必殺仕事人風台本1『男仕掛け』

Danzig

第1話


(人をを殺す女)


お竜:ふぅ、一丁あがり、

へへ、ちょろいもんだね


お竜:は!


(ひとの気配に気づき、物陰に身を隠すお竜)


お竜:誰だい!


(物陰からゆっくりと現れる男)


左之助:お竜(りゅう)、ひさしぶりだな


お竜:なんだい、左之助(さくすけ)かい

驚かさないでおくれよ

なんであんたがここにいるのさ


左之助:なんでだと思う?


お竜:さぁ、知らないね

私に金でもせびりにきたのかい


左之助:違うな


お竜:じゃぁ、何だってんだい


左之助:おめぇ、随分と節操もなく仕事をしているようだな


お竜:あぁ、金が欲しいからね。


左之助:それだけか?


お竜:いや、違うね

私は殺しが楽しいのさ


左之助:ほう


お竜:何か悪い事でもあるのかい?

憎い奴を殺したいって人間がいて、

それを私が代わりに殺してやる。

まったく、いいことづくめじゃないか


左之助:まぁ、それが俺たちの仕事だからな


お竜:だろ?

それがどうしたってんだい


左之助:だがおめぇ、関係ねぇ奴らまで殺してるそうじゃないか


お竜:あぁ、そういう時もあったかね

なぁに、ついでさ

それが悪いってのかい


左之助:悪いかどうかなんて俺にはわからねぇ

だがな、

俺たちの稼業(かぎょう)は、どっぷり殺しに染まっちゃいくが、

殺しに酔うやつは、始末がわるい


お竜:へー

始末が悪いから、私を殺る(やる)ってのかい

あんたの正義ってやつで


左之助:いや、俺にそんな正義はねぇ



左之助:俺はただ、仕事でここに来た。

昔のよしみだからな、声をかけさせてもらったのよ


お竜:そうかい・・・仕事かい

で、私はいくらで殺されるんだい


左之助:弐朱(にしゅ)だ


お竜:なんだい、私の命はたったの弐朱(にしゅ)かい、

それっぽっちじゃ死んでも死にきれないね


左之助:人を殺すほど、てめぇの命は安くなる

それくらい、お前だって分かってるだろう


お竜:あぁ、そんな事は分かってるさ

それにしても随分と安くなっちまったもんだねぇ


左之助:こういう仕事をしてるとな


お竜:そうだ、あんたに私が稼いだ百両やるよ

それで、私の前に先にその依頼人を殺しておくれよ


左之助:それが叶(かな)わぬ稼業だって事も分かっているはずだ


お竜:あぁそうかい・・・相変わらずだね

それで、あんたは私を殺れるのかい


左之助:あぁ、俺は仕事をしくじった事はねぇ


お竜:そんな事じゃないよ

昔惚れあった女を殺(や)れるのかいって事さ

そんな女を殺したら、ずっと後悔することになるよ


左之助:昨日の事を気にしてちゃ、とても生きちゃいられない稼業さ

心配するな、明日になりゃ、お前の事も忘れてるだろうさ


お竜:あぁ、そうかい、わかったよ

殺れるもんなら、やってみるがいいさ


左之助:あぁ


(お竜を手に駆ける左之助 ※殺し方は任せます)


お竜:う・・・・


(息絶えるお竜)


左之助:お竜、地獄は寂しいかもしれねぇが、

俺もそのうち、野垂れ死ぬことになるだろうからな

少しの間、向こうで待ってろよ


左之助:明日にはお前の事も覚えちゃいないだろうが

今日のところは、昔のお前を思いだして、酒でも飲む事にするよ

じゃぁな


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