「この出来損ないが」と勘当されたニート俺。実は宝くじで12億当ててました。あーあ、欲しいものなんでも買ってあげようと思ったのになあ。ん?戻ってこいだって?もう遅い!!
@orz33
10億当たった
『1,000,002,346円』
スマホ画面のデジタル通帳には今まで見たこともない額が表示されていた。
「は、はは……!!」
思わず笑いがこみ上げてくる。
宝くじなんて当たらない。買う奴はバカだ。
そうやって宝くじを買う奴をバカにしていた時期が俺にもあった。
しかし、当たったのだ。
1等、キャリーオーバー、10億円。
本当に当たったのか不安だったが、俺の口座には確かに10億円が入っている。
「もう一生働かなくていいんだ!」
サラリーマンの平均生涯年収は2億円だと聞いたことがある。その5倍の金額が手に入ったのだから、このままニートを続けていたとしても遊び放題だろう。
何に使おうかな。
そうだ、家族で山分けしよう。
母さん、父さん、俺の3人で分けても3億円以上残る。
少しもったいない気もするが、今まで迷惑をかけてきたんだ。これくらいはするべきだろう。
両親は仕事中だ。夕飯のときにそのことを伝えよう。
それまではゲームでもするか。
〜
ガチャリ。
やっときた。
結局ゲームには全く集中できなかった。興奮しすぎたせいだろう。
早く両親に伝えたい。
2人が喜ぶ姿が見たい。
「お前、今日も一日中ゲームしてたのか?」
しかし、部屋に入ってきたのは不機嫌そうな父だった。
「あ、父さん!今日夕飯のとき伝えたいことが──」
「ゲームしてたのかって聞いてるんだ」
「あ、うん、まあそうだけど」
「ふざけるなッ!!」
「ひっ」
どういうことだ。今の父さんは俺が見たきて中で一番怒っている気がする。
「俺たちが頑張ってるのにぬくぬくとお前という奴は……!!」
「違うんだ、父さん!今日から俺だけじゃなくて、父さんたちも働かなくていいんだ!!これ、見て、宝くじ──」
「嘘をつくなッ!!」
「いたっ」
見せようとしたスマホがパン、とはたき落とされた。
ダメだ完全に信じていない。
「母さんと相談したんだ。お前をいつまでも甘やかしちゃいけないってな」
父はそう言いながらぴら、と1万円札を差し出した。
「これは……?」
「手切れ金だ」
い、いちまん?
1万円で俺を勘当しようとしてるのか?
うちが貧乏なのは知ってたけど1万円で引きこもり息子を放り出すのは酷すぎないか。
「え、これだけ?」
「これだけとはなんだッ!!」
何回怒鳴るんだこいつ。さすがにもう驚かないぞ。
「この金を稼ぐのにどれだけ苦労するか、お前は知らんだろう。分かったら、これを受け取ってさっさとどこかへ行けッ!!」
「はぁ……いいよ」
俺は財布と、落とされたスマホを拾って1万円札を受け取る。
「この出来損ないが」
ビリビリッ!!
そして、破り捨てた。
「はっ!?お、お前、なにしてるんだ!!」
「いらないよ、こんなはした金」
そう言いながら、スマホに映し出されたデジタル通帳を父に見せつける。
「な、なんなんだ……この額は……!!」
そこには『1,000,002,346円』と表示されている。
「俺、宝くじで10億当てたんだ。本当は家族みんなで山分けしようと思ってたんだけど、いらないなら俺が全部もらうね。それじゃ」
「あ、ちょ、待て!!」
必死に制止しようとする父を無視して俺は家を出た。
〜
「これからどうしようかなあ」
家を出たはいいものの、俺はなにをすれば良いか分からなかった。
だが、どうにでもなる。
なにせ10億円もあるんだからな。
ブブブ。
そんなことを思っているとポケットのスマホが鳴った。父からのメッセージだ。
『すまない。俺が浅はかだった。戻ってきてくれ』
ぷっ。
金のことになるとプライドの高い父でもこんなに惨めなことするんだなと思った。
そして、俺の返信は決まっている。
『おせえんだよばーーーか!!!』
「この出来損ないが」と勘当されたニート俺。実は宝くじで12億当ててました。あーあ、欲しいものなんでも買ってあげようと思ったのになあ。ん?戻ってこいだって?もう遅い!! @orz33
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