シイタケ戦線けいぞく中

 車の中で一しきり叫んだ俺たちはK駅の前線基地につく頃には高ぶった心を落ち着けることが出来た。リエカには呆れられた。


 基地に戻って車から降りる。


「んー! やっぱり空気清浄機で胞子を除去してる空気はおいしいな!」


 ほんとは違いなんか分からないけど、ようは気持ちの問題だ。


「ぼくには良く分からないけど……? そうなの?」


「あたしたちにそんなこと知覚出来るわけないじゃない。適当なのよ」


「きっと気分の問題だよ……! こうほら、一仕事終えたあとの朝の日差しみたいなさ!」


 ダイチが首をかしげて、リエカがヤレヤレと首を振る。それをコウイチがフォローしてくれた。


 後ろを続々と引き返してきた車が通り過ぎていき、その一つが俺たちの真後ろで停車した。


 ドアが開いて中から涙目のしぃなが飛び出してきた。


 飛び出してきたというよりも、もうなんか飛びかかってきたといったほうが正しかった。


「ヒーチャン班長さん! みんなぁー!」


 ふっ飛ばされ地面にしりもちをつく。


「痛てて……、しぃないきなりなん……?」


「うわぁぁぁぁ! こわかったぁ! みんなキノコ怪人に連れてかれちゃうんじゃないかって、こわかったよぉ!」


 びぇぇんと両目から涙をこぼしてぎゅぅぅとだきしめてくる。


 そうか、そうだよな。ナビのとき冷静だったのは、ずっとがまんしてたからなんだな。


 どうしようか、と少しだけ思いなやんで、昔なく妹をあやしたときみたいに頭をなでた。


 ふわっとしたかみの毛がなぜかよく手になじむ。


「あー、その泣くなって。みんな無事に帰ってきたろ?」

「うん、ぐすっ、帰ってきた。みんな無事……、けど、こわかった……! こわかったのぉ!」


 声をかけたらまた泣きだしてしまった。どうすりゃいいんだ、とみんなのほうを見るとコウイチがリエカとダイチを引っ張って建物のかげにかくれようとしてた。チラッと振り返ったコウイチと目が合う。目線で抗議した。すると、返ってきたのはお茶目に舌を出した顔だった。ケーキ屋さんのマスコットキャラクタになれると思う。


「なぁ、その、しぃな……! おれたちの任務はまだ終わってないんだぞ……!」


「うぅ、ぐすっ。終わってない……? 終わってないって、なんで?」


 仕方なしにしぃなの肩をつかまえて目を見て話す。


「いいか? 任務って言うのは最後に報告に行って初めて終わるんだ。よってしぃなの初任務はまだ終わってないから、泣くのはまだ早い」


 じぃっと目を見てどうにか言いふくめようと適当なことを言った。そんなお家に帰るまでが遠足ですみたいなノリが通用するのかは果てしなく怪しい。だけど、言ってしまったモノは仕方ないので、ダメでも押し通そうと思う。


「そう、なの?」


 しかしどうやらしぃなはおれの適当な言い訳を本気で信じ込んだらしい。


「そう! そうなんだよ……! だから、ほら! みんなそろって茉莉花ジャスミン先生のところに行こう!」


 しぃなを立ちあがらせて、それから建物のカゲに隠れた三人を引っ張って、ヤケクソ気味に作戦司令室へと向かい、先生に帰かんの報告をした。後日作戦レポートを提出するように言われて、それから俺たちはちょっとだけほめられた。


 作戦司令室から出たら、俺自身にもなんだか実感がわきあがる。


 俺たち第十四作戦班の初の大型任務は無事成功したのだ!




 数日後、俺たちは何故か後方の仮説本部へと召喚された。俺たちというのは十四班のみんなと茉莉花ジャスミン先生だ。


 一体何を言われるのかびくびくしながら多くの隊員がいる前に呼びつけられて、何故か特別戦功というものをもらった。確か、未知のキノコ怪人の情報収集およびその討伐という名目だった。


 つまり、俺たちの活やくは本部じきじきに表しょうされたというわけだ。


 これは小さな一歩で、大きな一歩だ。このいきおいがほかの防衛線のみんなに伝わって、そうしていつの日かT都を取り返して、キノコ怪人から日本を解放する。


 俺たちの行動がみんなの夢を叶える足がかりになるんだ!


 完!!

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シイタケ戦線ほうかい中 加賀山かがり @kagayamakagari

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