社交辞令は誰のため?
羽川明
「読みたい」から生まれる心の傷
小説、エッセイ、評論、創作論。
趣味で文章を書いている物書きの皆さんは、知り合いとの趣味の話題のときや、自己紹介のとき、どうしていますか?
私は今まで、「小説を書いている」と包み隠さず言い続けて来ました。
ですがあるとき限界が来て、物書きであることを自分からは言わなくなりました。
なぜって?
「読みたい」
その社交辞令という名の嘘で、傷ついてばかりだったからです。
皆さんがどうかはわかりませんが、私は自分の作品が大好きです。
当然、一人でも多くの方に読まれたいと思っています。
ですので、私は初めて知り合った方や、友達との趣味の話題で積極的に物書きであることをアピールしていました。
すると「読みたい!」とうれしい言葉をくれる方がそれなりに多くいるわけです。
興味を持ってもらえたのだと思った私はオススメの自作品の魅力について語ります。
大抵の場合相手もうれしそうに聞いてくれます。
そうして円満な空気のまま解散になるわけです。
ここで問題です。
この「読みたい!」と言って興味津々に耳を傾けてくださった方は、次会ったときに私の作品を読んでくれているでしょうか?
答えは、読んでいません。
私はプロではありませんから、小説もエッセイも評論も創作論もすべてWebサイト上で無料で読めます。
カクヨムもそうですが、読むだけなら登録さえいらないわけです。
作品の魅力を語る前に投稿サイトやタイトル、内容について詳しく話していますから、たどり着けないはずがありません。
言い分はこうです。
「忙しかった」
「時間がなかった」
「読む暇がなかった」
だいたいおんなじようなことを言っているわけですが、言い回しはそれなりに種類があります。
とはいえ、これらはすべて嘘です。
偏見?
そう思うのも無理はありません。
ですが、次回会ったときも「今度こそ読む!」と言われるわけです。
読まないだろうなと思いつつ期待する自分がいるわけです。
その淡い想いを踏みにじるように、結局読まれないわけです。
というか、いつまでたっても読まれることはありません。
次回会ったときまでに読んでいない人が、本当にそのときたまたま忙しかっただけで読んでいなかったので、あとで暇なときに読んでくれた。
そんなケースを私は知りません。
断言しますが、「読みたい!」の9割以上は社交辞令、つまり嘘です。
期待すればするほど、裏切られたという気持ちも大きくなり、気分が落ち込んでしまいます。
私の文章がいけないのでしょうか?
日間1位、週間1位、月間4位を同じ作品で4日以内に取った私が?
カクヨムで投稿しているさまざまなジャンルの作品すべてで必ず一度はジャンル別週間ランキングにランクインしている私が?
自慢ではありません。
むしろ、これを読んでいるあなたを勇気づけたいのです。
「読みたい!」は社交辞令。嘘です。
だから次に会ったとき読まれていなくても、それはあなたの作品が悪いのではない。
作品の内容を聞かれたあなたが魅力について熱く語り過ぎたわけでもない。
私は自分からは宣伝していないのに向こうから「読みたい!」と自発的に言われることもよくありました。
結果は同じです。
次回会ったとき、読んでません。
100%読んでません。
読んでくれていたら、その方を大切にしましょう。
「読みたい!」を間に受けて傷つくくらいなら、そのくらいの心持ちでいた方が良いです。
というか、信頼している友達であってもその子に読書の趣味がないならうかつに教えるべきではありません。
どうせ読まないので。
今回は暗いお話になってしまいましたね。
ですが、それでも私は「読みたい!」に限らず、社交辞令の嘘で傷つく人がいるのだと伝えたかった。
傷ついたあなたは何も悪くなんかないのだと教えたかった。
このエッセイに反省するべき心当たりがある方へ
みえすいた社交辞令の嘘は、相手を傷つける悪口に等しい。
興味がないなら、文章が書けることそのものをほめてあげてください。
「読んで!」を断れとは言いません。
ですが読む気がないなら、家に帰ったあと読んでいる自分の姿が想像できないなら、「読んで!」とはっきり言われない限り、自分から「読みたい!」と言ってはいけない。
このエッセイで自分のせいじゃなかったんだと思えたあなたへ
自分の文章や自分自身に価値がないように思えても、誰も見ていないように思えても、どこかへ公開する限り、あなたが発信し続ける限り、誰かは見ています。私もそうでした。
あきらめないで。
アマチュア物書きの作品は世にあふれています。
文章を書けることは、才能ではないのかもしれません。
ですが、文章でも、冗談でもトークでもスポーツでも歌声でもイラストでもゲーム実況でも配信でも、なんでもいい。
誰かを夢中にさせることが才能なのだと思います。
以上
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社交辞令は誰のため? 羽川明 @zensyu
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