!!!私!!!)


 大きなスペードの門を見つけ、アリスは必死になって扉を開けようとするが、来たときとは違ってやはり全然開かない。


 あれほど簡単に開いたにも関わらず、今はこうしてアリスの非力さを笑っているようだ。


 「何をなさっているのですか?」


 「・・・あなた、ハボック・・・」


 「ここから逃げ出すことはできませんよ」


 「どうして!?あんな、あんな惨いことが出来るの!?子供たちが一体何をしたというの!?こんなところにはいたくないわ!!」


 「・・・あの子たちは、大人にとって都合の悪いことを知ってしまったのです。それに、先程申し上げた通り、ここを出るには、時計塔の針を十二時に合わせるしかないのです」


 「そんな・・・!!嫌よ!!嫌!!」


 「ここでずっと泣いているも勝手ですが、ここにいては出られないことは確かです」


 次にアリスが顔をあげたときには、すでにそこにハボックはいなかった。


 顔をぐしゃぐしゃにして泣いたアリスは、一大決心をする。


 「やるしかないのね・・・」








 アリスは、とにかく歩き続けた。


 時計塔に近づくべく、毎日毎日、陽が昇ってから沈むまで、沈んでからも歩いた。


 それでもなかなか時計塔には近づくことが出来ず、アリスの髪も大分伸びた。


 綺麗に整っていた髪の毛は少しボサボサしてしまい、メイクも崩れている。


 時折、親切そうな人が泊まって行くようにと声をかけてくれるが、ここに来て早々見てしまったあの光景が忘れられず、信用できずにいた。


 アリスは髪の毛を一つにまとめ、それでもながくなってしまったら何重にも重ねて縛った。


 「あの、大丈夫ですか?」


 一人の青年が、声をかけてきた。


 アリスは思わず距離を取ってしまったが、その青年はアリスに向けて降参のように両手をあげると、困ったように笑う。


 「実は僕もここに来てまだそれほど日が経っていないんです。だから、まだその、慣れていなくて・・・。時計塔はとても遠いですよ」


 「私・・・」


 「怖がらないでください。温かい食事でもどうです?その様子じゃ、まともに寝てすらいないんでしょうし・・・」


 青年の言葉に、アリスはとうとう泣いてしまった。


 緊張の糸がぷつりと切れてしまったようで、しばらくのあいだ、街に流れていた放送もまともに聞けなかった。


 青年の胸で泣き続けたアリスは、青年の家でしばらく厄介になることにした。


 「ありがとうございます」


 「いや、いいんですよ。気にしないで」


 「ここは一体、どういった場所なんです?私、怖くて・・・。定期的に流れてる放送も、ここ最近はずっと聞けずにいて・・・」


 「無理ありませんよ。僕だって、未だに怖いんですから。ここでは大人しくしていた方が身のためです」


 「でも、ここから早く出ていきたいの!」


 「それは、僕も同じです」


 青年は、アリスの手をそっと握る。


 初めて男性に触れられたことで、アリスは顔を真っ赤にしてしまう。


 しかし、真っ直ぐに自分を見てくれる青年にドキドキしている自分がいて、アリスも青年の手を握り返す。


 「一緒にここから逃げましょう」


 「本当ですの!?」


 「ええ。実は・・・」


 青年の話によると、時計塔は何年かに一度、修理が行われるらしい。


 その修理屋と青年はちょっとした顔見知りで、賄賂を渡せば修理した後、時計塔の鍵を開けておいてくれるかもしれないという。


 修理が終わる日に時計塔の近くで待ちかまえて、終わったらすぐに時計塔にのぼって針を動かす。


 「でも、時計塔までとても遠くて・・・」


 「実は、近道があるんです」


 時計塔まで距離があると思っていたが、実はそれほど遠くはないらしい。


 なんでも目の錯覚か何かで遠く感じているだけのようで、実際には結構近づいていると青年に言われた。


 アリスはそれを聞いて希望に満ち溢れ、つい、青年に抱きついてしまった。


 「あ、ご、ごめんなさい!私ったら・・・」


 「いや、嬉しいです」


 そう言って、青年はアリスを抱きしめる。


 親に可愛がられていたアリスは、抱きしめられるという行為自体は初めてではないものの、好意を寄せる男性に抱きしめられることが、こんなにも幸せに満ちたものだとは思っていなかった。


