必殺仕事人風台本４『楓』

第1話

集合場所に集まる仲間たち

お市：二人とも来てるね

楓：お市（いち）さん、何だよ急に呼び出して

お市：仕事だよ

楓：仕事か、今日は何人だい？

お市：今日は一人だよ

楓：なんだい、一人かい、じゃぁ私にやらしておくれよ

左之助を見るお市

お市：左之助、あんたはそれでいいかい？

左之助：あぁ、好きにしな

お市：わかったよ・・・・

お市：じゃぁ、楓（かえで）、今回はお前がやりな

楓：よし、呼び出されて手ぶらで帰りたくないからね

楓：で、誰をやればいいんだい

お市：まぁ、そこへお座りよ

楓：あ、あぁ

台の上に金を置くお市

お市：これが依頼料

楓：何だい、随分細かいね・・・

お市：全部で弐朱（にしゅ）だよ

楓：弐朱（にしゅ）？　たったの？

お市：この金はね、坊やが、おっかさんの為にって、屑（クズ）拾いをして、何年もかけて、貯めた金だそうだよ

楓：そ、そうかい、まぁいいや

楓：で、誰をやるんだい

お市：仕事の相手は・・

お市：残雪（ざんせつ）のお竜（りゅう）。　仕事人だよ

楓：な！

一瞬の沈黙

左之助：お市

楓：お市さん、それ本当なのかよ

お市：こんな事、嘘をついてなんになるのさ

楓：そんな・・・お竜さんって・・・

左之助：お市、何か、訳があるのかい

お市：訳っていうか・・・

左之助：どうした

お市：依頼人は九つになる男の子、母親をお竜に殺されたんだってさ

楓：殺されたって・・・だって仕事だろ？

楓：私たちは仕事で人を殺すのさ

楓：その家族からの依頼を受けて、仲間殺すってどういう事さ

左之助：楓（かえで）、お竜はもう仲間じゃねぇ

楓：何言ってんだよ、同じ事でしょ

楓：お竜さんとは別に喧嘩して別れたわけじゃない、お竜さんがふらふら居なくなっただけじゃないの

お市：違うんだよ

楓：違わないでしょ

楓：お竜さん、また、戻ってくるかもしれないじゃない

お市：そうじゃないんだよ

楓：じゃぁ、何が違うのさ

お市：その母親は、仕事で殺された訳じゃないんだ

楓：え？

左之助：本当か？

お市：あぁ

しばし沈黙する三人

左之助：まさか、見られたのか

お市：・・・・

楓：そうか、見られたのさ

楓：だったら殺しても仕方ないでしょ？

左之助：そうなのか？

お市：それがよく分からないんだよ

左之助：どういうことだ

口が重いお市

お市：その母親については、見られたのか、巻き込まれたのか、よくわからないんだよ

お市：ただね・・・

左之助：何かあるのか

お市：近頃のお竜は、あんまりいい話を聞かなくてね

お市：やたらと仕事を受けてるみたいでさ

お市：なんか、殺しを楽しんでるみたいだって・・・

左之助：お竜が・・・

お市：それに・・・

お市：その母親の時だけじゃないんだよ、依頼以外の人間も殺したのは

楓：そんな・・・

お市：あのお竜が、見られるなんてヘマを、何度もするとも思えないだろう？

お市：それでさぁ

左之助：仕事を受けたってのか

お市：そう元締めが・・・

左之助：そうか

楓：そんな・・・

楓：何が『そうか』だよ左之助さん！

楓：あんた、お竜さんが殺されてもいいのかよ

左之助：それが仕事ならな

楓：何言ってんのさ

楓：左之助さんがそんなに薄情だとは思わなかったよ

楓：私は嫌だよこの仕事

左之助：自分が受けた仕事、放っぽりだすのか？

左之助：おめぇ、仕事なんて辞めちまえよ

楓：あんたに何が分かるんだよ

楓：あんたは、お竜さんの事を、昔の仕事仲間くらいにしか思ってないかもしれないけどね

楓：私にとっちゃ、仕事を教えてくれた、姉さんみたいな人なんだよ

楓：私は受けないからね、受けるならあんたが受けてよ

左之助：あぁ分かった、俺が受ける

左之助：お市、それでいいな

お市：あ、あぁ

左之助：どうせ、こいつにさせたって、しくじりそうだしな

楓：あぁ、そうしてくれよ

楓：大事な人を、自分の手に掛けれられる訳ないだろ

楓：どうせあんたには、大事な人を仕事に掛けられる私の気持ちなんて、分かんないだろうさ

お市：バカ！

楓の頬をたたくお市

楓：何すんのさ

お市：わかってないのはお前だよ楓（かえで）

お市：左之助がこの世界に入って、最初に仕掛けた仕事の相手はね、自分の母親だったんだよ

楓：え、そんな・・・

お市：それに、お竜と左之助はね・・・

左之助：お市、

左之助：余計なことを、そんなガキに話してんじゃねぇよ

お市：あ、あぁ・・ごめんよ・・・

左之助：で、お市、お竜は今どこにいるんだ

お市：・・・千寿（せんじゅ）だってさ

左之助：わかった・・・

左之助：じゃぁ、もう俺は行くぜ

お市：あぁ・・頼んだよ

完