星空の見える木の下で
糖分先輩
第1話 「いつもどおり」
雪が積もる冬
どこまでも続く雪原のとある場所。そこにある大きな木の下。そこに男の子はいた。男の子はいつもどおりに本を読んでいた。
男の子は持ってきた愛用のシングルバーナーとクッカーでお湯を沸かす。
「そろそろかな」
沸いたお湯をマグカップに注ぎコーヒーを淹れる。
「ほぅ……」
インスタトだが温まっておいしい。
本に目線を戻し、引き続き読書をする。
と思ったら誰かが近づいてくる気配がした。
「うぅ、今日も寒いねソラ」
「ノゾミ」
幼馴染のノゾミだった。
ソラはノゾミの分のコーヒーも用意する。
「ほら」
「ありがと」
ノゾミはもらったコーヒーを一口、口に含む。
「ほぅ…、あったまる…」
この厳しい冬にはもってこいのあたたかさだ。
ふとノゾミの目はソラが持っている本に向かった。
「それ、なに読んでいるの?」
「これはね、ファンタジー小説」
「へえ〜、どんな感じなの?」
ノゾミは小説の内容が気になり、ソラに聞く。
「主人公とヒロインがある日、星空を眺めていると突然別々の世界に行ってしまうんだ。お互い
「ふーん、なんかよくわからない」
「じゃあさ、私たちもこうやって星空を見ていたら離れ離れになっちゃうのかな?」
冗談でも言うようにノゾミはそう言う。
「怖いこというな」
「ふふ、ごめんごめん。そんなこと起きるわけないよね」
(ノゾミは怖いことを言う。実際、そんなことは起きやしないだろうに。)
「でもさもし仮にでも、起きちゃったらソラはどうするの?」
ノゾミはソラがどうするのか気になったのか、からかうためなのか、また冗談を言うように聞く。
「いやそんなこと起きやしないよ」
「だから仮にだよ仮に」
「えー、そうだな、想像できないけどやっぱりなんとかして元の世界に戻る方法を探すかな」
「うんうん、私と離れるの寂しいからね」
からかうためだったようだ。
ソラは恥ずかしげに目線を逸らし、空を見上げる。
意図せず空を見上げたがとても星が綺麗だった。
今日は冷え込むが、その分空気が澄んでとても星に見える。冬の大三角はもちろん冬の星座たちがはっきりと見える。
「星、綺麗だね」
「そうだね」
とても綺麗な星空の下。
そこにはいつもどおりの日常があった。
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