 ここに来て初めて、アリスは安堵した。


 青年とひとつのベッドで寝て、時には一緒にお風呂に入ることもあった。


 青年といるだけで、アリスの心はとても裕福になったように感じた。


 時計塔の修理の話が出たことを青年が噂で知ると、すぐさまアリスに教えた。


 「まあ、本当!?」


 「ああ。来週修理の予定らしくて、僕は修理屋の男に話をつけてきたんだ。賄賂を渡しておいたから大丈夫」


 「その、賄賂っていうのは、何を?」


 「そんなこと、君が知らなくても」


 それからアリスと青年は、ただ時を待つ。


 ひとつ気がかりだったのは、青年は他の女性とも仲が良いということだった。


 初めて好意を寄せた男性が青年だったアリスにとって、青年が自分以外の女性と仲良くしているのはあまり良く思っていなかった。


 だから、青年の前ではそれを見せなかった。


 真っ白が似合うアリスを演じた。


 そして計画実行の前夜、青年からこんなことを言われた。


 「アリス、もしここから出られたら、僕と一緒になってくれるかい?」


 「嬉しいわ!!もちろんよ!!」


 「アリス、君だけだよ」


 「私もよ・・・」


 二人が暑い夜を過ごした翌日、身支度を整えて計画に向けて準備をする。


 修理屋を見つけると後をつけていき、修理屋が知っている近道を抜け、あっという間に時計塔に着く。


 「本当にすぐ着いてしまうのね」


 「だろ?さあ、あとは修理が終わるのを待つだけだ」


 待っている間、暇だったアリスは近くの繁華街へと出かけることにした。


 青年は青年で友人と会ってくると言っていたため、アリスは一人で向かう。


 煌びやかに着飾っている女性たちが沢山いるが、鏡に映る自分を見る度に、自分が一番綺麗だと確認する。


 他の女性に、青年を取られるはずなどないと。


 夕方になって待ち合わせ場所に行くが、青年はまだ来ていなかった。


 二時間ほど経っても来ない為青年を探しに行くと、青年が入っていったという証言があり、その店に入って行く。


 「ここは・・・」


 その店の前には、『ずいずいずっころばし』という看板が立てられており、淫らな姿をした女性たちがショーケースのように並んでいた。


 こんなところに青年が来ているのかと思って探していると、簡単に見つかった。


 「何をしているの・・・?」


 「ああ?女抱いてるんだけど、何?」


 「何って・・・どうして!?私だけって言ってたじゃない!!!」


 「この店はそういう店なんだよ。女は抱かれてナンボってね。ま、とはいっても、どいつもこいつも壊れてっけど」


 全く悪びれた様子もなくそう言い切った青年は、アリスのもとへ戻る様子もなく、また別の女性に手を出す。


 それを見て、アリスは逃げだした。


 こうなったら自分だけでも逃げようと、アリスは修理屋が帰るのを待つ。


 そして修理屋がいなくなったところで、階段を全速力でかけあがり、時計塔の機関部まで辿りついた。


 「どうやったら行けるのかしら・・・」


 文字盤は外にあるため、どうやって動かせば良いのか、はたまたどうやっていじることが出来るのかが分からなかった。


 てんやわんやしていると、そこへ青年がやってきた。


 「今更何よ!!ここを出られても、あなたなんかと一緒にならないわ!!!」


 青年は後頭部をかきながらアリスを一瞥し、大欠伸をしながら近づいてきた。


 そして所謂壁ドンの形になると、アリスの耳元で囁く。


 「俺が汚らわしいとでも思ってる?」


 「と、当然ですわ!!」


 「じゃあ、お前は?お前だって、他の男と寝てんだろ?俺が知らねえとでも思ってたか?」


 「へ・・・?」


 青年は器用に時計塔の小窓を開けると、さらに後ろで一つに縛っている、アリスのとても長くなっている髪の毛を解いた。


 しゅるしゅると地面にまで着いてしまった髪の毛をアリスがあげようとすると、下から誰かが引っ張っているらしく、頭が持って行かれそうだった。


 「俺に会うまでは確かに無垢だったけどよ、それからはすごかったじゃねぇか。自分から誘ってくるわ、他の男を唆して他の女から奪うわ、金巻き上げるわ。俺が仲良くしてただけの女に会って、随分と暴言吐いたらしいな?コケにされたって泣いてたぜ」


