後
一緒に夏祭りに行くことが決まった私たちは、浴衣を買いに来ていた。実は私も
「着付けとかできるかなぁ」
「動画とか見ながら練習したら大丈夫だよ。できなかったら私が着せてあげるね」
「できるの?」
「お花の発表会は着物で行ってたから」
そういえば、
彼女は見た通りのお嬢様で、箱入り娘だ。大学進学で都会に出ることも両親は難色を示したらしい。結果、
これからも、側にいてほしい。友達で良いから。
「着付けは
「練習はしておいてよ?」
「がんばりまーす。ねぇ
「んっとね……」
紺地に大きな赤い花が描かれたものだ。
「これ、
真っ直ぐに言う
「試着行ってくる」
「一緒に行っても良い?」
「……うん。あっ、靴はどうしよう? 下駄履く?」
「私は履くつもりだけど、慣れていないと歩きにくいからサンダルとかでも良いと思うよ」
「でも
「うーん……あ、じゃあ髪飾りはお揃いにしよ?」
その台詞に、耳が熱くなるのがわかった。私がお揃いにしたがっていたことは、彼女に気づかれていたようだ。
いつまでも、辛い過去を乗り越えないで欲しいと思うのは、悪いことなのだろうか。
* *
夏祭りの日、私は
仕方ないが、私の部屋はエアコンが付いておらず暑かった。
「あっつ」
私はエアコンを最強にして、手に持っていたハンディファンも最強にして机に置いた。
「
「大丈夫。うちの実家はもっと暑いと思う」
「九州だっけ?」
「うん。来年、遊びに来てね」
その後、他愛もない話をしたり、浴衣を着付けてもらったりした。
西日が部屋に差し込んでくるといよいよ夏祭りという雰囲気で、私たちは部屋で浴衣姿のツーショットを撮って、妹がいるリビングに顔をだした。すると涼しい家を出る気がさらさらない妹が、ソファに寝転んだまま視線を向けてくる。
「へー。馬子にも衣装ってやつ?」
「それ、褒めてる?」
「姉ちゃんにしては可愛いよ。髪の毛とか、浴衣とか」
「……
「なるほどね。
鼓動がバクバクとうるさい。繋いだ手を通じて、この緊張が
祭りの会場には、この田舎のどこに隠れていたのだろうかというほどの人がいた。私は
「ここ、持ってて良い?」
「うん。迷子にならないでね」
「うん」
私が屋台に向かって歩き出せば、
「わぁ……」
「いつもお祭りでどの出店行く?」
「ごめん、私あんまり行ったことなくて……」
「じゃあ、どこ行きたい?」
「カキ氷! ブルーハワイ!」
彼女の希望通りカキ氷で色づいた舌を見せ合ったり、大きなわたあめを二人で分け合ったりして、私達は祭りを楽しんだ。花火の時間をまった。
「そろそろ花火の見えるとこ行こっか」
「うん」
先を歩く私の浴衣の袖を、今一度ぎゅっと掴み直す
そして私は、家族で来るときによく皆で一緒に花火をみていた場所に
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