婚約破棄から始まる異世界転移

琴葉 刹那

婚約破棄から始まる異世界転移

「ソフィア!お前との婚約を破棄する!」

 王立学園。王命によって創られた、王侯貴族が学ぶための場所。

 そこで年に一度行われる、豪奢の粋を尽くされた卒業パーティー。その会場で彼女——ソフィア・ウィリセウスは溜息をいた。

「お前の悪逆非道振りは知っているぞ!」

 そう言ってソフィアの婚約者——アムステルダム王国王太子、フリード・アムステルダムは、ソフィアが犯したらしい、、、罪を列挙していく。

 ソレをソフィアは無言で聴き、他の者たちはただ彼ら、、に注目していた。

 事実を知る善良な生徒たちは、ソフィアに哀れみを、フリードたち、、に軽蔑の視線を送る。

 しかし、いったい誰が予想できようか。

 先ほどの溜息に、失望、諦念、そして——歓喜が含まれていたことに。

「相手の方が爵位が下だからと横暴に振る舞うなど、許されることではない!」

 当然、彼は気付かない。

 雰囲気に酔っているから……ではなく、そもそも顧みたことがないから。

 己の身も、婚約者も。

 だから——

(だから、引っ掛かる、、、、、のよねぇ)

 フリードは大いに尊大な性格である。

 そこに至った所以ゆえんは、フリードが、なまじ才だけ、、、はあったから。

 そもそもフリードの父、現アムステルダム王オーウェルは、正嫡ではない。

 立場としては第二王子、いや王弟であった。

 ところが十四年前、帝国との戦争で先王ルドルフは戦死。その結果転がり込んできた王位であった。

 しかしオーウェルは凡庸な人物。だからこそ集団は、賢王と呼ばれたルドルフに並ぶ、優秀な次代を求めた。

 そして生まれたのがフリードこいつである。

 王家の血が濃いのか、フリードはとても優秀だった。

 それ故周囲は持て囃した。

 そしてまた、フリードも負けを知らなかった、、、

 少なくとも、同年代の者に、遅れを取ったことはなかった、、、、

 それがますます、フリードの増長する原因となってしまった。父親オーウェルは嘸かし、頭の痛いことだろう。

「しかも貴様は、俺の〝最愛〟を傷付けた!!」

 ソフィアが人知れずオーウェルの心労を想っていると、無視していると思われたのか、フリードが青筋を立てていきり立った。

 自分に酔ったのだろう。いつの間にやら『お前』は『貴様』に変わり、口調は力強く過激になっていた。

 そんな彼に、ソフィアは白い視線を向ける。口の中では小さく『〝最愛〟、ねぇ』と言葉を転がした。

「さあ!言ってくれジル!この魔女にやられたことを!」

 そう促されて出てきたのは、王子の側近候補取り巻きたちに囲われた、一人の女子生徒だった。

 身に付けているドレスの色は紫。色として移しにくく、古くから貴ばれてきた色。

 ……この時点でオーシャン・ブルーのドレスを纏っただけの、ウィリセウス公爵令嬢であるソフィアの衣装を上回るだろう。

 他にも、ダイヤモンドや真珠といった、宝石としては最高級のものを身に付け、少女はフリードに並び立った。

「……私はっ」

 そこで、言葉が止まる。

 次いで、何かに耐えるような表情。

 十秒ほど沈黙すると、やがて、意を決したかのように語り出した。

「私は、ソフィア様に制服を破られたり、教科書を隠されたりしました。……他にも、話しかけると無視されるなど、陰湿ないじめを受けましたっ……!」

 お願い。信じて。

 そう言わんばかりに、目元をうるうるとさせ、胸の前で懇願するかのように両の手を組む少女。

 それを見て痛まし気なフリード王子その他取り巻き

 対する周りの目は一色だ。

 嫌悪、嘲笑、不快。負の感情の渦巻く視線。

 この卒業パーティーには、ソフィアたち卒業生の他にも、下級生、省庁の役人、各貴族家の者たちが参加したりする。

 そんな彼らは至って常識人であり、生徒たちに関しては、バカ王子たちが一人の女子生徒に鼻の下を伸ばすところを見ている。

 学園外の人間についてはもう卒業し、|社交界デビューも済ました、歴とした大人だ。学園は小さな国のようなもので、広範な生徒自治があり、極めて閉鎖的。しかし彼らは政治や貴族社会で揉まれた者たち。生徒たちの様子から、真偽を嗅ぎ分けていた。

