異世界かわいそうストーリー。「じゃないほう」の賢者、お疲れ様で帰還する
冒険者たちのぽかぽか酒場
第1話 残念な異世界賢者は、どんな色で輝くのか知っていますか?
「残念な異世界賢者」
そういうやつ、いると思うな。
冒険者ギルドにいたあいつが、そう。
「俺、いってくる。町を襲っている悪魔術師を、倒してくる」
あの賢者は、そう言って、ギルドを出ていったんだよな。
それから、しばらくして…。
そいつとは、連絡がつかなくなってしまった。
「あの賢者、最近見ないな」
「倒しにいったやつに、やられたのかな?」
「逆にー?」
ギルドでは、不安が続く。
町を襲う悪魔術師の姿が見えなくなり、安心できてきたというのに。
「気になるよなあ」
「ああ」
「どういうこと?」
「わからん」
事態が変わったのは、その夜。
ギルドに賢者が帰ってきて、他にもたくさんわかってきたぞ。
「…ただいま、帰った」
「おお!」
「生きていたか!」
「生きて、帰ってきたか!」
「勝ったのか?」
そこで皆は、悪魔術師を倒した方法を、賢者本人から聞くことになる。
「…俺は、これまでに学んだ知恵を生かせたよ」
「そうか!」
「さすがは、賢者」
「…で、どうやったんだ?」
「まずは、敵の腹の中に飛び込んだ」
「え、え?」
「どういうこと?」
「あの悪魔術師って、実は、身長が100メートルくらいあったんだよね」
「それで?」
「そういう敵を倒すには、わざと敵に飲み込まれて、敵の胃袋の中で暴れ回るべきっていう話を思い出してだな…」
「知ったことを、応用したか」
さすがは、賢者。
知恵ある者。
「いいね」
「賢い」
「あっぱれ冒険者」
そう言われると、思っていた。
…が!
…待て!
まわりからは、ちっとも尊敬されなくなる。
賢者はすぐ、ギルドから追い出されてしまった。
残念!
ああ、そうか。
なるほど。
冒険者ギルドから追放され、出禁にもなるだろうさ。
だって…。
賢者は、身長が100メートルくらいある敵の腹の中から、出てきたんだろう?
それなら、悪魔術師の巨大なウ◯コといっしょに、もしくは巨大なウ◯コそのものの中から出てきたと考えることもできるじゃないか。
「お前、くさっ!」
「フケツ!」
「お前なんか、このギルドから出ていけ!」
かわいそうに。
いると思う。
こういう、皆が考える賢者「じゃないほうの」賢者もいると思う。
異世界は、金色に輝く。
賢者も、金色に…いや、茶色に輝く?
かわいそうストーリー。
異世界かわいそうストーリー。「じゃないほう」の賢者、お疲れ様で帰還する 冒険者たちのぽかぽか酒場 @6935
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます