第8話 かわいい女の子ですわよ
「そう、ユナちゃんっていうのね。どうしてあんなところに倒れていたの?」
「わかんない」
「お父さんとお母さんは?」
「いない」
「じゃあどこに住んでいたの?」
「わかんない」
会話が続かない。
「ねえ、お腹空いてない?」
「すいた」
「じゃあご飯食べに行こうか」
「うん」
「じゃあ着替えましょうね」
「わかった」
「じゃあその前にお風呂に入ろうか?」
「お風呂?」
「身体をきれいにするの。よし、まあそれじゃあ行こうか」
手をつないで一緒に浴場に向かう。
途中ですれ違ったメイドさんたちに事情を話して手伝ってもらうことにした。
浴槽の前まで来ると、メイドさんたちに向かってお願いする。
もちろん笑顔を忘れずにだ。ここ数カ月で私の評価はかなり変わっている。
あの処刑される夢を見て以来、私は変わったのだ。まず、誰に対しても基本、敬語で話すようになった。身分に関係なく。そしてできるだけ笑顔で対応するようになった。
最初はミレナも驚いていたが、今では何も言わずとも私の考えを理解して動いてくれる。
私のことをよく理解してくれていると思う。
今ではミレナのことを信頼しているし、一番頼りにしていると言ってもいい存在だ。
今、お風呂で洗われているこの子にも、幸せになってほしい。
その思いを込めて丁寧に洗ってあげた。
その後、食事を摂り、お腹いっぱいになってすぐに眠ってしまった。
「ネーテアお嬢様、ユナをどうするおつもりですか?」
「そうねえ、食事中の話だと狩りができるっていってたわよねえ」
「それではジョーさんに伝えて適性を見ましょうか?」
「そうね、そうして頂戴。それにしても、森に子どもを置いていってしまうなんて」
「お嬢様、数か月では変わりません。でも、お嬢様のおかげで間違いなくこの領はいい方向に向かっています」
「ありがとう、ミレナ。でも、まだまだね。さしあたり経済を回さなければと思ったけれど、ユナのような孤児がまだまだたくさんいるのよね?」
「はい、残念ながら」
「教会に寄付と、それから子どもたちになにか仕事を与えられないかしら?」
「ロイとアロンに相談してみます」
「ありがとう、ミレナ」
こうして私の領地再生計画は進んでいく。
あれからさらに数か月が経ち、私たちは十五歳になった。
私はあの後、ユナの面倒を見ながらアロンたちと領地再生計画を続けていた。
あと二年で嫁入りだ。
それまでにこの領を豊かにし、反乱が起こってもこの領の民は我がラスロメイ家には反感を持つことなくいてくれるかもしれない。
嫁入り先が全く知らないエディンガー家だというのは不安だけど、そんなことは言っていられない。
少しでも、すこしでも良い未来にするために。私は動いていこう!
(完)
公爵七女の嫁入り前 UD @UdAsato
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