「貴様がたとえ公爵令嬢であろうとも、許されることではない!」

 そしてやはり、彼らは気付かない。

 ソレに気付けるのなら、こんな馬鹿げたこと、するはずがないからだ。

「しかしジルの慈悲により、今!この場で!これまでの行いを悔い改め、真摯に懺悔謝罪すれば、命だけは助けてやろうっ……!」

 馬鹿な。たとえ本当だったとしても、王太子程度、、が法を捻じ曲げることなど出来ないし、公爵令嬢の命を奪るなど、できるはずがない。

 そう、皆が思ったときだった。

「は、はは」

 笑い声が、聴こえた。

 似つかわしくない、嗤い、、声が。

「ははははははははははははハハハハハハッ!!!」

 際限知らずとばかりに響き広がっていく声に、頭がショートする。

 普通であれば声の主を探さなくてはならないのだろうが、その必要はなかった、、、、、、、、、

 なぜなら、とても大きな声であったし、ここにる皆が、何らかの形で、、、、、、聴いたことがあったから。

 それに何より。

彼女、、は、この場で最も注目されている人物だったから。

「はー、はー、……お腹痛い」

 ウィリセウス公爵家第一公女、ソフィア・ウィリセウス。

 剣、魔法、マナー、政治、外交。

 全てを一流以上に修めた〝完璧〟と名高い——先程、王太子に婚約破棄を宣言されてからずっと黙っていた令嬢、その人であった。

 歓喜に喉を震わせ、ひとしきり笑った少女は、度が過ぎたのか、絶え絶えな息を整えようとしている。

 しかし時々「くひっ」と漏らしてしまい、あまり成功していないようだ。

 初めて見る彼女の姿に、聴衆たちは呆然とする。

 しかしそれも束の間と。

 十を数えるほどの時間を要して、漸く呼吸を落ち着かせると、ソフィアは言った。

「あ〜、……殿下?どうせ金輪際、、、会わないと思うので、一つ言っておきますね」

 言葉を発すると同時に、描かれる魔法陣。その色は、無属性を表す、白。

 ——どうやら、あの神様は、|よく

わかっている《、、、、、、、、》らしい。

 自らの足元で形を成すソレを感じて、ソフィアは心の底から、思いっ切り口の端を吊り上げた。

「——私、ずっと貴方が嫌いでした」

 最後に一言、爆弾を添えて。

 ソフィアはほろい酩酊感にいざなわれた。

◆◇◆◇

「——お前はなんということをしてくれたのだっ……!」

 歴代の王が使う、国王の為の私室。

 そこで現アムステルダム王国国王、オーウェル・アムステルダムは怒髪天を突いた。

 オーウェルが見たのは最後の一幕。

 ソフィアの告白本心を聴いて、彼女が白銀に包まれた、この一幕のみ。

 しかし、それでもオーウェルは知っていた。

 今回の出来事、それはフリードに原因があることを。

「お前はあの婚約の意味を理解しておらぬのかっ!?」

「もちろん理解しておりますよ」

 フリードは涼しげな顔をして答える。

「しかし父上。私はあのような愚物、、に、軍権を預けるべきではないと思いますがね」

 慇懃無礼。

 明らかにこちらを見下すフリードに、オーウェルは怒号を吐きそうになったが、すんでの所で押し留める。

 もっと気になる所があったからだ。

「愚物、だと?」

 眉をぴくりと動かし問いかけるオーウェルに、何を当たり前のことをと、フリードが呆れたように告げる。

「だってそうでしょう?たかだか二百年程度の歴史しかない、帝国、、とかいう蛮族どもを、未だに下せていないのですから」

 その言葉に、オーウェルは唖然とした。

 確かに帝国の歴史は二百年ほど。

 対するアムステルダム王国はその三倍、約六百年だ。

