夢の中で君に恋をした

二髪ハル

プロローグ

 ザァッー……。


 ザァッー……。


「海だ……」

 俺、加賀美かがみ 光輝こうきの目の前には月明りで海が反射していて月の道が広がっていた。

 防潮堤のところに座り込んでただ綺麗で少し薄暗い海をボーと眺めていく。

「……綺麗だ」

 小さい頃、親と一緒に海を連れてってくれたぐらいで中学からは勉強ばかりだったな……。

「あれ? なんで、俺。海辺にいるんだ?」

 いつも通り学校行って友達と喋って、家に帰って……。勉強の復習とかゲームとかして風呂入って寝たんだよな……。

「……夢?」

 多分だけど今、自分が見ているのは夢の中にいるんだと改めて感じる。

 夢が見るのは確か、過去に見た自分の映像を整理してるんだと。何かで見た気がする……。

「……それでも綺麗だな」

 こうして見てみると綺麗としか言葉が出てこない光景だった。

 海が近くにあったとしても夜に行くこともなかったろうし。夢の中でならこんな綺麗な風景を眺めていたい。

「……」

 海のさざ波の音を聞いているだけの子の時間が最高だった。


「……あれ? 男の子がいる」

「ん?」

 声をした方に振り返ると女の子が立っていた。

「……」

「……」

 お互い向かいあっていて波の音だけが響いていた。

「どうも」

「どうも……」

 女の子が挨拶してきて俺も反射的に会釈で返す。

「……隣に座ってもいい?」

「え? あぁ、どうぞ」

 女の子が隣に座り込み海を眺めていた。

「綺麗……」

「……」

 近くで見てみると髪が靡く姿がとても綺麗でドラマのワンシーンをしているんじゃないかってぐらいな感覚だった。

「……あ、えっと。今夜は、その月が綺麗だね」

「えっ……」

 月が綺麗だと聞いて思わず夏目 漱石の言葉が出てきた。

「そう、ですね」

 なんとなく月の方を見上げて感想を言ったが勘違いだったら少し恥ずかしい……。

「――あっ!」

 すると女の子の方が驚いて、こっちを向いて顔が真っ赤になっていた。

「あっあの‼ 月が綺麗て、告白とかじゃないよ‼ 普通に月が綺麗って意味合いなわけで。その、あなたはカッコイイんだけど! …………とてもカッコいい!!」

「――っ!」

 人から今までないぐらいにカッコイイと褒められて顔が、ニヤけてしまう……。心臓が飛び出そなぐらいに顔が熱い……。

 せっかくだし褒めてくれたんだから、褒めてあげたい……。

「あなたもその、月と同じぐらいに綺麗で、見惚れちゃいました……」

「――ふぇっ! あ、ありがとうございます」

「……っ」

 ――っ‼ 言っててめちゃくちゃ恥ずかしい!

 やべえ! 心臓が破裂しそうなぐらいにバクバク鳴っていて顔と体がめちゃくちゃ熱い!!

 ……まぁ、夢だしこんな綺麗な人に言っても構わないよね。

 女の子の方を見てみると手で顔を覆いながら微笑んでいた。

「え、えへへ……。み、見惚れたって言ってくれた。嬉しい……」

 めちゃくちゃ、喜んでくれて良かった……。

「……」

 ふと女の子の方を向くとまだ顔がにやけていた。

 こんな人と海を見れて良かった……。少しだけどドラマみたいなワンシーンが出来て自分は満足だ。

 すると暗い夜から段々と日の明るさに変わっていった。

「夜が明けてきたね……」

「そう、ですね……」

 そして暗い海から海底のそこまで見えそうな透き通った海が広がっていた。

「……おぉ」

 さっきの海よりも物凄く綺麗だ……。

「――あっ。えっとありがとう! 褒めてくれて、嬉しかった……」

 女の子がこっちの方を向いて、照れくさそうに頬を掻くながら笑っていた。

「いや、こっちも嬉しかった!」

「――っ! そっか~」

 足をバタバタと防潮堤に当ててまた嬉しそうに喜んでいた。

「じゃあ、褒めてくれたお礼として、目を瞑って……」

「瞑る?」

「……だめ?」

 女の子が首を少し傾けながら聞いてきた。

「……あ、はい」

 女の子の言われる通り目を瞑り。視界が真っ暗で耳元には海のさざ波が囁いていた。

「――ふぅ」

 少女の小さい声が聞こえ、――っ! 瞬間に頬に柔らかいのが当たってきた。

「――っ!?」

 思わず目を開けると女の子が顔を下の方にそむけていて顔が少しだけ赤くなっていた。

「……ごめんね一度だけ漫画みたいなことしてみたくて」

「いや、まさか頬のされるなんてビックリして」

 これが女の子の感触なんだと頬がつりそうなほどニヤけてしまい心臓が熱かった。

「……でも嬉しかった」

「――っ! そっか」 

 女の子が小さく何度も頷いていた。

「ありがとう!」

 少女の顔を見ると幸せそうな笑顔になっていた。

「また、会えるといいね!」

「あぁ、まっ――


 

 ジリリリッ!


「――っ!」

 気がつくと少し薄暗い部屋にカーテンが差し込んでいて、自分のスマホが鳴っているんだと気がついた。

 心音が鳴り響き。自分の高揚感が上がっているのがわかっていて、頬に柔らかい感触の温もりが残っていた。

「……っ」

 まだ、心臓の鼓動が鳴りやまない。

 そしてあの笑顔だけが記憶の中で残っていて、俺は彼女に恋をしたんだなと感じてしまった……。

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