エピローグ
第10話 その後の話
その後、僕たちは堀田さんにこっぴどく叱られた。
佐伯ゆう子のところには、宍戸の妻が現れたが、女性警官が取り押さえたということだった。
ダイコー印刷の連続不審死は、結局宍戸夫婦がすべて仕組んだことだったらしい。パワハラ、セクハラと好き放題にやってきて、それに歯向かった社員を自殺に追い込んだり、事故死に見せかけて殺害していたらしい。相当なサイコパスだった。
ダイコー印刷は社長不在になり、どうやら他にも粉飾決算などの余罪が見つかり、結局会社を清算する形で幕を閉じた。
その後、佐伯ゆう子さんはダイコー印刷を無事に退職し、恋人とも清算することができた。ダイコー印刷の事件が明るみにたことで後日、アジサイ園の園長先生がゆう子さんのところに連絡をしてきて、今はアジサイ園で住み込みで働いているということだった。
そして、肝心の佐伯ゆう子さんのお姉さん『近藤奈央』は、その後しばらくしてゆう子さんの人格と統合され、出現することがなくなったとのことだった。この後、ゆう子さんの記憶の中にお姉さんの記憶は埋もれていくのだろうな。
PRINCEのオーナーの知り合いで、親身になってくれるカウンセラーがいるのだが、その人を紹介してもらいゆう子さんの解離性同一性障害もいい方向に向かっているようだ。
僕は今日も紫音とBarKINGにいる。
今日はちびちびと水割りを飲んでいる。
「ゆう子さん、元気になってたよ。この前アジサイ園の園長にに呼ばれてに行ったら、幸せそうな笑顔で迎えてくれたよ。」
紫音が、僕に報告してくれた。
「そう。よかったよね。いい思い出があるわけじゃないだろうけど、彼女を守ってくれる人がいることが良かったんじゃないかな。」
僕は園に戻ることは少し心配だった。あまり思い出したくない思い出ばかりがありそうだし。でも園長先生がいれば、心強くいられるのかもしれない。
「そういえば、アジサイ園から帰るときに、知ってる顔を見た気がするんだけど。あれ、誰だったんだろう?スーツを着てパリッとした感じで。
40歳ぐらいのイケメンだったな。」
紫音が思い出したように言った。
「その人がどうしたの?」
「いや、しばらくゆう子さんの事をじっと見ていたんだ。すごく優しそうな目で。だから気になって。園長先生とも知り合いだったようなんだけど。でも俺、あの人知ってる気がするんだよな。」
「ふーん。誰なんだろうね。」
ゆう子さんが幸せそうでよかった。もしかしたら、園に来ていたその男ってのはゆう子さんの父親なのかもしれないな。とか思いながら僕はその日紫音と二人でたわいもない話で夜を明かした。
ただ一つ、どうしてもわからないことがある。それは、『近藤奈央』が写った写真だ。あの後、ゆう子さんに写真を返そうと見返してみたらその近藤奈央が消えていなくなっていたのだ。
まるでそこには佐伯ゆう子さんしか写ってなかったかのように。紫音も僕もその写真を見て、背筋が寒くなった。
いったい、あれはどういう事なんだろう。いまだにわからない。
私の中の私ーThe Detective KP KPenguin5 (筆吟🐧) @Aipenguin
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