第28話 丸腰
今日は『あすか園』のクリスマスパーティーだ。
前日に従姉妹の結婚式があり、遅くまで二次会に付き合わされた。三次会は何とか免れたが少し顔が浮腫んでいる。
桜木武士とパーティーのご馳走の買い出しをして『あすか園』に向かった。
ミユちゃんは、あれから桜木武士に夢中で訪ねるたびいつもそばに張り付いてくる。
なかなかに手強い強敵だ。ミユちゃんも私をライバル視している様で、いつも私と桜木武士との間に入って邪魔をしてくる。
たった今も桜木武士の隣を巡ってバトル中だ。
子どもには既存の武器は通用しなかった。それで良い今度は素手で勝負する。私には保育士はやっぱり向いてない。私より桜木武士の方がよっぽど保育士に向いていた。
私は保健室の先生を目指している。
自業自得とは言え辛い思いをしたあの学生時代に、逃げ込める場所があれば良いのにとずっと思っていた。
私のように素裸を見せられない、素直になれない子どもたちが少しの間だけでも鎧を脱げる場所を作りたいなと願っている。
桜木武士に、
「保健室のエロい先生になるねん」
と言うと、
「それは大きいがらがらどん並に怖い」
と真顔で言われた。
私の敵は女ではなく自分だった。
しょうもない 見えっ張りの スカスカの自分。
これからは自分との勝負だ。いつの日か打ち勝てた暁には、桜木武士と付き合っても良いと太鼓判を押せる女になるつもりだ。
丸腰でも闘ってみせる。女は強い。
とりあえず今は、目の前のミユちゃんと正々堂々勝負だ。
ミユちゃんと席を取り合う私を桜木武士は呆れたように、でも楽しそうに見つめていた。
桃色武装 大和成生 @yamatonaruo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます