第8話 名前
「……どうしてそれを……ヌビリ様から聞いたのかい」
私は頷き、ラムィの目を見る。
「ラムィといると何故か安心しきってたのは、繋がりがあったからなんだって知った」
「…………隠していた訳じゃないんだ。アムがここに来た時、僕は心の底から歓喜した。でも、ここでの記憶は次の世界にも引き継がれる。だから、僕の心配なんてしないで素晴らしい世界に行って欲しかった」
ラムィは下を向いてぼそぼそと口にする。ラムィの優しさが垣間見えたと同時に、これが自分のお兄様なんだと思うと楽しそうだなと素晴らしい世界の想像が膨らんだ。
「母様が一度ラムィの星了を経験した数年後、授かった命が私だった。けれど私は流れてしまって生まれることが出来なかった。そしてまた、私は素晴らしい世界に行こうとしている」
「うん」
ラムィは近くにあった星屑で造られた微細な光の花束を私に渡す。その目には私が流れ星になった日と同じ寂しさが浮かんでいた。
「今度こそ気をつけていくんだよ」
「……ねぇ」
私はその花束を受け取った瞬間、ラムィの手をぐっと握り空番の子が入るカプセルの中にラムィを引きずり込んだ。
「ふたりで行くんだよ」
「え?」
「お兄様よりも妹の私が先に生まれるなんて、ありえないでしょう?」
「どういう……あ!!」
私はぐっと掴んだラムィの手の甲にキスをした。そうして一緒にカプセルに入れば、二人同時に素晴らしい世界に行ける。ラムィの呪縛を解いて、五年前見るはずだった景色を見せてやって欲しい。ヌビリは確かにそう言った。
「私と一緒に来て。お兄様」
「そんなの、無理だって、!! どうやって…………!!」
「ヌビリはこの世界の創造主なんだよ。私たちを繋ぎ合わせてくれる、最高のね……!!」
「
「あぁ良かった。不安でいっぱいだったんです。またこの子を……幸せに出来ないんじゃないかって」
「五年前の死産や、去年の流産もあって心身共に本当に大変だったでしょう。よく頑張りましたね。お腹の双子ちゃん、強く、育ってくれてますよ」
「
「愛と夢に満たされる人生を歩んで欲しいんです。互いを求め合いながら、今度こそ、この世界を謳歌させたい」
「とても素敵ね」
「あっ…………今、強く蹴った……あははっ、なんて言ってるんだろう」
『『―――――――』』
今はこれでしか伝えられないからと、私達は空番のカプセルの中ではしゃいだ。
ここから出たら、沢山伝えようと思う。
空番だった時の出来事、私達の出会い。
天使だった私達の精一杯の愛を。
【双子座の流星 終】
流星景色と逢着 月見トモ @to_mo_00
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます