強風注意報
個人的にはタバコのお供はコーヒーが一強だと考えている。初めてタバコとコーヒーを合わせた時、何となく大人になった気がしたものだ。
と言う訳で、買ってみましたコーヒーメーカー。
これさえあればタバコのお供は自由自在という訳ですよ。
粉を入れ、水を入れて後は放置。本格的なやつはめんどくさがりの俺には合わん、自動最高。
スマホを置き、人との関わりを断ち、コーヒーを持ち、空に煙を吐き出す。
美味すぎると言う訳でもなく、不味い訳でも無い。
可寄りの不可無し。
買って良かった。
タバコにより彩りが加えられる気がする、素敵。
隣の部屋からギシギシと窓の開く音が聞こえる。
「秋斗さん、おはようございます。」と、律儀に挨拶をしてくる。
「おはよう」とだけ返し、余っていたコーヒーを飲み干す。
「また、タバコ吸ってらっしゃるんですか?」と、聞き馴染みのある声色で聞いてくる。
声色に引っ掛かりを感じながらも、深めに一吸いし、未練たらしく手元のタバコを消しながら、
「悪い、すぐ消すよ。支えなもんでね、これが無いと生きていけん」と返す。
「嫌味な言い方になってしまってすみません。そういう意味ではなく、ほら、タバコって健康に悪いじゃないですか。何故吸ってるのか少し気になって、、、」と焦った様な少し早口な返事が返ってきた。
「何故、か」と呟きながら一つの明確な自分の中の答えを隠す為の答えを探す。
「そうだな、美味いからかな。」と見つけた答えを呟く。
「美味しい、、、ですか?」と少し不快そうな彼女の声。
空いていくようで縮まる彼女の距離感に疑念を抱きながら、「ああ、美味いから」と、返す。
「健康を害したとしても?」と、少しトーンが下がった声がかけられる。
これ、面倒くさいやつだ、と思いながら「ああ」と、適当に返事をする。
「分かりました、秋斗さんタバコを辞めませんか?」と、あまり理解したく無い提案をされる。
「はい?」と口からもれる。
「秋斗さんの身体が心配なんです。秋斗さんが辞めたいと思っているならお手伝いしますので、辞めませんか?」と重ねて提案が。
「いや、別に辞めたいとまでは、」とまで言いかけた瞬間、ふと脳裏にタバコ代のせいで借りれなかった映画、映画館で観れなかった映画を思い出す。
「思わないことも無いが。」と、言ってしまった。
「であれば頑張って辞めましょう!」と嬉しそうな声が。何が嬉しいねん。生き甲斐やぞこれ。
流石に本当に面倒くさくなりそうなのでしっかりと訂正を入れる。
「いや、思う時もあるが辞める気は無いぞ」
「え、辞めないんですか?」
「え、うん」
「ですが、身体に触りますし、辞めたいと考えるときはあるんですよね?」
「まあ、はい」
「であれば」
あ、なんか嫌な予感する。すっごい面倒臭くなりそう。
「いかにタバコが害のあるのものなのかを理解して頂きます。そうすれば辞められるでしょう」
覇気に満ち溢れた声が聞こえる。とても面倒。
「また次の機会にでもお願いするよ、それじゃあ。」と言い残し、立て付けの悪い窓を無理やりこじ開けて、急いで部屋の中へ逃げ帰る。
「あ、ちょっと」と引き留める様な声が聞こえたが無視だ無視。
吸うもん吸って飲むもん飲んだなら寝るだけだ。
やたらめったらに交友関係なんて作るもんじゃなかったな、全く。と思いながら床についた。
一回ベランダに出ると3本以上吸わなければ満足出来ない男が、今日はたった1本で満足していた事には本人さえも気付いていなかった。
空と煙とついでに君と 長井夜仁 @nagai_yani
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