 「私っ・・・そんなこと・・・!!」


 「女ってのは怖ぇなぁ。男なんて最近知った女が、もう店の女より緩いんだろ?」


 「馬鹿にしないで・・・!!」


 青年の頬を叩こうとしたが、簡単に避けられてしまい、手を掴まれてしまった。


 青年は渇いた笑いをしながら、アリスを開いている小窓へと近づけて行く。


 「そもそも俺、もとからここの住人だから。お前と一緒に出るつもりもねぇし、お前はここから出られねえ。わかった?」


 「嫌よ!!私は出るの!!」


 「何が嫌なんだ?お前が大好きな男たちが沢山いるんだぞ?何人に抱かれた?何人に貢がせてる?」


 「止めて・・・っ」


 「自分よりも先に妊娠した女、何人流産させた?」


 「違う・・・」


 「助けてくれって叫んでる子供、何人見殺しにした?」


 「私じゃ無い・・・」


 「お前は綺麗だが、歳には勝てない。ずっと、永遠に綺麗でい続けたいんだろ?ずっと、女として見てほしいんだろ?なら、方法は簡単だ」


 青年は、アリスの首裏筋を掴むと、アリスに口づけをする。


 濃厚な口づけが数十秒続いた後、青年はアリスの目をしっかりと見る。


 「自分を綺麗だと思ったまま、いなくなることだ」


 そう言うと、青年はアリスから離れる。


 下でアリスの髪の毛を引っ張っている人たちの力によって、アリスは自然と重力に導かれる方へと動く。


 目の前にいる青年は微笑んでいるが、アリスが伸ばした腕を掴もうとはしていない。


 そのまま落下すると、アリスの身体はあらぬ方向を向いていた。


 だが、奇跡的に一命は取り留めたらしく、アリスの身体は一旦病院へと運ばれ、治療されることとなった。


 とはいえ、身体が無事にもとの場所に戻っただけで、アリス自身はまるで人形のようになってしまった。


 長かった髪の毛はばっさりと切られる予定だったのだが、女性だからある程度は残してあげてほしいと誰かが言ったらしく、ここにきたばかりの長さほどに戻った。


 そこに、見舞いが来た。


 「・・・植物状態とは、嘆かわしいですね。しかし、あなたのことはよく分かりました」


 見舞いにと持ってきた百合の花を、寝ているアリスの足元に置く。


 「来たばかりのあなたであれば、“アリス”になる資格が、十分にあったのですが。やはり、難しいものですね」


 ハボックは病室から出ると、時計塔へと向かった。


 そこから眺める景色に、微かに微笑む。








 「ホバード、答えを」


 スペードを担うハボックの役目は、“SACRIFICE”と“SENTENCE”。


 「そうさなぁ・・・」


 ニヤリと笑ったホバードは、すでに目覚めることはないであろう、永遠に夢の中でお茶会をするアリスに告げる。


 「穢れたアリスに、アリスになる価値なし」


 「今回もまた、ダメだったな」


 「あのアリスなら、もしかしたらと思ったのに」


 「狭い世界で生きていたから、自分というものがよく分かっていなかったんでしょうね」


 「ドルタ―、どうする?」


 「過去のアリスのことなど忘れろ。すでに価値なしと判断されたんだ」


 「でも、アリスは何処にいるの?ブルージュ、ちゃんと仕事してるの?」


 「失敬な。ちゃんとしてますよ。鏡が見せるアリス候補なのだから仕方ないじゃありませんか」


 「鏡が壊れたとか」


 「壊れません。正常に動いてるはずです」


 「なら、それほどの価値があるアリスがいないってことだ。どいつもこいつも話にならない」


 「まあまあ。そのうち見つかるさ。気長に待とうじゃないか」


 「そうね。まあ、私はドルタ―に従うわ。あなたこそ、全てを知る、鍵を握る者なんですから」


 「プレッシャーじゃ」


 「あ、ジジイに戻りやがった」








 アリスを探す者達がいた。


 彼らは何故アリスを探そうとしているのか。


 そしてまた、一人のアリスのもとへと、招待状が届くのだ。


 『親愛なるアリス様へ


     心より愛を込めて』


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タナトス maria159357 @maria159753

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