 国の長さは、その国が長い年月を生き残っている強い国であることの証明である為、国政に携わらない平民がその認識であるのは、まだ、理解わかる。

 しかし、一国の王太子がコレとはどういうことか。

 歴史はそうでも、帝国の国土は三倍、国力は五倍以上。

 そんな化物バケモノを抑え込んでいる傑物。

 それが軍務卿、クロード・ウィリセウス公爵であった。

「……其方の言に従えば、私も、我が兄も、歴代の王も、みな愚物ということになるな」

「当然で、ッ——!?」

「皮肉を言っておるのが分からんのか!?この、バカモノがァァあ!!」

 当然でしょう。

 そう続いたであろう言葉を拳で遮り、オーウェルは怒鳴り散らす。

 オーウェルの兄である前国王は、賢王と名高い人物であった。

 帝国征伐にて戦死してしまったが、十数年経った今でも、民の尊敬を集めている。

 他にも聖王や名君、果てには覇王と呼ばれた者までいる。

 そんな父祖に息子がまさっているとは、オーウェルにはとても思えなかった。

(勉学が優秀でもこれでは)

 とても公務など任せられない。

 そんなことを思いながら、オーウェルは命ずる。

「フリード・アムステルダム。王太子の任を解き、謹慎を命じる」

「は、」

「近衛よ!この愚か者を連れて行け!」

『はっ!』

 ぱっきりとした声と共に、鎧の胸骨を叩く音が辺りに響く。

 次いで控えていた騎士のうち二人が、フリードを引っ張った。

「っ、はっ、放せっ!父上!父上ええええぇぇぇえええ!」

 パタン。

 扉が閉まり、数瞬瞑目すると、オーウェルは大袈裟にため息をく。

「……彼奴あやつは……」

 思わず口に出してしまっていた。

 その事に暫くして気が付くと、オーウェルは疲れたように破顔した。

 いつもより口や顔に出易い。

 それ程までに、オーウェルは弱っていた。

「ふぅ」

 オーウェルは椅子に座り直し、ただ天井を見つめ出した。

 その〝心ここに在らず〟といった様子を見て、近衛騎士たちは表情を歪めた。

 しかし声を掛けたりはしない。この時間が主にとって大切だと知っているからだ。

 彼らに共感はできても肩代わりはできない。

 元来彼らにできるのは、ただ主君を護ることのみ。

 ゆえに、どうか誰も邪魔をしませんようにと。

 祈りを胸に抱きながら、アイコンタクトを交え、配置につくのだった。

 周囲で近衛が責務を果たそうとする一方。

 オーウェルは夢を見ていた。

 いや、正確には夢ではない。

 しかしオーウェルにとって、コレは紛う事なく夢であった。

 最初に浮かんだのは、自分の命で連れていかれる息子フリードの表情。

 そこに表れていたのは、謝罪や後悔の念ではない。

 憤怒だ。

 父が自分を信じてくれなかった怒り。王族を護るはずの近衛が、王太子たる自分に剣を向けたという屈辱の怒り。

 そして何より。

 凡百の人間が、優れた者自分に逆らうという怒り。

 オーウェルはその事に恐怖し、そして後悔した。

 人ではなく怪物となっていた息子に恐怖を示し。

 そうなる前に教え諭し、導かなかったことを悔いる。

 その自責の念こそが、オーウェルをここまで弱らせていた。

 そしてぼぅっと、随分遠くまで来たなぁと思う。

 次々に浮かぶ今までのこと。

 実った政策。兄の死。幼少期。学園時代。

 まるで走馬灯のように、規則性もなく、流れ浮かんでは消えてゆく。

 かつて艶のあった髪はしなれ、白が混じるようになった。

(……ああ。ああ、そうだ。私はあの日——)

 自らの半生を振り返った後に浮かんだのは、十年ほど前のこと。

 王位を継いで四年が経ち、落ち着いてきたときのことだった。

(——未来を見たのだ)

