生きるために生きた逆境と、死ぬために生きた順境と

人生の逆境を筆舌に尽くし難い無念さとして赤裸々なストーリーで展開される本作。
その簡明直截な表現がナイフのように心の肉をえぐる様は、主人公が受けてきた数々の逆境により育まれた狂気に他ならない。
そんな生々しくも鋭利な感情が随所で散りばめられているため、隙のないスリリングな構成となっている。

そして一日が、毎週が、毎月が、次第に狂っていく。

厭世的かつ虚無的な心境を生と死とを隣り合わせた筆致で織り成す蓋然的かつ狂人的ホラー。
その洗練された戦慄の先にある真の自由を求めたくなる。

そう、破滅に向かって。