第45匙 ベジタリアンとビーガン:WHIZ CAFE(E10)

 金沢発祥のホテル・チェーン『アパホテル』の公式サイトによれば、二〇二四年七月十一日現在、日本全国に、この系列に属するホテルは〈八〇五〉あるそうだ。そのうち、東京都内に絞ってみると、店舗数は〈九十五〉に上り、さらに、範囲を東京の中心とも言える次の地区に絞ってみると、「東京駅周辺(日本橋・神田・秋葉原・人形町)」に〈十六〉、「お茶の水・九段・飯田橋」に〈五〉、すなわち、合計〈二十一〉という数字が確認でき、つまり、全国のアパホテルの約一割が都内に在って、その都内の『アパホテル』のうち、約四分の一が千代田区とその周辺にある分けだ。


 その「アパホテル」には料理店が入っている所もあって、例えば、「No.269アパホテル〈飯田橋駅南〉」の一階には、金沢カレーの「アパ社長のカレー」が、「No.267アパホテル〈秋葉原駅電気街口〉」の一階には、札幌のスープカレーの「カレー食堂 心」といったカレー専門店が入っており、カレー店以外だと、「No.192アパホテル〈神田駅東〉」の一階と二階には、「WHIZ CAFE(ウィズ・カフェ)」が入っている。そして、この日、ランチ・タイムに書き手が訪れたのが、神田駅の東、岩本町に位置しているWHIZ CAFEで、たしかに、この店は、飯田橋や秋葉原のようなカレー専門店ではないものの、今回の〈スタンプラリー二〇二三〉に参加している。


 WHIZ CAFEは、モーニングもランチも営業しているらしいのだが、サイトに書かれていたカレー・メニューを確認してみると、カレー料理は、「ビーカンキーマサンド」、「サバカレーライス(ランチのみ)セット」、「ビーガンキーマライス(ランチのみ)セット 」とあり、サンドウィッチ以外のメニューを希望するのならば、ランチ・タイム、十一時半から十四時半(LO)の間に来るしかなく、こういった分けで、書き手は、この日も、昼時に岩本町を訪れた次第なのだ。


 かくして、WHIZ CAFEにて書き手に提示された選択肢は、「サバカレーライス」と「ビーガンキーマライス」の二つであった。


 サイトによると、「サバカレーは、ベジタリアンに大人気!」のメニューで、「ビーガンキーマカレー」は「動物性たんぱく質を使用せず植物性たんぱく質を主な材料として作ったカレー」であるらしい。

 とまれ、いずれのカレーを選ぶにせよ、この店のカレーは〈肉類〉を使用していないようだ。


 ところで、〈ベジタリアン〉と〈ビーガン〉、これらは、昨今、頻繁に耳にする言葉なのだが、その違いとは、いったいどういった点なのであろうか。


 〈ベジタリアン〉、こちらの方が、我々には馴染みがあるタームのように思われるが、ベジタリアンは、肉類や魚介類などの〈動物性〉食品を食べず、野菜、豆類、穀物などの〈植物性〉商品を中心とした食生活を送る人の事を指し、日本語では〈菜食主義者〉という訳語が当てられている。ここでポイントとなるのは、卵製品や乳製品の摂取に関しては、人それぞれという点だ。


 ところで、「サバカレーは、ベジタリアンに大人気!」ってサイトにあったけど、これってどうゆう事、と思う方もいらっしゃるかもしれない。

 実は、ベジタリアンは、〈ラクト・ベジタリアン〉、〈オポ・ベジタリアン〉、〈ラクト・オポ・ベジタリアン〉、〈ポーヨー・ベジタリアン〉、〈ペスコ・ベジタリアン〉、〈オリエンタル・ベジタリアン〉、〈セミ・ベジタリアン〉といったように、何を食べるかによって細分化されており、これらの中で、サバ、すなわち、魚介類を食べるのは、〈ポーヨー・ベジタリアン〉〈ペスコ・ベジタリアン〉〈セミ・ベジタリアン〉なのだ。つまり、この店のサバカレーは、厳密に言うと、ベジタリアンの中でも、〈ポーヨー〉〈ペスコ〉〈セミ〉向けという事になろう。


 これに対して、昨今、人の口に上がるようになった〈ビーガン〉とは、肉類や魚介類に加え、卵製品や乳製品、さらには、蜂蜜なども含め、ありとあらゆる〈動物性食品〉を一切口にしない食生活を送る人の事で、日本語では〈完全菜食主義者〉という訳語が当てられている。


 さらにいうと、ビーガンにも、果実や種子類、すなわち、フルーツしか食べない〈フルータリアン〉や、原則、加熱した物ではなく〈生〉の物を食べる〈ロー・ビ^-ガン〉もいるらし。だが、WHIZ CAFEのビーガン向け料理は、キーマ・カレーである以上、ここまで厳格なビーガン向けではないようだ。


 日本で、ベジタリアンやビーガンというと、健康志向や、動物愛護、あるいは、環境保護の点から、菜食主義や完全菜食主義を選択する場合が多いようだが、海外においては、例えば、インド人の八割以上が信仰しているヒンドゥー教では、豚や牛を食べる事がタブーだったりする。ちなみに、厳格なヒンドゥー教徒の場合、肉食全般を避け、牛や豚に加え、鶏、魚介、卵も食べないそうなので、この点において、厳格なヒンドゥー教徒とビーガンが口にするものは近いように思われる。

 とまれかくまれ、特に南アジアの場合、ベジタリアンやビーガンである事は、宗教上の理由に基づいている分けだ。


 おそらく、WHIZ CAFEに来店するベジタリアンやビーガンである日本人は、健康や動物愛護の観点から菜食主義を選択した者であろう。ここで、店のサイトを見てみると、この店のカレーは、元・オーナーシェフのデミトリー氏が作ったものだそうで、これは確証はないのだが、シュフが外国人である点を鑑みると、この店のベジタリアンやビーガン料理は、宗教的な理由が背景にあるように思える。


 つまり、同じ、(完全)菜食主義の料理を扱う場合、日本では、提供する店と料理を求める客の間で、その背景となる主義の選択理由にも、もしかしたら相違があるかもしれないな、と思う書き手であった。


 あっ、そうそう、ベジタリアンでもビーガンでもない書き手は、この日、「ビーガンキーマライス」の方を選択したのであった。

 

〈訪問データ〉

 WHIZ CAFE:秋葉原・岩本町エリア

 E10

 二〇二三年九月十三日(水)十三時

 ビーガンキーマライスセット:九五〇円(クレカ)

 ドリンク;自家製レモネード


〈参考資料〉 

 『公式ガイドブック』、ページ。

〈WEB〉二〇二四年七月三十日閲覧

 『アパホテル』

 「【3分解説】「ベジタリアン」とは?ビーガンとの違いをわかりやすく解説!」、『SPORTS』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カレイなる日々・二巡目(二〇二三) 隠井 迅 @kraijean

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