あとがき

あとがき&後日談、もしくは始まりの母

 深夜のコンビニには変な人が現れる。

 家出した女子校生だったり、家出少女を探す見るからに変質者なシスコン女子大生だったり。

 けれども、いくら深夜のコンビニといえど、早々何度も変人が現れるわけもない。

 だから、暫くは安泰だろうと気を緩めていたのだが、そこに1人の女性が現れた。


 視界の端に映った黒髪から、またセイカかと眉を潜めたけれど、顔を向けた先に居たのはスーツが良く似合う、理知的な女性だった。

 長い黒髪。切れ長の目は鋭く、けれども怜悧な魅力が備わっていた。


 綺麗な人……。

 思わず惚けて魅入ってしまう。

 これまで見たどんな女性よりも美しかった。

 一目惚れなんてモノがこの世にあるとは思ってもいないし、今でも思わないが。

 心を奪われるというのはあるんだな、と実感と共に心臓を鷲掴みにされる。


 すると、女性の目がこちらを向いて息を飲む。

 唯一の店員なんだから当たり前だが、自分を見たという事実に、妙な高揚を覚えてしまう。

 これが勘違い野郎というのか、と平静を装っていると、理知的美人がレジの前に来る。

「いらっしゃいませ。

 なにかお探しですか?」

「……」

 定番の接客セリフを言うが、目の前の女性はなにも言わず、俺の胸元。名札に注目している。


 なに? なんだ?

 あたふたと内心焦っていると、視線を上げた理知的美人の黒い瞳が俺を射止める。

 そのまま、背筋を伸ばしたまま折り目正しく頭を下げてきて、混乱極まる。

「はぇ……?

 や、あの……」

「――娘たちが大変お世話になりました。

 また、ご迷惑をおかけして申し訳ございません」

 言葉を失う。


 頭の中では、彼女が口にした『娘』という1字がピンポン玉のように乱舞している。

 娘……むすめ……娘っ!?

 この人、子供いるのか!? と、なによりもその事実にショックを受けて、くびれすらあるほっそりした腰回りを不躾に見てしまう。


 顔を上げた理知的美人が程よくスーツを押し上げる膨らみに手を添える。

「名乗るのが遅くなり失礼致しました。

 私はセイカとソウカの母、リツカと申します」

「は、はぁ……あ、どうも」

 スッと菓子折りを渡されて、受け取ってしまう。


 ……いや、どういう状況よこれ。

 どうして俺はお騒がせ姉妹の美人母に謝られて菓子折りを渡されているのか。

 フレーメン反応を起こした猫のように固まっていると、理知的美人改めリツカさんが表情も変えずに淡々と言う。


「本日は謝罪に伺ったのもありますが、もう1つ。

 娘たちと仲の良い夜行様に、不躾ながらも折り入ってお願いがございます」

 口を挟む間もなく、リツカさんは俺の手を取る。

 見た目の印象通り、冷たい手のひら。

 突然握られ、もはや高熱と呼べるほど体温が上昇している俺に、彼女が告げる。


「私にどうか――男性との不純異性交遊というものを、ご教授いただけませんでしょうか?」


 深夜のコンビニには変な奴らが集まる。

 それは大抵の場合、一瞬の交わりで、店長に『変な奴が居たんですよ』と報告するぐらいの話題でしかないのだが。

 時折、こうして俺の人生を巻き込んで、騒々しくする。


「はぁ……やぁ……なんて?」

 だからと言ってこれはないでしょうと思ってしまう俺に、罪はあるだろうのか。





 ――いや、ないだろ。


 ◆後日談、もしくは始まりの母_fin◆




~~~【あとがき】~~~

 初めましての方は初めました。

 いつもお読み頂いている方には、こんにちは。

 執筆終わった後、やっぱり水着だなって暫くパソコンすら起動していなかったななよ廻るです。

 よろしくね! やっぱりガチャは悪い文明ぇ……。


 というわけで終わり! ……終わり? ほんとに?

 小説を書いていると、終わりってどこなんだろうなぁっていつも悩みます。

 立てた伏線を全部回収した時? それとも、面白く終わってればそれで良し?


 私は何派とかはありませんが、これからも物語続きそうな雰囲気で書いてしまいます。今回もそう。

 そういう性分なのは、昔からラノベを読んでいても、最終巻らしい最終巻に立ち会えたことが少ないからかもしれません。続刊の発売日がどんどん伸びていって、最終的に打ち切り……。

 話の締め方がわからんのだなぁ。


 とはいえ、今作に限っては書ききれなかった部分がそこそこあるなぁとは思っております。

 こう、情報を小出しにしていると「あれぇ? これ入れられないなぁ?」と摩訶不思議なことが起こるアドベンチャーなのが小説というワンダーランドと言いますか……ねぇ?

 作者の小説力が足りなすぎるだけなんですが。

 小説力ってなに? 記憶力?


 今回はその足りない部分を多少なりとも保管しようと、後日談と言いますかお母様をチラ見せ終了。稼ぎすぎたヘイトが少しでも緩和されてたらいいなぁと思っております。

 真面目すぎるちょっとズレたお母様を書きたかったぁ……。


 ちなみに、これで終わるならと最終話に当たる6章8話はちょっと強めにラブコメディさせてみました。今回はストーリーに注力にした結果、ラブコメ要素というか、イチャイチャ要素あんまり入れられなかったのが心残りだったので。

 やっぱなぁ、私は赤面とか頬を赤らめるとか耳まで朱に染めるとか、そういう真っ赤になって嬉し恥ずかしがるヒロインが好きなので、次作はもう少しイチャイチャさせたいなぁと思います。


 後は作品について少しだけ。

 今作は『非行少女がイートインスペースに入り浸る』というまぁ、タイトル通りな部分を基礎にしてこねこねして出来上がったものです。

 前作の『ダイナー系美少女を拾ったら』同様、ちょっと擦れたヒロインにしたいなぁとこうしたのですが、思ったよりは普通の女の子になってしまいました。影のあるヒロインは難しいなぁ。

 ……? 普通か? あー……うん。普通普通。そういうことにしておく。


 というか、姉のほうがキャラ強くなりすぎた気がしないでもない。

 ミスコン優勝者でシスコンな腹黒変態って……どうなのよ。

 妹のキャラ喰ってる気がしないでもない。


 心残りはメイドさんを出せなかったことですねぇ……。できるなら銀髪巨乳なメイドさん。

 もうあれだな。専用銀髪巨乳メイドさん作って、作品関係なく登場させるしかないな。作品の雰囲気? メイドさんの前には些末なことよ……。



 そんなこんなで『コンビニ非行少女』はこれにて閉幕。

 今作も多くの方々にお読み頂き感謝しかありません。

 この場でお礼申し上げます。ありがとうございます。


 ここ最近は毎日投稿の恐怖に怯えて過ごしていたので、暫くはゆっくりしつつ短編ラブコメでもあげようかなって思っています。(ちょっと途切れたのはナイショ)


 それでは、名残惜しいですがまた次回。

 次作でお会いできたら嬉しいです。

 おつめぐ~。

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深夜のコンビニバイト中に入店してきた非行少女に餌付けをしたら、俺のシフトを狙ってイートインスペースに入り浸るようになってしまった。 ななよ廻る @nanayoMeguru

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