転生ライダー

真岸真夢(前髪パッツンさん)

転生ライダー

「おはようございます」

「…………」

日曜日の午前8時前、かなえは目と耳を疑った。

今目の前にいるのは本当に自分の息子なのだろうか…

見目みめは間違いなく自分と夫の血を分けた今年で12歳を迎える息子の蒼太そうたに違いない。しかし、口調や声のソレは自分が記憶している息子のものとは全くの別物だった。

「アナタ誰なの?蒼太は…?」

自分でも気が触れたのかと疑いたくなる質問だけど、母親の勘と言うものは案外当たる。

「私は本日の半分ほど息子さんの体を使わせていただく夢野雪消ゆめのゆきえと申します。一応お父様の方には昨夜許可をもらっているんですが、知らされていませんでしたか?」

礼儀正しい口調で告げられた知らない名前に困惑する。息子じゃないと初めに疑ったのは自分だったけど、こうもやすやす認められるとコチラも釈然しゃくぜんとしない。

「夢野さん、息子の体を借りるってどう言う事?それに裕太ゆうたさんが許可したって…」

ガチャばたん。

「ふぁあぁ〜ッ…おはよう蒼太…じゃなくて雪消ちゃんだっけ?よく眠れた?」

夫の裕太が眠そうな顔をして寝室から出てきた。

「はい、おはようございます。お陰様で今日は良い一日になりそうです」

「それはよかったね。…鼎さん僕もう仕事行かなきゃだから雪消ちゃんのこと見てあげててね」

「宜しくお願いします」

「えっ?え?」

自分が理解できないうちにドンドン話が進んでいく。

「じゃ、宜しく〜。雪消ちゃーん始まるの8時からだからそろそろだよ〜。じゃぁ行ってきま〜す」

バダン…行ってしまった。自分と雪消を残して…

「改めてまして私は本日蒼太くんの体をお借りする雪消と申します」

ちょこんと息子の小さな体で正座をされる。私は特段背が高い訳ではないけどまだ11歳の息子体格で座られると顔と顔に距離が開いてしまって居た堪れない。

「そ、蒼太の母の鼎です…」

目線を合わせるため雪消と同じ様に床に座って自己紹介をする。

「一応説明させて頂きますね。お父様に説明を受けてない様ですので」

「はい、何も聞いて無いです」

夫はたまに突拍子のないことを何の前触れもなくやらかす。それの尻拭いを学生時代からしてきたせいで気づけば夫婦になっていた。私もまァ、満更まんざらでは無かった訳だ。なべぶたとはよく言ったものだと思う。

「私、今死にそうなんです」

「へっ?」

今この子、死ぬって言った?それは息子がだろうか?それともこの子か?どちらにせよ私にどうにかできる事は!?

「でも死ぬ前にどうしても叶えたい夢があって願って願って願い続けていたら昨夜、この体に乗り移っていました。」

「そんな事ってあるのね…」

こんな奇跡があるなんて驚きと言うか何と言うか。

「でも何で裕太さん…ウチのお父さんはアナタが乗り移ってることを知ってたの?」

「それは、その後お父様が部屋にやってきたんです。どうやら夢で神様にあって私のことを宜しくと言われたそうで」

確かに夫は前から不思議ちゃんだと思っていた。旅行先で迷子になった時も「神様がこっちって言ってる気がする!」と言って適当に突っ走って行って本当に観光経路に戻れてしまったことがあった。偶然だと思っていたけど本当に神様っているのかもしれない。

「事情はわかったわ。それでアナタのそんなに叶えたかった夢って何なの?」

「ちょっと恥ずかしいんですけど…」

「どんな夢でも私は笑わないわよ」

「…ダーが見たいんです…」

「?なんていったの」

「か、仮面ライダーが見たいんです!」

………

「え、仮面ライダーってあの?」

「///はい///あの仮面ライダーです」


どんな願いでもどんと来いと思っていたけどまさかのまさか過ぎでしょコレは!


To be continued...

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転生ライダー 真岸真夢(前髪パッツンさん) @maximumyuraku

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