第2話 「フラグ」

 次の日の学校。


「今日も学校終わったらいつものとこ?」


 とノゾミが問う。


「うん」

「わかった」


 何度したかわからないやりとりをする。

 そうして雑談しているうちにホームルームが始まる。


「えー、今日は文理選択のアンケートを配ります」


 高校1年生の冬なので文理選択の決定が迫っていた。

 ソラは文理選択に迷っていた。

 本が好きなので文系で本の出版業界を目指したり、理系でいつも見ていた星空をもっと近くで見るために宇宙飛行士になってみたいとも思っていた。


(どうしようかな……)


「今月中に提出してくださいね。ホームルームはこれで終わりです。」

「さようなら」

「さようならー」「さようなら〜」「さいならー」「さようなら」……。


 ソラは帰る支度したくをして、ノゾミを迎えに行く。


「帰ろうか」

「うん」


「そういえば、ソラは文理選択どっちにするの?」


 とノゾミが聞いてくる。


「自分は迷い中。ノゾミは?」

「私はねー、もう決めたよ」


 とノゾミは言う。


「どっち?」

「文系にしようかなって」


 と打ち明けるようにノゾミが言う。


「へえ〜理由はなんで?」

「ある人が文系の進路に進みそうでそれを支えられるようにしたいって思ったから」


 と恥ずかしそうに言う。


「ある人?好きな人だったり?」

「内緒」


 ノゾミは人差し指を口の前に持ってきながらそう言う。


(わかってて言ってるのか鈍感なのかわからないな……)


「でも、そっか、ノゾミはちゃんと進路決めたんだね」


 ソラは冬の晴天を見上げながら言う。

 日光が積もっている雪に反射して、なんだか空がいつもよりまぶしく感じられた。


「理由は不純だけどね」


 ノゾミは冗談を言うように言う。


 そうして話しているとあっという間にノゾミの家に着いてしまった。


「じゃあまた」

「うんまた」


 ノゾミと別れてからソラも自宅を目指す。

 歩きながら考えることは進路のことであった。


 文系と理系。

 どちらもやりたいことがあり、迷う。


 また、そもそもそれが自分の本当にやりたいことなのかと自問自答を繰り返す。

 そんなふうに思い悩んでいるとソラの家に着いた。


「はぁー……」


 吐いた息はとても白かった。



 ◇ ◇ ◇



 夜。


 いつもの大きな木の下でソラは、昨日のファンタジー小説を読んでいた。

 進路で悩むうちにいっそのこと、こことは違う世界にでも行けたらなとを思ってしまう。


「うっっさむっ」


 風が冬の雪原を駆け抜ける。

 持ってきたカイロを使っているが気温マイナス8℃の前では心許なかった。


「コーヒー淹れるか」


 いつものように愛用のシングルバーナーとクッカーでお湯を沸かし、コーヒーを淹れる。

 この作業も慣れたものだった。


「やっほ」


 そうしているとノゾミが来た。


「今日は一段と寒いね」


 ノゾミも厚着しているが、手を擦り寒そうにしている。


「そうだね。でもほら。一段と星は綺麗だよ」


 空を指差しながらソラは言う。


「わぁ〜ほんとだ。綺麗」


 心なしかいつもより星が綺麗だった。

 星たちは寒さにこたえるようにまたたく。


 そうして2人は時間を忘れて星空を眺めた。


 そんなあるとき。


 2人はまばたきをするように目を閉じて開くとそこはいつもの雪原ではなかった——



 ——


「なんだ……?」


 しかも窓の外は明るくなっており、ソラは混乱する。


(ついさっきまで、夜のいつもの雪原で星を見ていたよな……)


「ソラ、遅刻するよ!」


 まだ混乱しているが、母に呼ばれたためとりあえず朝食を食べに行く。


「母さん、ぼく、昨日いつものように雪原に出かけたよね?」


 おそるおそる問いかける。


「ええ、いつもと同じように行ってたよ」


 と母は答える。

 なんだ。ただ眠くなってあの後すぐ家に帰って寝て、記憶が曖昧になっているだけか、とソラは考える。

 でもやはり、違和感は拭えなかった。


「ごちそうさま。行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 支度したくをして家を出る。

 いつものように、ノゾミと待ち合わせをして学校に行こうと思ったのだが、遅刻する時間になってもノゾミは現れなかったため、珍しいなと思いつつも今日は休みかなと考え1人で登校する。


だがしかし、学校に着いても———









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星空の見える木の下で 糖分先輩 @toubuntuyoshi

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