第8話 番外編


やっと会えたな。


讃岐屋(さぬきや)の主(あるじ)

いやさ、仏の佐平治。


そんなに驚く事はないだろ

お前の正体なんぞ、とっくの昔にお見通しよ。

おめぇさん、押し込み強盗「般若(はんにゃ)」の元締めだろ?


それとも何かい?

鬼地蔵とでも呼ばれたいのかい?


(驚く悪党)


7年前に上方から忽然と姿を消した、大悪党、

河内(かわち)の鬼地蔵とは、おめえさんの事だろ?


鬼地蔵が、今度は仏かい?

まったく、笑わせるねぇ


ははは、知ってるさ、

そう全部な

お前さんが、上方で働いた悪事も全部な


(佐平治に「お前は誰だ」と問われる)


俺かい?

俺の名は「ねずみ小僧次郎吉」

悪党から金を頂くのが俺の仕事さ

江戸の悪党なら、この名は、ちったぁ聞いた事もあるだろう


ほう、お前さんには不思議かい

どうして江戸のネズミが、お前さんの上方での悪事を知っているのかって


仕方ねぇから、お前さんには教えてやるよ

俺の昔の名前を


宵(よい)の佐助(さすけ)

そう、銀狐と呼ばれていた男だよ

お前さんが上方にいる頃には聞いた名だろ


宵闇(よいやみ)の狐が、何の因果かドブネズミ


(佐平治に理由を聞かれる)


さぁ、何でだろうなぁ

おめぇさんの悪事が許せずに、わざわざ、追いかけて来たのかもな


まぁ、どっちにしろ、薄汚ねぇ、おめぇの事だけは許せねェ

キッチリ裁きを受けて貰わねぇとな

お白洲か、エンマ様か、好きな方を選ぶといいさ


明日の朝には、おめぇさんの悪事は、全部世間に知られてるだろうからな

お上(かみ)も黙っちゃいないだろ

お前の運命もここまでだな。


ははははは

まぁ、せいぜい、自分の悪事を悔(く)いるんだな。

じゃぁな、あばよ


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男ねずみ小僧次郎吉(合冊) Danzig @Danzig999

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