一塁側ベンチから見る風景

pico

             夏





 汗と、土のにおい。


 湿気と、熱気。


 遠いようで近い、ブラスバンドのコンバットマーチ。

 応援席の青。


 ガラガラの声。相手投手の攻め球、球威について。


 監督の表情は、見えない。


 スピーカーから聞こえる、仲間の名前。


 ネクストバッターズサークルの背中。


 ランナーコーチの尻ポケットの、コールドスプレー。


 整然と並んだヘルメット。


 千羽の折り鶴……が、いくつか。


 土にまみれたバッティンググローブ。


 壁の向こうで聞こえる、ブルペン捕手のよく通る声。


 Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの並んだ赤いスコアブック。





 喉が擦り切れるほどに叫んでも、願いが届くとはかぎらない。

 帽子のつばに書き込んだ祈りも、叶うのは、たった一校だけ。


 それでも、信じる。一日も長い、夏を。

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一塁側ベンチから見る風景 pico @kajupico

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