少女と転生少年

「……!!×××……!!」


 大きな声が聞こえ、目が覚めた。何だかとても長い夢を見ていた気がする。辺りを見回すと、白いベッドにサイドテーブル、椅子に座った女性がいた。どうやらここは病院のようだ。そしてこの女性は……私の母親か。何故か思い出すのに時間がかかってしまった。


 ×××とは誰だ。私は違う名前だったような。思い出そうとすればするほどわからなくなっていく。いや、そういえば×××は私の名前だ。ならば何故×××が誰なのかわからなかったのだろうか。ましてや他の名前だったと思うなんて。状況から見るに、私は病み上がりだろう。その影響で自分の名前を認識するのに時間がかかったのだろう。きっと。


何となく天井を眺める。そこには青空がある訳もなく、ただただ白かった。


青空。青。瞼の裏にこびりついて離れないあの色。何で青がこびりついているのか、思い出せそうで思い出せない。


気がつけば私は病室を飛び出していた。私はひたすら走っていた。何故かはわからないけど、あの場所に行かなければならないという焦燥感にかられていた。病み上がりの身体では、呼吸もままならない。でも、あの場所に行かなければならないのだ。


 走って、走ってたどり着いたのは海。海水浴をする季節でもないため、賑わってはいなかった。そこには先客がいた。黒髪黒目の、いたって平凡な色彩をもつ少年。なのに、彼の髪や目が一瞬だけ青く見えた。光の反射のせいだろうか。海辺に立つ姿は、天使様のようだった。


「ハルちゃん」


 彼は私に向かってそう言った。


「ハルちゃん……!やっと会えた……!」


 私の名前はハルではない。×××だ。


「外見は来世と違ったけど、一目でハルちゃんってわかったよ」


 人違いと思ってしまうシチュエーション。けれども不思議と「ハルちゃん」は私を指しているに違いないと感じる。


「あぁ、今の君は何も知らないのか」


 そう言っている彼の姿は、少し寂しそうだった。


「来世でハルちゃんは、前世の俺と―――再会することを誓ったんだよ」


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転生少女と厨二少年 睦月 @mutuki_tukituki

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