第44匙 金か茶か、それが問題だ:金沢ミルカツカレーおちゃのみず(D09)
九月十二日の正午前、この日、書き手が〈昼〉カレーの店として選んだのは、JR御茶ノ水駅近くの建物の地下にある「金沢ミルカツカレーおちゃのみず」であった。
書き手の記憶が正しければ、二〇二二年に訪れたのは夕方だったのに、二〇二三年九月時点には、この店の営業時間が昼のみになっていたからである。
金沢ミルカツカレーおちゃのみずのメニューには、「プレーンカレー」もあるのだが、ここはトッピングがウリのカレー店で、エビフライ、ソーセージ、ゆで玉子、唐揚げ、ハンバーグなども注文できるのだが、「金沢ミルカツカレー」に来ている以上、書き手の選択は「ミルカツ」一択であった。
問題は〈ルー〉だ。
というのも、この店には「金沢カレー」と「お茶の水カレー」という二種のカレーが用意されているからで、店名に重きを置くのならば「金沢」、場所を重視するのならば「お茶の水」を選ぶべきであろう。
悩んだ末に、今回の書き手は「お茶の水ミルカツカレー」を注文した。
やがて、提供された注文品を見て、書き手には幾つかの気付きがあった。
入口のディスプレーは、金沢カレーのもので、銀色の楕円形の食器に、黒色が強い茶色のルー、山盛りのキャベツ、さらに、店内の表示では「金沢カレーはフォークで提供」となっていたのに、書き手の目の前に置かれているカレーは、全てが違っており、皿は白い円形、カレーは茶色、キャベツは無く、カトラリーは先割れスプーンであった。
察するに、客の中には、注文された品が「金沢カレー」なのか、「お茶の水カレー」なのかを、カレー・ルーの色や味だけで判断するのが難しい者もきっといるに相違ない。
そこで、いずれのカレーであるのかを明示する為に、店は、カレーとライスを載せている皿の種類、食べるために使うカトラリーの種類によっても、はっきりと違いを表わしているのであろう。
金沢カレーの特徴は、そのカレーや大量のキャベツのみに認められる分けではなく、食器にもあって、皿は銀色のステンレス製のもの、そして、カツを食べやすいように、スプーンではなくフォークが用意されている。
事実、書き手の後に入ってきた「金沢カレー」の注文客は、ステンレスの皿で提供されていた。
そんな様子を見ながら、ふと壁に目を向けた書き手は、とある衝撃的な事実を知ったのだった。
再確認になるが、実は、書き手が、この店「金沢ミルカツカレーおちゃのみず」を訪れたのは九月〈十二日〉の事だったのだが、店の中に貼ってあったポスターを見て、愕然とした気持ちになった。
そのポスターによれば、「毎月11日はミルカツカレーの日」で、通常〈七八〇〉円の中盛りカレーが〈五五〇〉円で提供される。
つまり、およそ三割引きなのだっ!
たしかに〈二三〇〉円のディスカウントとは言えども、わずか一日違いで、割引の恩恵を受ける事ができなかったのは、実に口惜しい。
次回の〈スタンプラリー二〇二四〉で、この店を再訪する事があったら、〈十一〉日に訪店すべくスケジュールを調整しよう、と決意した書き手であった。
〈追記〉
後日、お店の『X』の「プロフィール」欄によって、「金沢ミルカツカレーおちゃのみず」は、二〇二四年四月二十六日をもって閉店した事を知った。
次回(二〇二四年)のカレー・スタンプ・ラリーの際には、お安くカレーが食べられる、サービス・デイである〈十一日〉の「ミルカツカレーの日」に訪店せん、と考えていた書き手の願いは、結局、成就できないまま、もうすぐ、二〇二四年のスタンプラリーの開始を迎えつつある。
〈訪問データ〉
金沢ミルカツカレーおちゃのみず:お茶の水
D09
二〇二三年九月十二日(月)十一時十五分
お茶の水 ミルカツカレー(中):七八〇円(現金)
〈参考資料〉
『公式ガイドブック』、五十四ページ。
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