◆◇◆◇

 ガタンゴトン、パカラッパカラッ、ガタンゴトン、パカラッパカラッ。

 大通りを過ぎる車の音と、馬の蹄が地面を叩く音が、綺麗な四拍子を奏でる。時折混じるヒヒィーンという馬のいななきは、さながら繰り返しに飽きて混ざる、ささやかなアレンジのようだ。

 乗っているのはお揃いの蒼銀色の髪を持つ、若々しい男と少女だった。

『ソフィア。初めての王都はどうだい?』

 すると少女は、窓から手を離し、こう言った。

『領都より色んなものがあってすごいです!お父さま』

 一見すると歳の離れた兄妹に見えるこの二人は、なんと親子だったらしい。

 そんな愛娘の様子に、クロードは『それはよかった』と首肯すると、優しく言った。

『ただ、もう少しで着くから、大人しくしていようか』

『……はい』

 するとすぐにソフィアは〝公爵令嬢〟を演じ始める。しかし沈んだ声には、隠し切れない嫌さ、、が滲み出ていた。

 それにクロードは何も言わない。言ってどうにかなるものではないと知っているし、クロード自身、今回の事に乗り気ではないからだ。

 ただ、クロードも貴族。

 自分より上の者に〝国の為〟と頭を下げられては、断る事はできなかった。

 キキッ。

 ゆっくりと減速した馬車が止まる。

『閣下。御到着いたしました』

『……それじゃ、レディ?』

 騎士によって開けられた扉から先に降りると、クロードはソフィアに手を差し出した。

『はい』

 その手を取って、ソフィアもまた馬車を降りる。

 跳び降りるなんて事はしない。音を立てないように降りるのが、淑女の嗜みだ。

 ソフィアたちが来たのは、王都内にある大教会だ。アムステルダム王国の国神を祀っている。

 中に入り、ソフィアが大理石を眺めていると、もう一対親子が現れた。

『待たせたな、クロード』

『……忘れていてくださると有り難かったんですがね。陛下』

 オーウェルは苦笑した。

『そう言うな。兄亡き後、未だ王国は盤石とは言い難い。帝国を止めている英雄との婚約は大切だ』

『……理解わかっています。……それで、そちらの方が?』

 理解はしている。しかし感情的な問題のため、これ以上言っても仕方がないと、クロードは話を進めた。

『ああ、長子のフリードだ。フリード、挨拶を』

『っ、フリード・アムステルダムだ』

 なぜ目下の者に先に挨拶せねばならんのだ。

 ソフィアにはそんな幻聴が聴こえた気がした。

 しかめた顔から察するに、実際、そんなことを思っているのだろう。この時点でソフィアの中で、フリードの心象は落ちていく。

 だが、これまでの教育故か。そんなことはおくびにも出さず、見せつけるようにカーテシーをした。

『っ、』

『ソフィア・ウィリセウスです。お見知り置きを。国王陛下、王子殿下』

 しかし子供は多感で鋭い者である。

 大人たちは気付かなかったが、フリードはその声と眼に、嘲りと嫌悪が含まれていることに気付いていた。

『ほーー、……随分優秀なようだな、お前の娘は』

『お褒めに預かり恐悦至極』

 続く大人たちの会話に、フリードの中で完全にソフィアはなヤツになった。

『それじゃあ早速儀式を——』

『——陛下っ!』

 バンっ、と扉がいきり立つ。

 入ってきたのは〝疾駆け〟の腕章を付けた騎士であった。

『帝国が動き始めました!』

 降って湧いた報に、オーウェルは下唇を噛む。

『っ、クロードが前線にいないことを気取られたか……!会議を開く!軍務卿クロード、来てもらうぞ……!』

『御意』

 余裕なさげに、大人たちは去っていく。残されたのは神官たち、そして二人の子どもだった。

『……』

『お、お待ちください!』

 無言で歩き出したソフィアを、神官が呼び止める。

 しかしソフィアは気にせず歩を進めた。

『おい』

 フリードが見かねたように一歩踏み出す。

