必殺仕事人風台本2『女仕掛け』

Danzig

第1話


(男が店から出てくる)


銀二:ははは、ありがとよ

銀二:じゃぁ、また来るぜ!、


(影から声をかける女)


お蝶:(小声で叫ぶ感じ)ぎんじ!


銀二:ん? 誰だい


(顔を少し出して、手招きをする)


お蝶:(小声で叫ぶ感じ)ぎんじ、こっち、こっち


銀二:お蝶・・・なんでお前が


お蝶:しっ!


銀二:あ、あぁ・・・


(二人で人気のないところへ移動する)


お蝶:ふう、ここまでこれば、もういいかね


銀二:なんでぇ、お蝶、久しぶりだな


お蝶:『なんでぇ』じゃないよ、まったく


銀二:どうしたんだい


お蝶:銀二、あんた近頃、羽振(はぶ)りがいいみたいだね


銀二:あぁ、ちょっとな


お蝶:ったく、何がちょっとだよ

お蝶:あんた、随分と節操もなく仕事をしているようじゃないか


銀二:あぁ、金が欲しいからな。


お蝶:それだけかい?


銀二:いや、違うな

銀二:俺は殺しが楽しいのさ


お蝶:へぇ


銀二:何か悪い事でもあるのかい?

銀二:憎い奴を殺したいって人間がいて、

銀二:それを俺が代わりに殺してやる。

銀二:まったく、いいことづくめじゃねぇか


お蝶:まぁ、それが私たちの仕事だからね


銀二:だろ?

銀二:それがどうしたってんだい


お蝶:でも、あんた、関係ない人まで殺してるそうじゃないか


銀二:あぁ、そういう時もあったな

銀二:なぁに、ついでさ

銀二:それが悪いってのかい


お蝶:悪いかどうかなんて、私は知らないよ

お蝶:でもね、

お蝶:私らの稼業(かぎょう)は、どっぷり殺しに染まっちまうけど、

お蝶:殺しに酔うようなやつは、始末がわるいのさ


銀二:ほう

銀二:始末が悪いから、俺を殺る(やる)ってのかい

銀二:お蝶、お前の正義ってやつで


お蝶:私にはそんな正義なんてないよ


銀二:だったら、どうしたってんだい


お蝶:・・・・(言いにくそうに)

お蝶:あんたを殺(や)ってくれって仕事が入ったんだよ

お蝶:まぁ、あんたとは昔のよしみだからね

お蝶:小耳にくらい入れてやろうと思ったのさ


銀二:そうかい・・・仕事かい

銀二:で、俺はいくらで殺されるんだい


お蝶:弐朱(にしゅ)だってさ


銀二:なんでぇ、俺の命はたったの弐朱(にしゅ)かい、

銀二:それっぽっちじゃ死んでも死にきれねぇな


お蝶:人を殺すほど、自分の命は安くなる

それくらい、あんただって分かってるだろう


銀二:あぁ、そんな事は分かってるさ

銀二:それにしても随分と安くなっちまったもんだな


お蝶:こういう仕事をしてるとね


銀二:そうだ、お蝶、お前に俺が稼いだ百両やるよ

銀二:それで、俺より先にその依頼人を殺してくれよ


お蝶:それが叶(かな)わない稼業だって、あんたも分かってるだろ

お蝶:それに、そんな事したって今度の仕事は止まらないよ


銀二:あぁそうかい・・・それもそうだな

銀二:じゃ、誰が仕事を受けたのか教えてくれよ


お蝶:教えれられる訳ないだろ


銀二:頼むよ、誰が来るかが分かりゃぁ、俺は負けねぇ


お蝶:そんな事は分かってるよ、だから教えられないって言ってんのさ


銀二:昔惚れあった男が仕事にかけられてもいいのか

銀二:きっと後悔することになるぜ


お蝶:惚(ほ)れた腫(は)れたと、仕事は別さ

お蝶:あんたがそんな事心配しなくても、大丈夫だよ

お蝶:さっさと逃げな


銀二:あぁ、そうかい

銀二:でもよお蝶、そこまで話せばもう同じ事だろ

銀二:中途半端はお前らしくねぇじゃねぇか


お蝶:まったく・・・しょうがないね

お蝶:下手に教えに来るんじゃなかったよ

お蝶:耳貸しな


銀二:あぁ、すまねぇな


お蝶:(小声で)あんたを殺(や)る仕事を受けたのはね


銀二:あぁ


(ブス・・・

お蝶の武器が銀二を刺した)


銀二:う・・・・


お蝶:私だよ


銀二:お・・・ちょ・・


(息絶える銀二)


お蝶:確かに、惚(ほ)れた腫(は)れたと、仕事は別さ

お蝶:だけどね、銀二、

お蝶:あんたに引導を渡すのが、私じゃなけりゃ誰なのさ

お蝶:・・・ったく、そんな事も分からなかったのかい


お蝶:まぁ、地獄は寂しいかもしれないけど、

お蝶:私もそのうち、野垂れ死ぬことにだろうからね

お蝶:少しの間、向こうで待ってなよ


お蝶:じゃぁな


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