君とふたり
鎹 秋
第1話
鏡の前に立つ僕の姿は見るに堪えない。顔が悪いっていうのもあるのだろうけど何より太っている。
身長は百七十二センチほど、体重は三十二キログラムだ。僕の姿を見ると皆口を揃えて痩せすぎて気持ち悪いだとか骨見たいだとか言ってくる。ただ、僕の目には痩せている自分は見えない。
僕がそう思い始めたのは中学二年生の春頃だ。
女子が少し色気づいている頃、僕はある子に恋をしていた。教室の廊下側から数えて二番目の一番後ろの席で本を読んでいるような子だ。顔は可愛いいとは言えないけれど不思議と何か惹かれるものがあった。
当時の僕は別に友達がいないというわけでもなく、固定のメンバーがいる言わばD軍男子のようなものだったのだろう。
ある時、クラスの女子がその女子に話しかけていた。
「ねぇ、太っている男ってどう思う?」
そんな少し冗談交じりの質問に彼女は答えなかった。そんな態度が気に食わなかったのか、はたまた質問を返して貰えなかった恥ずかしさからか舌打ちをした。
「質問に答えろっつってんの」
女子が声を荒らげる。その間、彼女は一言も発していない。
そんな時、救いの手を差し伸べるかのようにチャイムが鳴った。女子が手を離すと彼女は足早にトイレへと向かっていった。
君とふたり 鎹 秋 @kasu_gai
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