女バーテンダー2

Danzig

第1話

カウンターでグラスを磨くバーテンダー


一人の男が入ってくる

バーテンダー:いらっしゃいませ

バーテンダー:こちらの席へどうぞ


男性客:あぁ、ありがとう


バーテンダー:何になさいますか?


男性客:バーボン、ロックで


バーテンダー:かしこまりました。

バーテンダー:ご指定は?


男性客:バーボンなら何でもいい


バーテンダー:かしこまりました


酒を造る女

バーテンダー:お待たせしました。

バーテンダー:ブラントンです


男性客:あぁありがとう


グラスに口をつける

思いつめたように酒を見つめる客

軽い溜息をつく客(客は自分のため息に気づいていない)

バーテンダー:いかがしましたか?


男性客:ん?


バーテンダー:少し、思いつめられたような表情でしたので


男性客:俺はそんな顔をしていたのか?


バーテンダー:ええ、なんとなくですが


男性客:そうか


バーテンダー:どことなく、お元気もないご様子ですし


男性客:一つ聞いてもいいなか?


バーテンダー:なんでしょう?


男性客:『死ぬこととみつけたり』って言葉を知っているかな?


バーテンダー:そうですね、東洋の古い言葉だと記憶しております


男性客:生きて何をするか、死して何をのこすのか・・・か


バーテンダー:難しいですね


男性客:あぁ

男性客:自分は何の為に生きて、何の為に死ぬのか・・・・


バーテンダー:さぁ、私には分かりません


バーテンダー:ただ・・・


男性客:ただ?


バーテンダー:そんな事が分かる人なんているのでしょうか?


少し酒を見つめる男

男性客:そうだな、

男性客:わからなねぇわな


酒を飲み干す男

男性客:ありがとう

男性客:うまかったよ


バーテンダー:ありがとうございます


テーブルに金を置く男

男性客:つりはいらねぇ


バーテンダー:これは・・・・


男性客:つりはいらねぇ、その代わり・・・

男性客:いや、やめとこう

男性客:柄じゃなかったな


バーテンダー:お客様・・・


男性客:また、俺がここに来ることがあったら、その時は一杯奢ってくれよ


バーテンダー:かしこまりました


男性客:じゃぁ


バーテンダー:あ、お客様


男性客:ん?


バーテンダー:今度、珍しいお酒が手に入るんです

バーテンダー:まだ少し先ですが

バーテンダー:1919年のブッカーズ 禁酒法前のものです


男性客:ほう


バーテンダー:常連の皆さんにお分けいたしますので、お一人一杯きりとなりますが

バーテンダー:それを残しておきます


男性客:そいつは嬉しいな


バーテンダー:ですから、必ずまたのご来店を


男性客:あぁわかった


少し安堵の表情で一息つくバーテンダー


バーテンダー:かしこm・・


男性客:もし、暫くしても俺が来なかったら


男性客:そのときは この店の前に撒いてくれよ

男性客:ブッカーズの匂いに誘われて、ふらりと立ち寄るかもしれないから


バーテンダー:・・・・・・

バーテンダー:かしこまりました


男性客:じゃぁ


バーテンダー:お気をつけて


店を出る男

一息ついて男が再び扉をあけて入ってくる


男性客:ねぇ、

男性客:出張の度にこれやらなきゃダメ?


バーテンダー:いーじゃない、折角だから恰好良く送り出してあげようって


男性客:格好良くって、これバーボンじゃなくて麦茶ジャン!


バーテンダー:だって、今から出張なのにお酒飲むわけには行かないでしょ


男性客:そりゃそうだけど


バーテンダー:だって、ボイコネでシナリオ見つけたから、やってみたかったんだもん

バーテンダー:それに、バーテンダーごっこが出来なくなるのも寂しいしさ


男性客:いや一泊だから


バーテンダー:あなたがまた出張先でバーとか行くのかなぁって思うと羨ましいしさ


男性客:それは、ほら、付き合いだし・・・


バーテンダー:それにまだカクテルグラスも買ってくれてないしさ


男性客:それは、なかなかいいのがなくて・・・・


バーテンダー:嘘つきだわ


男性客:じゃ、じゃぁ、出張先で探してくるよ


バーテンダー:ホント! 約束よ


男性客:・・・うん


バーテンダー:嬉しい!

バーテンダー:じゃ、ここも、もっとお店らしくしておくわね


男性客:え~

男性客:もうそういうのはいいって


バーテンダー:はいはい、早くしないとバス行っちゃうわよ


男性客:分かったよ、じゃ行ってくるよ・・・


バーテンダー:いってらっしゃい

バーテンダー:じゃあ、出張頑張って来てね、あ・な・た♪ うふ♪


男性客:(アドリブ)


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