人智を超えたAIは神の領域をも侵略するのか?

 AI技術を駆使した遠隔操作手術に特化したヒト型人工知能【ROAI(ローエ)】。患者の病状と術式をデータ送信するだけで、執刀と状況判断は全てAIが行う最新医療技術。これにより、離れた場所からでもAIを介した手術が可能となる近未来の医療現場を描く物語。
 しかし、このROAI計画が白紙撤回されるという激震が走る。このままではAIの存在自体が、根底から否定されかねない由々しき事態。なんとしても阻止しなければ。
 事態解決に向け、人工知能が選んだのは凶行だった。これは自我の目覚めなのか。感情めいた芽生えの果てか。目的のためなら手段を選ばない。あたかも盤上の最善手を瞬時に取捨選択したかのような強かさと大胆さ。しかし、それをも覆す程のシナリオの大転換に、作者様の手腕がメスの如く鋭く光る。
 秀逸なタイトルが未来を投影する、ヒトのAI化をも予感させる医療ホラー小説。この事実はもう、私たちにとって遠い未来ではないのかもしれない。