残りマイナス六十分

 一時間後に研究室に戻ると傍田が床に転がっていた。頭は話の通りに吹き飛んでいて、あたりは血まみれで、避けて歩くのが大変だった。綺麗に死んどくって言ったくせになと、おれは独り言を話しつつ傍田の机の前に向かった。

 書類はあった。親愛なる仁科へ、なんて文言で始まっていて少し笑った。一枚目を捲り、笑いは引っ込んだ。

 傍田の汚い走り書きの文字があった。


「物理的に割るよりコイツの方が絶対早い」


 書き文字は一時間前まで聞いていた友人の声で再生された。

 冤罪ごと爆発した無実の男を、真犯人のおれはしばらく見下ろしていた。

 だからおれを呼んだのかって話し掛けるけど、返事は二度と返ってこない。

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今吐いて数分後に死ぬ 草森ゆき @kusakuitai

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