明日死ぬことで今日を延命する退廃的な生命維持

積極的自殺による消極的な生存 これが本作の要約だ。

本作はどうしようもない世の中で灰色の2人が死のうとするお話である。
灰色というのは自分からも他人からも必要とされず排除もされない、一言で言えば"自他の双方にとってどうでもいい対象"のことだ。
そんな灰色人間にとって自殺とは、溺死寸前が常態化した世界でかろうじて水面に顔を出し、短く息を吸う行為である。喉が締め付けられ常に酸欠の彼らにとって唯一、呼吸がしやすくなる世界である。
それは自殺場であり、あの電車でもあり、灰色人間同士の共依存関係でもある。この2人はあと何回の自殺ができるのだろうか。そう暗い期待感を抱いた作品だった。

三秋縋作品好きとして、今後の作品でマッチゃ先生の世界観がより高められ純化されることが楽しみだ。