第7話 彼
ヌビリからある事を託されてから、一年が経った頃とうとうその時が来た。あっという間にやって来たその瞬間に、私は酷く緊張していて、吐き気すら覚えた。
しかし、ようやくこの物語が終わるのだ。私は前を向いてヌビリと最後の時間を過ごした。
「ヌビリ、私を創造してくれてありがとう」
私は初めて背中の羽根を切られた十字の部屋で、再び言葉を交わした。
「……ふふっ、こちらこそですよ」
「今度こそヌビリが創造した世界を見てくるからね」
これが最後の別れだなんて思っていないけれど、天使になってからずっと傍にいたヌビリと離れるのはやっぱり辛くて、私は思わずヌビリを抱き締めた。
「大好きだよ、ヌビリ」
「……私もです。アム。私の愛する天使よ」
ジョキンッ――――。
泣きそうな声のヌビリに背中の羽根を切られながら、私はゆっくりと死んでゆく肩の神経を撫でた。
二度目の天界での生活にたった今、私は終止符を打った。
素晴らしい世界を見終わったら、また感想を伝えに来る。それが何年先になろうとも、ヌビリは待ってくれると言った。その言葉に背中を押されて、私は託された仕事を持って天界から暗闇へと落ちていった。
ふわふわとした感覚が私を包み込み、私の意識は目覚める。光に導かれるように私の身体は双子座の心臓に辿り着いた。
「…………ラムィ、!!!!」
「え、あ、アム?! また空番になれたの?!」
「久しぶり、ラムィ……ラムィ、ラムィ」
私は再び逢えた嬉しさのあまり、抱きつき、何度もその名前を復唱した。
「どうしたのさ、ほら、他の空番の子がみているからさ」
恥ずかしいのか、ラムィは私の手を振りほどこうとするが、私はその度に力強く抱きしめる。
「ラムィ。私の空番が終わるまでそばにいて」
「えっと……仕事あるからそれ以外の時間ならいいよ」
「そうじゃなくて」
「えーと今日は蟹座も見てこないとだから……」
「そうじゃなくて、ずっと私の隣にいてよ……!」
思わず昂る感情に、ラムィはびっくりして肩を震わせる。
「え、えっと、それは……」
私は、もう我慢出来なかった。
「……………ラムィは私のお兄様なんでしょう?」
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