第7話 積乱雲上昇中。
「あらした〜〜☆」
勤続0.1年、遂に私ぁレジ打ちをマスターするに至った。そして次第に、レジを打つより祈る時間が増え…お、アメン君から電話だ。
「しもしも〜メリーさんだよー☆ らっしゃせぃ〜〜!」
『まずい事になった、救援を求む』
開口一番のアメン君の口調から分かる事はいくつかある。
①窮地に陥っている。
②ピンチに陥っている。
③不測の事態に陥っている。
「うーんとね、今日はF番だから間に合うかも〜〜」
『…F番は何時までなんだ?』
「22時だよ。ざっくり3時間22分30秒後だね☆」
『…プッ』
「われぇー?? しもっしー、シモッシー!!? くっ…シモッシーがやられたか。しかし、奴はネッシー四天王の中でも最弱…」
全然間に合うと思うんだけど、アメン君の求める「間に合う」にはどうやら程遠かったみたい。
「んません、タバコの…」
「マイルドセブンですね! どーぞ!!」
「ハハハ、もうメビウスだけどね」
「タバコに合うロウチキは如何で〜? 旦那あ」
「…しょうがないなあ」
「アッアラアッアした〜☆」
今日もDiggy-moのバイトは忙しいぜ☆
———
「んあ〜? ったく。こんな時間に電話してくるクライアントって…登録してない番号じゃん」
引きこもりの生活リズムに配慮と敬意を払って然るべきだぜだぜ、世間様方の者どもめ。大体クライアント以外の電話はスパムか営業か新興宗教の長い奴なんだよ。
「ま、ツイ…エックスのネタにはなりそうだし。…はい、もしもし?」
『後生だ、助けてくれ』
「…プッ。よし、作業すっか〜」
切った側から再着信だ。〆切に追われている時期なら寿命が2年程縮む魔の音だが、夏休み的な連休を作る為に粗方片付けておいた。もはや私を阻むものはいない…ヒッヒヒ。
「…っだあ、ダリィな。はい、…んだよ」
『今すぐ我が家に…できれば女子高生が好みそうな茶菓子か何かを持ってさもナチュラルメイクな感じで来てくれ』
お、アメン坊が珍しくテンパってる! ようやく小せえコンテストにでも引っ掛かったかな。最後に会ったのは大分前な気もするし、顔くらい見せにいってやるか。
「飯なんか買ってくか? 多分牛丼になってくけど。他に入用は?」
『夕餉は今作られ、羽化の時を迎えようとしている。後、歯ブラシと入浴剤と化粧水セットを頼む…プッ』
「歯ブラシと入浴剤と化粧水セット…あれ、アメン坊の奴料理出来たっけか? 案外女作って侍らせてたりするかもな…」
あり得ない妄想を膨らませながら、カバーを外して久しく見なかった相棒の姿を拝む。
「そーいやお前さん、アニメ化したんだって? 随分と有名になっちまいやがって」
久しく跨るスーパーカブ、ヘルメットの圧迫感…本格的に社畜時代を思い出すな、鬱。
「ま、行くか」
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