第14話 入学試験(3)
実技試験の内容は3つに分けられる。
一つ目、魔力鑑定だ。
これが俺の中で一番の鬼門となるだろう。
魔力の量、質、属性を測るものだ。
魔力の量というのはそのままの意味でその人に秘められている魔力の量を見るだけだ。
魔力の量が多ければ多いほどたくさんの魔法が使えるということだ。
魔力の質というのもそのままの意味でこの質が高ければ高いほど魔法を放った時の消費魔力が少なくなり、魔法の威力も上がる。
魔法の属性は【土】【風】【水】【火】の四つが基本属性と呼ばれていてそこから派生した現在では300種類以上の属性がある。
自分に合った属性を見つけてそれを伸ばすことが強くなるための近道だ。
龍雷、響、冬香はどれをとってもとても良い評価が出るだろう。
実技試験二つ目、的当てゲームだ。
試験監督者が的を用意するのでそこに攻撃を当てるだけだ。
この試験では魔法攻撃の精密性、威力を中心的に見ることができる。
ここでは【冷氣】の訓練の成果を存分に発揮したい。
実技試験三つ目は2vs2の対人戦だ。
この試験では対人戦闘での実力、即座な連携、戦闘センスなどを測ることが出来る。
この試験はパートナーが誰かが鍵になってくる。
「……とまぁ、ざっとこんな感じだ!」
「「「なるほどー」」」
龍雷たちに一通り説明したところで試験会場Bにつく。
試験会場Bはドーム型になっており、広いスペースが設けられている。
⦅受験者の皆さん! 順番が来たら目の前の水晶に手を触れてくださいねー!⦆
いよいよ試験が始まる。
魔力鑑定でほぼ0点が確定している俺は他二つの試験でほぼ満点を取らなければ合格はできない。
順番が回ってきて水晶に手を触れる。
「うーん、魔力はそこそこ、属性は風ですね!」
試験管の人にそう言われ、疑問を抱く。
魔力がそこそこ?
なぜ魔力がある判定になっているんだ?
そこで魔力がある事についての心当たりを探す。
まさか……
宿のおじさんがお守りのようなものをくれた。
それには魔力増幅の効果があると言っていた気がする。
元々0の俺にも適応するということか。
でも、これに助けられた。
俺の順番は過ぎ、龍雷の番がやってきた。
「す、すごい! こんな数値見たことがありません! 属性も基本4属性に適応しています!」
冬香は、
「す、すごい! 魔力の質が高過ぎます! これは、どんな魔法も使いこなせます!」
響は、
「魔力の形が独特ですね! 一味違ったあなただけの魔法が使えるかもしれません!」
と予想通り3人とも大絶賛だった。
実技試験一つ目は意外とすんなり終わった。
問題はここからだ。
実技試験二つ目、的当てゲーム。
⦅25メートル離れた的に攻撃を当てるだけだ。的は壊しても良いから存分に魔法を放て!⦆
とのこと。
この試験は冬香が1番最初に受ける事になった。
冬香は味方をサポートする系の魔法だ。
攻撃力や精度を測るこの試験は不利だろう。
どう乗り切るのか……
⦅朝火冬香、前へ出ろ! 魔法を放つまでの時間はどれだけかかっても良いぞ。とにかく威力と精度を上げろ!⦆
「はい」
冬香の周りに純度の高い魔力が集まっていく。
やがてその魔力は冬香の手の中に集中する。
「【ファイアボール】!」
バスケットボールほどの大きさの火球がまた目掛けて飛んでいく。
冬香は魔法の精度が人並み外れている。
問題はその威力だが……
ファイアボールが的に当たった瞬間、的は弾け飛び、半径3メートルほどの爆発を起こした。
すごい威力だ。
誰でも使えるような初級魔法【ファイアボール】だが、魔力の質と量で押し切った。
そこら辺の魔導士が使う中級魔法よりも威力が高いだろう。
⦅す、すごい。本当に的を壊す受験者がいるとは……つ、次の受験者、前へ……⦆
そこからは他の受験者が魔法を放っていくが、どれも的を破壊することは出来なかった。
⦅次、西園寺大和!⦆
「はい」
よし、来たぞ。
低体温症にならないギリギリまで【冷氣】を貯める。
頭上に【氣】を集め、一気に冷やしていく。
