後の祭り《完》

 落ちかけの線香花火が一層輝く様に、打ち上げ花火の終わりに大玉のスターマインが何度も打ち上げられる様に――。

 あとわずかで、彼女と過ごす楽しい夏祭りが終わってしまう。

 その時には、私の心はすっかり熱を帯びていた。口を突いて出てきた言葉は、打ち上げ花火と共に沸き起こる歓声に紛れる。


しずか、好きだよ」


 横目で盗み見た彼女は、花火が打ち上がる音に肩をビクッと揺らしている。


しずか、花火の音も怖いの?」

「えっ。な、何? 花火? 綺麗だね」


 目を細めて微笑むしずかに胸がいっぱいになった。この瞬間、誰よりも、花火よりも、彼女が一番綺麗だった。

 そして、 私はしずかの手を握る。いつのまにか、彼女の手は私の袖から離れていたみたいだった。


《完》

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終わりのスターマイン 南木 憂 @y_ktbys

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