博士が遺した機械
文重
博士が遺した機械
「随分とへんてこな格好の機械ですね。“鉄仮面”のような」
「太った“鉄の処女”に見えなくもないが」
「顔のないロボット?」
「取っ手はあるが開きませんな」
若かりし頃から天才と謳われた博士が亡くなった後、研究所兼自宅の調査のために調査団が派遣された。データ類は几帳面に分類されており、その独創性に驚かされこそしたものの、大方の装置については用途や操作法に不明点はなかった。唯一、博士の寝室に据えられたこの機械にだけは何の説明書きもなく、たった1人の助手も、国を代表する科学者たちも首をひねるばかりであった。
外側からの照査の結果、危険物でないことが判明し、その機械は助手の手元に残された。
数十年が経ったある日、みずからも孤高の権威となった助手の手が、偶然例の機械に触れた。すると突然、上面が開き、愛する者たちのありし日の姿が内部に浮かび上がった。涙にむせびながら、助手は博士の発明の偉大さに打ち震えるのだった。
博士が遺した機械 文重 @fumie0107
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます