第8話 女の敵。
「ただい…も」
ありえない筈の妄想が現実身を帯びていやがる。共働きで実質一人暮らしの男子高校生の玄関に、男用にしたら偉く小さいローファーがちょこんと佇んでいる。しかも、向きも揃えて綺麗に。
(関心ねぇ事は適当なアメン坊らしくもないな…てかスニーカー派だろ、そもそも)
と思ってたらドタドタと走ってくるアメン坊が走って来た。なんか頭痛が痛い感じがすんな。
「…坊」
「…姉者」
久しく見る坊の姿は大分大きくなっていた。183ある私よりちょびっと小さいくらいか。小さな文学少年から、乙女ゲー系イケメンになっているとは流石に驚いた。しかし、さらに驚くべき事がある。
「これか?」
「いや、幸せを願わずにはいられない女性だ」
チラッと食器を用意する姿が僅かばかり見えた。ピチピチのJKだった。小指を立てて見せると坊は首を横に振った。
「取り敢えず言われたもんは買ってきたぜ」
「助かる。ついてきてくれ」
「…ども。お邪魔してまーす」
うお、凄えキャワイイギャルだ! いや、ギャルはワシントン条約で保護された絶滅危惧種だと令和では云われている。シャレオツガール、シャレオツガールだ!!
「これは俺の姉者だ、ベアトリーチェ」
「(ベアトリーチェ?! 外人っぽいけど流暢に喋ってたよな)どもども。生意気なウチの坊が世話になってるみたいね」
「いえ、今日が初対面なんですけど意気投合しまして♪」
「へぇー珍しい…こともあったりなかったり」
二次元キャラよろしく、学帽を目深に被る坊の耳は真っ赤に染まっていた。意気投合というよりは、ギャルちゃんがウチのを一方的に気に入ったようだ。ま、異性相手でも変わらない坊がこの有様という事は満更でもないっぽいし。
「もう少しで出来るので掛けてて下さい」
「うーい」
言われるがままに3人分の食器が広げられたテーブルに掛ける。小・中学の時は随分と世話になったリビングは昔ほど広くは感じなかった。右にアメン坊が座っているのは初めてで、新鮮っちゃ新鮮だ。
『こういう場合、どうするのがいいのだ?』
アメン坊からの筆談。
『どうとは? 主語』
緊張すると主語が抜ける癖は相変わらずだ。いや、いっつもか?
『料理の味について言及するべきか否か、という事だ』
『そんなにまずいのか?』
ギャルちゃんの料理する後ろ姿は見る限り手際良く手慣れている。何なら寧ろ料理が得意そうにまでみえるが…。そもそも、今日が初対面だと言っていたしギャルちゃんの飯を坊が食った事あるってのは無理があるのでは? となると、ガッコー中で噂になる程まずい…って話か?
『いや。ベアトリーチェのような美しい女性の手料理は大体まずい』
『・・・・・』
『姉者?』
私はアメン坊の白い頬に全力の平手をかました、利き手じゃない方の左で。
「イッッッッッッッッッッッ!!!?」
「え、何ですか!?」
「ギャルちゃんもやる〜? 女の敵に全力でビンタ」
「ンフフ、今は…遠慮しておきます」
ギャルちゃんの笑顔が素敵だった事に免じてこのへんにしておいてやろう。私は筆談用に渡されたペンを床で悶絶する坊のシャツの胸ポケに仕舞って、自分用に買っておいたビールを開けた。とても
駄文製造機アメン君は他称ギャル先輩に恋をする! 溶くアメンドウ @47amygdala
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