 流石に上位者を無視するのはまずいと思ったのか、漸くソフィアの足が止まった。

『はい?』

『何をしている?』

 ソフィアはこてんと首を傾げた。

大教会此処に来た目的を果たそうと』

 一言そう告げると、もう他に言うことはないとばかりに、ソフィアは再び歩き出した。

『チッ!』

 そんなソフィアの態度に舌打ちすると、フリードは思いっ切り、ソフィアの腕を引っ張った。

『っ』

 痛みにソフィアの顔が歪む。服に阻まれて見えないが、掴まれた箇所はきっと痣になっているだろう。

 それを見て、やっと優位に立ったとばかりに、フリードは溜飲を下げた。

『父上たちが戻ってからにしろ』

 これで大人しくなるだろう。

 そんなフリードの予想は、真っ二つに断ち切られる。

『なぜ?』

 その言葉に、フリードは耳を疑った。対するソフィアも、少し困惑していた。

 奇しくも二人は、このとき『意味不明』と同じことを思った。

『だってどのみち必要なのは、私たちだけ、、、、、でしょう?』

 ソフィアが、間違っているのかと、少し躊躇いがちに言う。

 アムステルダム王国はその昔、初代王と王妃、そして初代王に力を貸した土地神——現在は国神と呼ばれる超異存在によって建国されたと伝わる。

 そして建国以来、次代の王と妃が婚約の際、二人だけ、、、、で国神に御目通りを願う。これが婚約のための唯一の儀式となっている。

『……っ』

 そんなことを、フリードだって分かっている。

 しかし初めて来た場所、知らない大人たち。それがフリードを不安にしていた。

 フリードが少し身を縮めていることに気付いたソフィアは、嫌らしくニヤァっと嗤った。

『……もしかして……怖いんですかぁ?』

 異質なモノに対する怖気とともに、ゾワァと頭に血が昇る。

『第一王子ともあろうお方が、怖がるん——』

『そんなワケあるか!俺は第一王子だぞ!!』

 売り言葉に買い言葉。

 神官たちの宥める声を拾わず、フリードはソフィアを奥へと引っ張っていく。

 頭を抱える神官たちを横目に、神前の扉が開く瞬間、ソフィアはこれ以上ない程の笑顔を浮かべた。

 その後、戻ってきたオーウェルたちと神官が、出てきたソフィアの持つ一枚の紙に驚き、目を丸くさせていたのは、ソフィアにとって愉快な思い出である。

◆◇◆◇

「……ふぅ」

 不当な破棄ありし場合、ソフィア・ウィリセウスの願いを叶える。

 かつて自身の目を剥いた文言を思い出しながら、オーウェルは息をく。

 長く、重い息だった。

 当時は驚くとともに、これほど優秀なら安泰だと思ったものだが、まさかこんなことになるとは……。

 寂しいその余韻に浸り、余程暫くして、オーウェルは独り語り出した。

「……だが、これで良かったのやもしれん」

 主の胸中を押し測れず、騎士たちは内心疑問符を浮かべる。

 そんな周りのことなぞ露知らず、オーウェルは顔を上げた。

 目線の先には絵画があった。

 歴代の国王と王妃の肖像画。

 その一枚、オーシャン、、、、、・ブルー、、、、のドレスを、、、、、身に纏った、、、、、蒼銀髪の女性、、、、、、の姿が、そこには在った。

◆◇◆◇

「う〜〜ん」

 遥かに広がる大草原。

 眼下に収めたソレに充足感を感じながら、は大きく伸びをした。

(……随分懐かしい夢を見たなぁ)

 きっと、昨日遂に果たされたからだろう。

 そんなことを思い、つい口元がニヤけてしまう。

「……ははっ」

 次いで、土や草に塗れたドレス、、、を見て、昨日までとの格差ギャップに小さく咲う。

 そして未知ゆえ心が躍る。

 ——この先、どんなことが待ち受けているのかな。

 躍動感に身を委ねながら、ソフィアは走り出した。



 

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