第7話 数か月後ですわよ
「ネーテアさん、今日も手伝いに来てくれたんですかい?」
「はい、何か手伝えることはないかと思って」
「ありがたいねぇ。じゃあこっちの野菜を運んでくれるかね」
「分かりました」
「ネーテアちゃん、こっちも頼むよ」
「はい!」
汗をぬぐいながらミレナと笑い合う。
あれから数か月、私はミレナと一緒に町に出ることが多くなった。町の人たちとも仲良くなり、こんな暮らしが民の暮らしなのかとやっと理解できるようになった。
アロンとロイは騎士団や傭兵団の中で私たちの考え方に賛同してくれる人を増やしてくれている。
最初はたった三人だったが、今はもうかなりの人数が集まってきていて、私の領地再生計画に参加する予定だ。
ミレナと二人で町中を歩きながらそんなことを考えていると、一人の男に声をかけられた。以前私たちを襲ってアロンとロイにやられた奴らの親玉だった。今ではロイの下について領の裏社会をまとめてくれている。
ロイによると正しい事だけでは社会は救えないんだそうだ。アロンは逆に正しくあるべきだって言ってたし、なんでこの二人が仲良しなのか未だに謎だ。
「あら、ジョーさん!」
「ああ、お嬢様! 今日も視察ですか?」
ジョーは細身で黒髪をオールバックにしたおじさまだ。裏社会のボスだというが、物腰が柔らかくとても穏やかな印象を受けるし、いつも丁寧な口調で話しかけてきてくれる。
「お嬢様、少しご相談が」
彼が少し真面目な顔をして口を開いた。
「あら、何かしら?」
「実は森で女の子を拾ってしまいまして」
「ええ?」
「どこから流れてきたのか、捨てられたのかは分からないのですが、どうしたものかと」
「そうねえ」
「あの、お嬢様、私はどうすれば」
ジョーが困ったように言う。
「分かったわ。私がその子を見てみますわ」
「本当ですか! 助かります」
「では屋敷に連れてきてもらえるかしら?」
「わかりました」
そう言い残して去っていった。
翌日、ジョーさんが女の子をつれて屋敷にやってきた。
「お嬢様、連れてまいりました」
「ありがとう。下がっていいわ」
「はい」
ジョーさんたちが部屋を出ていくのを見届けてから少女の方に向き直る。
年齢は十歳前後だろうか。
亜麻色の髪はボサボサで、着ている服はボロ布のようだ。肌は汚れており、目の下にはクマができている。
ベッドに座らせてしばらくすると、少女はゆっくりと目を開けた。
そして虚ろな瞳で私を見ると、急に叫び出したのだ。
それはまるで獣のようで、思わず固まってしまう。
それでもなんとか勇気を振り絞って声をかけた。
「ねえ、あなた、お名前は?」
「ユナ」
彼女は小さな声でそう言った。
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