第9話(最終話)大学卒業後~今に至るまで

 大学を卒業し、結局ひとつも内定を得られなかった私は北の辺境に戻った。

 そしてしばらくは地元でも仕事が見つからず、ニート生活を三年ほど送った。

 さすがに心配になったらしい両親に、「新聞で見かけた」と就労継続支援B型事業所の広告を見せられた。


 就労継続支援B型事業所とは、障害者向けの就労施設である。

 統合失調症をかれこれ十年以上患っていた私は、障害者手帳の取得に成功していた。

 見学や面談など、もろもろの手続きを経て、B型事業所で数年働いた。


 B型というからにはもちろんA型もある。その違いは就労期間と工賃の差。

 B型は就労期間に期限はないが、工賃は時給百円とか最低賃金を大きく下回る場合が多い。

 A型は最低賃金を保証してくれるが就労期間に期限があるところがほとんどだ。


 私はB型事業所でしばらく働いたあと、また別の事業所に移った。

 就労移行支援事業所という、簡単に言えばビジネスマナーや基礎的な学力などを身に着けて、就活に繋げやすくする施設だ。ここではビジネスマナーの他にもWord、Excel、PowerPointの使い方などが学べてよかった。


 まあ結果的には就活ではなく、フリーでシナリオライターの仕事をすることになったのだが、その事業所を無事に卒業できた。

 そして、今に至る。


 今年で推しの享年も追い越して、また年老いてしまう。

 私のこの半生は挫折と後悔としくじりでいっぱいだ。

 何が悪かったのか、どこが良くなかったのか、どうすればこんな人生にならずに済んだのかは分からない。

 ただただ運が悪かったように思う。でも、これしか選択肢がないという状況が多かったのも確かで、必然だったのかもしれない。


 とりあえず私から言えることは、オタクには寮生活はオススメできないということだ。

 アニメも漫画もゲームもロクに楽しめない、地獄のような日々だった。

 さらに、変なやつがひとりいれば、そこから人生が崩れる危険性がある。身をもって体感した。


 私の人生は、ここからいい方向に行くのかも定かではない。

 私の半生を読んで、これが人生の参考になるのかも分からない。

 ただ、バカで哀れな人間がいたものだと笑い飛ばしてくれれば幸いである。


〈了〉

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心壊~とある狂人の半生~ 永久保セツナ @0922

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