俺の脳内では人を殺してしまったあの日のことが情景として映し出されている。
後悔という"負の感情"。
集まった【冷氣】を槍の形にしていく。
ピストルの球ような形状にして風の抵抗を減らす。
回転をかけることで推進力を上げる。
やがて槍は50センチ程まで大きくなった。
この中に限界まで貯めた【冷氣】が込められている。
あたり一帯の気温が下がってきた。
寒い……
「【氷槍】!」
氷の槍を一気に前に押し出すと、ビュンッという音を立てて的に直撃した。
水蒸気のようなものがブワッと目の前の視界を奪い、それがなくなった時には的を中心に25メートル離れている俺の目の前まで真っ白な雪景色となった。
地面は凍り、ドームの中に雲ができた結果、天井があるにもかかわらず雪が降った。
的は大きな氷の塊のようなものの中にあり、気温がとても低い。
⦅こ、これはすごい魔法だ! 的の周りだけ冬景色だ、残った受験者、氷を溶かすまで待っていなさい⦆
試験監督者はそう言って氷を溶かすために火属性の魔法を使い出した。
数十分して、やっと氷が解けたところで響の番が回ってきた。
響は戦ったモンスターの特徴や技を取り込むので独特な魔力を持っている。
どんな魔法を撃つのか楽しみだ。
「【レッサーデーモン、
この前戦ったばかりのレッサーデーモン、しかも見たことのない技を撃つ。
黒色の靄のようなものが的までゆらゆらと流れていき、的に当たった瞬間ボワっと黒い靄が、的を覆う。
靄が無くなり的の姿が見えると、的は根本から腐っていた。
これがレッサーデーモンの隠し玉、黒染か。
当たったものを例外なく腐らせる。
⦅ま、また的直さないと……⦆
なんか申し訳ない。
冬香が燃やして直すのに10分。
俺が凍らせて溶かすのに30分。
響と龍雷のことを考えたら直す時間だけで1時間以上かかってしまう。
⦅次ラスト、東龍雷!⦆
試験官は少しキレ気味で龍雷を呼んだ。
「はい! 【蒼炎球】!」
龍雷は返事をして前に出たかと思えばすぐさま魔法を撃った。
的を中心にあたり一帯焼き野原。
何の溜めもなくあの威力。
龍雷は格が違う。
⦅あーー!!!! もう、また直さないと! ほら、そこ4人満点だ! 試験会場Cに進め!⦆
無事に満点を獲得することができ、試験会場Cへと向かった。
試験会場Cには100人くらいの受験者がいる。
今までグループ分けされて別々の場所で受けていた人たちが集まったのであろう。
⦅今から2vs2の対人戦を行う。チームは各々好きな奴と組めー⦆
俺たち4人は誰が誰と組んでもいいコンビになるだろう。
だからこそ誰と組むか迷う。
「じゃあグッパで決めよう!」
流石龍雷、頼れるリーダーだ。
こうして決まったチームはこうだ。
大和&龍雷
響&冬香
結構いい組み合わせだと思う。
龍雷はこのラノベの主人公として書いていたので1番よく知っている。
響と冬香は幼馴染なので1番相性がいいだろう。
⦅チーム組めたやつからここ並べ⦆
試験官そう言って目の前の地面を指さす。
こうして受験者全員が並び終えた。
⦅じゃあ適当に対戦相手決めるぞー。そことそこ。お前らとお前ら。お前とあいつ……⦆
どんどんとチームを決めていく。
⦅最後は仲のいいお前らだ⦆
えっ?
そう言って指さされたのは俺たちと響たちのチームだった。
そう。今からこの4人で戦うんだ。
敵として……
「おー! 大和、龍雷、よろしくな!」
「龍雷たちが敵って怖い、響頼りにしてるよ!」
「お、おう」
流石幼馴染。
「龍雷がんばろうな」
「あぁ、俺がいる限り負けねえよ!」
俺たちは向き合って試合開始のゴングを待った。
あれっ、ここって俺が書いたラノベの世界!? けーすけ @keisuke0506
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。あれっ、ここって俺が書いたラノベの世界!?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます