第38話(学園ダンジョン攻略)

俺とクララ、ゴールド・メンバーズの第1勢力はそれぞれ単車で、血便馬鹿山学園へカチコミに向かう。鈴木の妹の救出と高町の処分が目的だ。俺とクララは、鈴木の単車で3ケツで行く。排気量1000ccのモンスターバイクだ。鈴木の単車は集団の先頭を走る。ゴールド・メンバーズのメンバーは皆、金属バットや鉄パイプで武装している。相手も武器を使うだろう、トントンだな。相変わらず、バリカンだけは原付スクーターで着いてきている。あの身長では単車に乗れないな。


十数分で血便馬鹿山学園に着いた。意外と近いな。校門の前は事故った車が数台、レッカーされるところだ。エンジンオイルを路面に撒かれて、こんなに滑りやすくなるとは。おがくずが路面に撒かれてる。オイルを吸着させて除去するためだろう。鈴木が左手を肩まで挙げた。全体に止まれの合図か。鈴木は校門前の路肩に単車を停めた。第1勢力のメンバーも次々と路肩に停まってく。現場検証をしていた警察官がこちらを見たが、すぐに作業に戻った。俺達が横浜陰茎学園ゴールド・メンバーズだと見ただけで分かったか。普通なら逮捕だよな。ノーヘルの奴もいるし。


俺達は血便馬鹿山学園の敷地に入ると、第1勢力のメンバーが散開した。どこに鈴木の妹が捕らえられてるか捜索するのだろう。校庭に敵が居ない事を考えれば、人質は校舎内に居るかもしれない。鈴木は昇降口前で深呼吸をした。大切な妹を人質に捕られたんだ。心中穏やかではないだろう。


「キャプテン・ジャパン、その子を連れてくのか?」

「ああ」

「我も戦力になるはずじゃ。か弱き乙女を無理やり拉致など許せん。レイの敵は我の敵じゃ」

「魔法か?」

「我は大魔法使いクララ・メフィストじゃ。遠距離魔法を得意としておる」


鈴木に魔法の事がバレても問題ないだろう。マキの話題さえ出なければ。


「頼りにするぞ」

「ちょっと待つのじゃ。お主の妹殿がどこに監禁されておるか、サーチ魔法で調べれば判るのじゃ」

「頼む」


クララが詠唱に入った。簡単な魔法なのだろう、3秒くらいで詠唱が終わった。


「サーチ! 妹殿は、最上階の四階の一番奥におるのじゃ」

「どんな風に見えてんの?」

「サーマルゴーグルの様なものじゃ。敵兵は全部で50人ほどじゃ。大体、二階と三階に集中しておる」

「鈴木、血便馬鹿山ってそんなに少数なの?」

「少数精鋭と言ったところだ。血便馬鹿山学園の生徒全員が不良という訳じゃないんだ。それに二度の落雷で数は減ってる」

「楽勝だな」

「油断はするなよ」

「分かってるよー」


頭痛もだいぶ回復した。コンディションばっちりだ。俺とクララと鈴木は昇降口から校舎に入る。


「第1勢力のメンバーは来ないのか?」

「高町が逃げないように全ての出入口を塞いでもらってる」

「そうか。俺達だけで中をやるんだな?」

「ああ。昇降口はバリカンが押さえるから安心しろ」

「まあ、期待はしておこう」

「さあ進むぞ」


俺達は血便馬鹿山学園の校舎に入る。クララが言ったように敵は二階と三階に居るのだろう。普通なら入り口を固めると思いきや。これは罠だ。それは鈴木も分かってるだろう。この不気味な空気。高町の目的は鈴木を消すつもりか? 妹を拉致したんだから、敵の狙いは鈴木で間違いないだろう。それを真っ正面から行く。鈴木の度胸を買おう。


「クララ、一階にどれだけ敵が居るの?」

「三人じゃ。おや? 二階の敵兵が一階に下りて来ておる。どこかに監視カメラでも設置されておるのじゃろう」

「手間が省ける」

「二人とも、着いてこい。囲まれたら俺が正面を殺る。キャプテン・ジャパンは裏を。メフィストは自由に殺ってくれ」

「分かった」

「任せるのじゃ」


ザザザ! 正面に5人、バックに5人。早速囲まれた。ここは廊下だ。雑魚ども構ってちゃん乙です。


「ヒャッハー! ここは通さねえぜ!」


ザ・雑魚が現れた。軽くのしてやるか。バキッ! ドカッ! ガン! ゴキッ! ズドン! 俺と鈴木は同時に敵をボコってブッ倒した。鈴木は一匹に手加減したのだろう。意識があるようだ。


「妹は無事だろうな?」

「さ、さあ」

「高町の命令か?」

「し、知らねえよ」

「なら死ね」


鈴木が拳でトドメを刺そうとすると。


「分かった分かった! 言うよ言うよ! 高町さんの命令で、お前の妹を拉致したんだ」

「お前は見逃してやろう」

「ホントか?」


バキッ! 鈴木はソイツの顔面をぶん殴ってのした。見逃してない。鈴木の奴、キレてるな? まあ、当たり前だろうけど。鈴木と高町の間には因縁があるのだろう。


「さあ二階に上がるぞ」


俺達は階段を上がる。踊り場まで来ると、20匹くらいの敵が待ち構えてた。下に居る俺達のが不利か。察したのか、クララが詠唱に入った。そして、両腕を敵に向かって突き出す。バリーン! と辺りが一瞬で凍り付いた。冷却魔法か。敵20匹は下半身が床と固着して動けないでいる。


「「「動けねえ! 動けねえ!」」」


「クララ、ナイス」

「よくやった。流石は大魔法使い」

「えへへ」


俺達は二階まで上がった。床がツルツル滑る。転けないように気を付けないと。寒い、体感温度はマイナス20度ってところか。


「何でいきなり凍るんだよ!?」

「足の感覚がねえ!」


クララが凍らせた敵の横で止まった。


「絶対零度、マイナス273.15度の氷でお前らは凍てついておる。足の感覚がなくなってるのは凍傷になっておるからじゃ。か弱き乙女を拉致した罰じゃ、5分もすれば、お前達の足は切断せねばならん。存分に苦しめ」


「「「ウワーーー! ウワーーー!」」」


凍っちゃった奴らが発狂してるが、俺達は先に進む。5、5、20匹を戦闘不能にしたから残り20匹程度か。クララっていろんな魔法が使えるんだな。電撃とビーム、サーマルゴーグル、冷却と。


「クララ、アイツらを本当に凍傷にするつもりか?」

「絶対零度というのはハッタリじゃ、実際は手加減して、マイナス100度くらいなのじゃ。しかし、辺り一面を凍らせてしまったからのう。滑るし、何より寒かろう? 後10秒ほどで魔法が解けるはずじゃ」

「そうか」

「奴らはしばらく歩けんじゃろう」


俺は後ろを見ながら歩く。すると、鈴木の背中に当たる。鈴木が立ち止まった。どうしたんだろう?


「キャプテン・ジャパン、メフィスト。ここを任せていいか?」


俺は前を見る。鈴木くらいデカイ奴が立っていた。


「中ボスなら任せろ」

「助かる」


鈴木は三階に上がった。さて、俺は中ボスを倒すか。


「中ボスとはご挨拶だな、瀬名レイ」

「ほう、俺を知ってるとはな。2対1で勝てると思うなよ?」

「女が頭数に入るのかよ。大した事ねえな、キャプテン・ジャパンさんよ」


スッ! コイツ、ノーモーションで10メートルの距離を一瞬で詰めた! バキッ! ハイキックか。ちゃんとガードしてやったぜ、肘でな。


「くっ! 脛がいてえ!」

「どうした、そんなもんか? 中ボスさんよ」

「俺は血便馬鹿山学園一軍のボスだ!」

「レイ! この男はヒュムじゃ!」

「何!?」

「なぜ分かった。女、お前何者だ!」

「我を知らんのか?」

「知らねえな! 二軍のボス、ヤヨイもヒュムだ。ヤヨイから聞いたんだな?」


ズキッ! ズキッ! 頭がいてえ。不意に来るとダメージ10倍だ。平衡感覚が崩れる。また片膝を突いちまった。こりゃヤバい状況だ。


「レイ! 危ない!」


バキッ! 中ボスの拳が頬に入った。くそー、このコンディション不良にならなければ、こんな雑魚に。今まで闘ったヒュムの中で最弱だ。


「その首もらったー!」


ミドルキックが飛んでくる。避けれねえな。


ザンッ! ゴロ…………。何が起きた!? 中ボスの脚が切断されて床に転がった。クララがダガーを持っている。それで斬り落としたのか? どこから出したんだよ、そんな物騒な物。四次元ポケットでもあるのか? でも助かった。


「あ、脚がー!」

「全一教会の支部に行けば、回復魔法を使える者もおるじゃろう」

「貴様、いったい誰だ!?」

「我は大魔法使いクララ・メフィスト。覚えておけ」

「メフィストがこんなガキだとは!」


俺は何とか立ち上がる。多分、大丈夫だろうけど、鈴木を追わなくては。俺とクララは三階に行く。まだ頭がいてえ。フラフラしてしまう。


「クララ、そのダガーは?」

「これか? 咄嗟にアイテムボックスから取り出した物じゃ」

「アイテムボックス? 四次元ポケットか?」

「我くらいの魔法使いなら誰でも使える。異空間と繋がっており、プール一杯分のスペースがあり、そこから道具を自由に出し入れ出来るのじゃ」

「便利だな」

「それより、突然、闘えなくなったり、どうしたのじゃ?」

「ヤ、から始まる名前を考えたり言われたりすると酷い頭痛が走るんだ」

「二軍のボスとやらと闘った時もそうだったな。いつか克服せねばならんぞ」

「ああ。鈴木が心配だ、行こう」

「うむ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アイム・ナンバーワン ルク穴禁 @R32skyline-GTR

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