ドア元

今一人暮らしをしているアパートでドアの影に存在を感じるようになった。

気配というあやふやなものではなく、何かをドアと壁の間で挟む触覚としてだ。

家に入ってドアを開けると必ず挟む。

不動産屋から何かのいわくを聞いた事は無いが、よく考えると駅に近くそこそこの物件にも関わらずこの部屋の家賃は比較的安い。


ある時霊感のある友人を呼んで見てもらう事にした。

私:「何か居る?」

友人は部屋を見回して言った。

友人:「居る。凄まじい怨念を持った霊が住んでる」

なんという事だ。やはりこの部屋には悪霊が住んでいるらしい。

友人:「ここに住む人に並々ならぬ殺意を持っていて包丁を構えてる」

なんと恐ろしい。幽霊の上に刃物まで持っているのだ。

友人:「それで誰かがこの部屋に入ってくるのを今か今かと待っている。入るや否やその包丁で突き刺そうと」


そう言って友人はドアを指さした。


友人:「そのドアの陰で」


今もドアと壁で何者かを挟み続けている。

害は無い。


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てきとうホラー短編 ヌャリル @nuxyariru

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